ーーーホメオパシーに興味を持ったきっかけについて教えてください。
ホメオパシーは、ハーネマン医師が始めた医療、それも「とびっきりの道理に基づいた新しい医療」ですが、私自身は完全に文系で、人間が好き、歴史が好き、文学が好き、音楽が好き、です。
なのになぜか工学部に行くことになり、思いがけず量子力学や数学に目を見開かれ大好きになりました。これが実はホメオパシーにものすごく役に立っています。
直接的なきっかけは、ロンドンに住んでいた時にアロマセラピストの友人を健康ショーに案内した時に、ホメオパシーのブースを見つけた時でした。
「ホメオパシーって昔なんか聞いたことあったな~」と思って。
20代の時にアメリカ留学をしていた時に交換留学でフランスに行ったのですが、その時にフランスについてのガイドブックを読んだ時、フランスではホメオパシーという奇妙な医療が根強く人気がある。
フランス人は芸術的で素晴らしいけど、奇妙なところがあってそういう時代遅れなものが未だにある。
そういうところに行かない方が良い(笑)と書いてあり、なんだか不思議に頭に残っていたんです。
それで、好奇心でホメオパシーのブースを訪ねて「ホメオパシーって何ですか?」と尋ねました。
すると「ホメオパシーには大きく二つ原理がある。一つは似たものが似たものを治す。健康な人に投与してある症状を起こせるものは、その症状を持っている人を治すことができる。
これは君にはわかるかもしれないけど、もう一つはわからないと思う。
それは薄めれば薄めるほど効果がより強くなる。でもわからないよね?」って言われましたが、それを言われた瞬間「それならわかる!」って思ったんです。
まあ普通の常識なら逆じゃないですか?
例えばオレンジジュースを薄めれば薄めるほど濃くなるのはありえないと思いますよね。
私は量子力学をやっていまして、「極小と極大がダイレクトにつながっている」という感覚を感覚的に持っていたんです。
素粒子という極小の世界の話はそのまま宇宙という極大の話になります。
また宇宙の始まりや宇宙がどのようにできているかをみていくと、それがそのまま素粒子の話になっていく。
だから極小と極大は直結しているという感覚が皮膚感覚としてものすごくあったんです。
最初に直感で「それは間違いない!」というのがあって、そこから色んなイメージが浮かびました。
最初に浮かんだイメージは割り算のイメージだったんです。まあ簡単なイメージでの割り算でした。
割り算は小さい数で割れば割るほど答えは大きくなるじゃないですか。
0.1で割ったら10倍になるし、1万分の1で割ったら1万倍になるので、ちょうど呼び水みたいに負圧をかけるといいますか、例えば太いので吸うとあんまり吸えないのだけど、どんどん細くしていくと勢いが強くなります。
割り算という逆説的世界。小さい数で割るほど引き出されるものが逆に大きくなるというイメージが最初に浮かびました。
その次に出てきたイメージがアインシュタインのエネルギー公式。
20世紀最大の発見の一つでE = mc2という公式ですね。つまり E=エネルギー m=質量 c=光の速さの二乗。
その公式が示している意味というのは、簡単に言うと、紙切れ一枚の重さの中にあるエネルギーというものがどれくらいあると思いますか?
