医学博士、池川クリニック院長。胎内記憶でも有名な池川明さんにお話を伺っています。
前回の記事はこちらから⇒子どもにとって抱っこをすることがいかに大事か【三つ子の魂百まで】
ーーー今母乳が完全栄養説みたいな感じで、ミルクはダメって言われていますが。本当のところどうなんでしょうか?
子どもに対して、すごく大事だと思えばこそ母乳でとこだわるんですよね。
例えて言うと、岡崎市の吉村医院院長の吉村正先生が現役だった時、お産する部屋はすごく暗くするんですね。
生まれた後の赤ちゃんの目に光が突き刺さるように痛がるということを知っていて、子どものための配慮なんですね。
では病院は配慮してないかと言うとそうではなくて、異常があった時にすぐ見つけられるように煌々とライトを照らすんです。
どちらも赤ちゃんのことを大事に思ってのことだけど、やる行動は全く正反対。
だから正反対で悪いことはない、やっぱり子どものためを思ってることでも、実際にやることは違う。
これはよくあることなんです。
ストレスが一番の問題点
で、母乳にこだわるって子どものためを思って母乳なんですよ、ところがでない人もいるんですよ。
でる人はいいですよ。
でもでない人にとってはそれがストレスになるじゃないですか、そのストレスがどれだけ子どもに悪いかってことを知らないといけないですよね。
それを考えないといけないです。
兎に角、育児ではストレスが一番良くないんです。
母乳にこだわっていい育児をやったつもりなのに、逆に子どもにストレスを与えてる。それならよっぽどミルクの方がいいです。
だからいいか悪いかはバランス感覚がとても大切でしょうね。一面いいとこあればどっか悪いとこもあったりするのが普通のことではないでしょうか。
ミルク全盛の時代とは・・・
ミルク全盛の時代があったんですね、母乳は良くない。
ミルクはこの世に存在する一番完璧な栄養素であると言ってミルクを勧めていたわけですよ。
ところが牛のミルクだから、人間のものとは違うわけですよ。
いわゆる異種たんぱくなので受け付けない人もいるんですよね、特に日本人は2割しか乳糖分解する酵素を持ってないので。
8割の人は分解できないんですよね。
だけど欧米の人の育児が最高だとみんな思っちゃったから、だから欧米のものを導入すればみんな賢くなれるって思ってるわけですよ。
日本はその風土風土で食べ物や環境も違うからそれぞれの人に合わせるって発想がなかった。
もう科学万能ですべてエビデンス、証拠が大事で、地域や人によって違いがあるとは考えない。
それに、ウガンダの話みたいな「赤ちゃんを24時間抱っこしてたら、4日で首が据わって、2ヶ月でハイハイできちゃった」という常識から外れる話があるということを、ほとんど誰も知らないし信じませんよね。
育児書は産まれた後にお母さんと分けられた環境でミルクで育った子供の成長は書いてあるんだけど、
それ以外の育児や成長は書かれてもいないし、子どもの発育は環境で多様性があるということを知らないんですよね。
江戸時代の出生事情
ーーー例えば昔にさかのぼって、江戸時代などはミルクなどないですよね、母乳が出なくてそれで栄養がなくて亡くなってる子どももいますよね?
あと、感染症の問題で亡くなる子も多かったんですかね?
