学習面だけでなく、食事や生活面からも提案、自然派学習塾講師の本土佳代さんによる連載コラムです。
個々の生徒との対話
私は、夫とともに小中高の学習塾を経営しています。
塾といえば、黒板による一斉授業で先生が教えたり、1対1による個別授業などいろいろなスタイルがありますが、どれにもあてはまるのはティーチング。
ティーチングは「教え込む・与える」教育です。
私の塾は、少ーし違っています。基本的に各学年の授業や、1対1で指導するような個別教室、しきりなどはありません。
一つの教室に小中高生が混在する中、それぞれの生徒が自分に必要な勉強をしています。
ですので、わたしたちの役割はティーチングよりも、ファシリテイトの比重が大きいです。
個々の生徒との対話の中で「引き出す・促す」が基本となります。
子供たちの対話の中で、おうちや学校のこと、部活、習い事などいろいろ話しますが、今の子供たちに共通して言えることは、「忙しい」ということです。
一週間のタイムスケジュールがぎっしりつめこめられていてびっくりするときもあります。
そんなにみっちり予定が入っていたらきついんじゃなかと思うのですが、意外に「きつくない」という子供が多いのが,これまた問題だなーと思うのです。
ぎちぎちなスケジュールのほとんどが受動的なものが多いからです。
このような子供たちは、自発的になにかするというのがとても苦手です。ですから、私たちの塾に来るととても戸惑います。
私たちの塾では、何時間 何を勉強するのか自分でコーディネイトしなければならないからです。
お金・時間・教材・教育の質・量・栄養・睡眠・・・・・どれも、子供の教育に必要だと思いますが、今一番注目すべきは「時間」だと思います。
子供には時間がたっぷりあるのが自然なことのように思えます。(小学生>中学生>高校生)
一人ひとり、一日に与えられた時間はおんなじ。これは増やすことはできません。
子供の時間を増やす方法。それは意外に簡単です。
ポイントは「足し算」ではなく「引き算」。時間は増やせませんが、無駄な時間を減らすことはできます。
たとえば、今子供たちの時間に大きな影響を与えているのがテレビやゲームの時間。
読書
学力の基盤になるものとして「読書」はとても大事なので、塾ではご家庭で本を読む時間をとってもらうようにお願いします。
そうすると、読書をする習慣がないし、読む時間がないという返答が多いのです。でしたら、テレビやゲームの時間を制限してください。と提案します。
実際、制限するというのは、本人の意志が強くないと難しいですし、親のほうも「もう時間よ!やめなさい!」というのはストレスですよね。
ですので、一番いいのはテレビやゲームを一度生活からなくすこと。「なくすなんて!!ハードルが高すぎる!!」と思われるでしょうが、これは思った以上の効果があります。
わたしの家は、子供が生まれる前からテレビなし生活です。
テレビがなくなって一番に感じることは、一日のうちにこんなにテレビに時間を使っていたのかということ。
思わぬ余暇が生まれて、自分の好きなお料理に時間をかけたり余裕時間ができて生活が豊かになるのです。
そして、やはり息子は本が大好きですし読む量もとても多い。彼にとってのエンターテイメントですから。
子供にとって、忙しい毎日のなかのテレビやゲームというものは、ほっと一息つけるぼーっとできる時間だったりします。
なぜかというと、生活の中で楽で楽しいアイテムだからです。
子供も大人も、「自由にしていいよ」と言われた時は楽なものや楽しいものを選びます。
「テレビ」と「本」、「ゲーム」と「本」を子供の前に並べて好きなほうをどうぞ。というと、ほとんどの子供は「テレビ」や「ゲーム」を選ぶのではないでしょうか?
だからこそ、生活そのものから一度なくしてしまうことで、他の楽しいものを見つけることができます。
たとえば、自宅で本をなかなか読めない生徒には、塾に持ってきて読むことを提案します。
「塾のテキスト」と「本」だと本の方が楽しいそうなので、読書がはかどるんですよね。
また、「成績が下がってしまって子供の受講科目を追加したい!」とか、「成績が下がったので家庭での通信教育を追加しました」というご家庭はよくあります。
これは、あれもこれも足し算してしまって、ぎゅうぎゅうづめ状態。これでは、効果があがるどころか逆効果にもなりまねません。
そうする前に、なぜ成績が下がったのか?部活が忙しすぎるのではないか?テレビの時間が多いのではないか?睡眠不足で効率が下がっているのではないか?など原因を探って、引き算してやることが大事です。
足すのはその後です。
できるだけいらないものはそぎ落として「ぽっかり時間」を作ってやる。そうすることで、内から沸いてくるエネルギーで自発的に時間をクリエイティブできるようになります。
今回は、子供の「時間」の引き算にスポットをあててお話しましたが、この引き算の法則は、あらゆる面で私たちの生活や心を豊かにしてくれます。
我が家は、お湯が出る蛇口がありません。冬場もキッチンは水で食器洗いです。
お風呂には、シャワーがありません。シャワーがなくても髪もカラダも洗えますし水の節約になります。
また、休日は一食二食減らすことがありますが、からだもすっきりになりお財布にも地球にもやさしく、家事も減って自分時間が増えていいことずくし。
生活を見直してみると、まだまだあります。
あるのが当たり前だと思っているものを一つ減らしてませんか?きっと、生活に時間や心の豊かさをプラスしてくれますよ。
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本土佳代
レッチワース本土教室(学習塾)講師 元ICU看護師。
現在は、夫の経営する学習塾の小中学生講師。
レッチワース本土教室は、講師が子どもに教え込むような塾ではありません。
子どもたちの個々の能力を引き出すために対話を大切にしています。子どもを引っ張るのではなく「ファシリテーター」役として子どもが主体的に学習できるように促進、導くのが講師の役割。
その中で、学習面だけでなく、食事や生活面からも親や子どもたちが健やかに成長できるような提案もしています。
子どもの妊娠・出産を機に、古民家に移住し、できるだけシンプルでナチュラルなライフスタイルを目指して、家庭で実践できる自然療法やアロマ、クレイテラピー、ヨガなどを楽しんでいます。
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。