まあ普通は紙切れ1枚の中にあるエネルギーなんてちっぽけなものだと思いますよね。
しかし実は信じられないようなエネルギーがこの中にはあります。
c=光の速さですから、とてつもなく莫大で、実際に計算するとこの紙切れ一枚にあるエネルギーが全部開放されたら地球を簡単に動かせるくらいです。って言われてもピンとこないですよね。
普通はせいぜい燃やすくらいしか思い浮かびませんが、分かりやすい例として、原子爆弾がありますね。
原子爆弾の始まりは、E = mc2のエネルギー公式であることはよく知られていますけど、原料のウラン235のごくごく一部のエネルギーを開放しただけで、あれだけのエネルギーになるんです。
物質とは実は存在するだけでものすごいもの、途方もないものすごいエネルギーの塊なんです。
話を戻しますと、このたった紙切れ1枚の中のどこに地球を動かすくらいのエネルギーがあるの?と思いますが、物質というものは、とてつもなくしっかり作られているので容易にはエネルギーという形態にはなりません。
というかエネルギー化するのは事実上不可能と言っても過言ではないんです。
例外的に、自分で勝手に物質が壊れていく放射性元素、ウランやプルトニウムは、ものすごーい力をかけると少しだけエネルギー化しますが、他のものでは事実上無理なんです。
それほど物質の安定性はものすごいものがあります。
ではそのエネルギーはどこにあるのかというと、その「構造」に全部使われています。
エネルギーの全てが物質としての構造、形、そこに閉じ込められて使われています。
だから、物質というのはたった紙切れ1枚であっても、存在するだけでものすごいものです。
薄めれば薄めるほど効果が強くなる
さて、「薄めれば薄めるほど効果が強くなる」という話ですね。
ホメオパシーでは単に希釈するのではなく、希釈して激しく振る(振蘯)します。
つまり希釈とはセットで、それをポーテンタイズすると言います。ポーテンタイズというのは、ポテンシャルを引き出す、つまり「潜在的な力を顕在化する」という意味です。
実は、「薄める」という言葉が問題です。「薄める」という言葉に我々はどうしても囚われます。
「薄める」という言葉は「少なくなる」、そういうイメージを持ちますよね、「少なくなる」のでエネルギーが強くなるというのはありえない、と思ってしまいます。
実は、これは言葉と言葉が喧嘩しているだけで、実態を必ずしも現していないのです。
実際にやっていることは何かと言うと、物質1に対して水とアルコールを99の割合で入れて溶かして100回激しく振る。
それを「薄める」と言うんだと突っ込みたい人もいると思いますが(笑)、
それは勝手にそう名前をつけているだけで、本当に実在しているのは、「薄める」という行為ではなく、物質1に対して水とアルコールを99の割合で入れて溶かして100回激しく振ると言う行為です。
屁理屈だと思わずに聞いて頂きたいです、とても重要なことなんです。
それをたった12回繰り返すだけで100の12乗、つまり1兆分の1兆分の1になります。
これでいわゆる分子の世界から離れていく超絶的な希釈になります実はそれを何十回、何百回、何千回、何万回、何十万回、何百万回も繰り返すものもあるのです。
そうすると、どんどん物質から非物質化していくことになります。
急に怪しい話になったように聞こえるかもしれませんが(笑)、まぎれもない物理学の話です。
現代物理学の話を聞くと、とんでもない話ばかりですが・・
どうしても「薄める」という言葉に引っ張られてしまいますが、実態的には「物質を非物質化」していくこと、つまり「形」を失っていくということなのです。
そして、形を失うということは形の中に閉じ込められていたエネルギー、つまりE = mc2という巨大なエネルギーが、次第に開放されてくることです。
だから実は「薄めている」のではなく、その物質の中のエネルギーを次第に開放させているのです。
だからこそエネルギーがより強く、より深くなっていくということなのです。
またもう1つ大事なことが先ほどお話した激しく振ること(振蘯)です、激しく振ることはすごく重要で、振っても大して何も変わらないんじゃない、と思うかもしれませんが、激しく振ることは、希釈と同等以上に重要なんです。
例えばミルクシェイクとかものすごい勢いで混ぜますよね、そうすると全然変わるでしょ?
質感も味も全てが大きく変わります。
もし私を大きなジューサーに入れて激しく混ぜたら、10分もすればどろどろの濃縮ジュースになる。あまり想像しないでください(笑)。
簡単に言えば、まず希釈によって形を失わせ、激しく振ることによってその中に内在しているエネルギーが開放されていくのです。
永松昌泰
1958年生まれ。山口県出身。ハーネマンアカデミー学長。
慶應義塾大学工学部卒業後、コロンビア大学、パリ大学で哲学、文学、物理学専攻。家業の鉄鋼業を経営するうち、金属の変容・変態と人間の変容との類似に気づく。
英国にわたり、 ホメオパシーと出会う。1997年、ハーネマンアカデミー設立。日本ホメオパシー振興会主宰。
ハーネマンアカデミーのサイトはこちらから→ハーネマンアカデミー・オブ・ホメオパシー
著書に「ホメオパシー入門」(春秋社)、『花粉症とホメオパシー』 訳書に「ホメオパシー医学哲学講義」(タイラー・ケント)、「ホメオパシーの哲学 病の声を聴く(ジュリアン・カーライオン)他などがある。
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。