そうですね、抗生物質もその時はなかったですしね。
ただ日本はまだ恵まれていて水がキレイなのでね。アフリカとかは水が汚いのでへその緒を切るとそこから感染するんですよ。
敗血症で亡くなっちゃうんですよ。
錆びた鉄でへその緒切ってそこから感染したりだとか。バイ菌もついてますからね。
だからまだ日本は衛生管理が発達してたから向こうほどではないけれど、やっぱり2、3歳は「神さまの手のうち」って言って亡くなるのはしょうがないというのを受け入れる風土はあったみたいですね。
ただ科学は死ぬのはダメなんですよ。
だから死ぬのはすべて敗北で、死ななければすべていい。こういう哲学で医学が成立しているんです。
死ぬことを自然に受け入れることができなくなってきた。
昔の日本人は、死ぬことは受け入れてたし、間引きもあったんですよ。くちべらしで神様から授かった子だけども、もう私たちは養う力がないからってことで、くちべらしで殺したりね。
そういうことはしていたみたいですね、江戸時代の頃は。
明治もたぶんそうだと思います貧しい時代は。死ぬことを受け入れなくなったのはつい最近の事なんですよ。
頭で考えるような育児を始めてそうなってしまったんです。
ーーーー新生児を母子別室にしたのはGHQの仕業と聞いたんですが。
そうです、ただあれは日本を潰そうという意図でやったんじゃないと思いますよ。
真面目に日本の子ども達が早く死なないようにお母さんと分けていこうという善意だったと思いますたぶんね。
ただ、いろいろな部分で洗脳の部分もあるとは思いますけど。やっぱり自立した国民になってもらっちゃ困るからね。
あとミルクは産業廃棄物みたいなものだったから、余っちゃってるから売りたかったんですよね。
脱脂粉乳なんて、無償給付かと思ってたらあれ日本がアメリカから買ってたんですよね。
それを給食で出してたんだから。あれで大量に産業廃棄物を処理できたわけですから、まあその世代が私たちなんですが・・・。
私たちの世代は廃棄物で育っちゃったということですよね(笑)まあまあいいか、育ったし。
確かに当時は食べるものはあまりなかったですよね。で、母乳では栄養が足りないとか言い始めた栄養学が出てきてミルク全盛だとみんな思ったんです。
でも、赤ちゃん全員がミルクがいいってなるとやっぱりやり過ぎなんだよね。それにカウンターかける為には、やっぱり母乳でなきゃだめって言わなきゃいけないから。
母乳はこんなにいいよっていうだけじゃ弱いから、母乳でなきゃだめって言わないとミルク全盛の時代にインパクトが薄いですよね。
それで母乳は完璧だとか言い出していって、だんだん母乳の人が増えてきて、だんだんミルクの人が減ってきた状態でそのまま母乳でなきゃダメだと言い続けたら、今度は言い過ぎなんですよ。
母乳を何らかの理由であげられない人もいるからね。
角度を変え多方面から物事考えるのが大事!
ーーーそもそも母乳って血液だから、母親がいい食事をして、健康体でストレスもなければ「いい母乳」で完全食になるかもしれないけどってことですよね。
そうです、お母さんがストレスまみれなら母乳もまずくなりますし、添加物いっぱいの食事をしていれば、それが全部赤ちゃんにいきますからね。
それだったら逆にミルクのがいいじゃんって場合ももちろんありますよね。
だから何がいいとか悪いとかは、時代や状況と共に変化するものでしょう。
でもなぜ母乳がいいって言うかミルクがいいって言うか、子どもが大きくなったときどんな大人になるといいかなっていうイメージで決めていくものではないのかなあ。
小児科の場合「死なない」だとか「赤ちゃんの発育」が大事っていう部分だからミルクでも母乳でもあまり関係ないかもしれない。
普通に考えると、立派な大人になればいいっていうのが育児のゴールだと思うんですが、それを意識しながら妊娠、出産する人まずいないですよね。
だけど自分たちが育てた結果どーなるのってのがまず先でそれに対してどうしようって方法論が出てくるはずなのに、目的がなくて方法論だけでやってるんですよ。ほとんどの人が。
だから例えば、その方法論が間違ってたら正しいと思ってずっとやっていたことが間違った方向の進んでいくでしょ。
でも他の考えも選択肢にあれば修正できるでしょ?
ああこうじゃなかった、だから他の方法にしようって。そうじゃないとどんどんおかしな方向になっていっちゃう。
一つの事を正しいと信じすぎて全体を見損なってなっていませんか?と私は皆さんにお聞きしたいことですよね。
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池川明プロフィール
1954年、東京都生まれ。帝京大学医学部卒・同大大学院修了。医学博士。
上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、89年、神奈川県横浜市に池川クリニックを開設。
サイトはこちらから⇒池川明ドットコム
主な著書に「子どもはあなたに大切なことを伝えるために生まれてきた。 (青春文庫)」「ママのおなかをえらんできたよ。」「ママ、さよなら。ありがとう」などがある。
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。