予防医学の重要性を説き続ける医学博士・脳神経外科専門医「田中佳先生」にお話を伺っています。
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ーーー酵素は口からとれないんですか?
摂れないというより、摂る意味がどれだけあるんだろうってことですね。
パパイヤってタンパク分解酵素があるから、硬くて安い肉を一晩いっしょに漬け込んでおくとタンパク分解酵素で肉が柔らかくなって安い肉でも柔らかくなって美味しくなるでしょ?
タンパク分解酵素だから、一緒に食べたら確かにタンパクを分解してくれると思うんだけど、もしそのまま吸収されたら体は溶けますよね?
でも、身体の筋肉が溶けちゃうってことはないし。
溶けたら困るから消化酵素はその場で使い切りですね。
自分の胃腸が溶けないのは出した酵素で自分が溶けないように粘液などで守ってますけど、そもそもそれを作る細胞って、ある意味すごいですよね。尊敬しちゃう。
いまホメオパシーの学校で解剖の授業を担当しているのですが、各臓器を教えていく度に「身体の仕組みって神の領域だ!」とつくづく想うのであります。
神の御業の臓器が、神の御業のシステムで絶妙に調節されている。
ホメオスタシスとか、自然治癒力ってひと言で片付けるけど、見えないし感じられない神の御業こそが御陰様ですよね。
あ、お話を戻しますね。
パパイヤと生肉の話でしたね。そう、生肉と一緒にして置いても柔らかくするだけで一晩かかるでしょ?
消化としては時間がかかりすぎますよね。
それを上回るスピードで消化はできてるじゃんって。 じゃあ、無意味ですか? と問われたら、無意味、、、では、ないとは思う、かな。。。
助けにはなるかもしれないんだけど、基本的にどこまで役に立つかわからないし、、、
胃の中では胃酸でドロドロにした後、バラバラになったところに消化酵素を混ぜ込んでいって、混ぜ込んでいるうちに酵素も分解されていくんですよね。
肉を食べながらパパイヤを食べたら助けになるかもしれませんが・・・焼け石に水な感じがします。
自然薯は消化に良いことになってますが、アミラーゼという唾液と膵液で作られる酵素と同じ消化酵素が含まれているということなので、意味はあるかなあ。。。
もしかすると、知らないだけかもしれませんけれど、把握されていない酵素の働きをするものが色々な食材に入っていて、知らぬ間に外来酵素として血液中で働いているかもしれませんね。
まあ、でも、最初から身体はすごいってことですよ。
だから、敢えて口から酵素を摂るぞ〜!でなくてもいいんじゃないかなとは思います。
そんな気にすることではないのかなと。 最近は酵素が流行っていますが、酵素さえ摂れば健康に良いのだ!みたいになってます。
酵素ジュース
酵素ジュースを作るのも流行ってます。
酵素ジュースが何かというと、発酵したジュースのことを指しています。
いかにも酵素を直接取り込むイメージですが、そうではなくて、酵素で醸して、すんなり吸収できる状態ですよということですよね。
善玉微生物もたくさん摂れますし、とてもいいんです。
えーと、厳密に言いますとね、それは酵素を使って細かい栄養素まで分解されたり、菌が醸して新たな栄養素が作られたものが、消化する手間を省いた状態で吸収されやすいってことですね。
ややこしい? 細かすぎます?
〇〇酵素などの商品の原材料を見ても、いわゆる植物です。普段の野菜を食べてもそうですけれど、我々人類は繊維質は分解する酵素を作れないんです。
だからそれを工場で、とある菌の酵素を使って、消化しやすい状態までバラバラにしましたし、色々な栄養素ができましたよ、という商品と言えます。
分解できない植物を丸ごと先に消化した状態だから、まあいいんじゃないかなと。
それって、ペンギンが海にいって魚をいっぱい食べて、丸々太って、わざわざ吐き戻して雛にあげますよね。
それは消化しやすいようになんですよねえ。
そのまま雛にイワシをあげても、多分無理なんですよね。
他の鳥も親が吐き戻したものを与えるじゃないですか、愛だなあ。。。
哺乳類はおっぱいですね、愛だなあ。。。
すぐ脱線しますね。
だからそういうものを酵素が外で醸して消化しやすいものとして摂るんであれば意味はあるかなと思います。
ちょっと「酵素」という言葉がイメージ先行で一人歩きした感じがします。
世間の使われ方に違和感を感じてしまう医療人ですいません。
例えば「他力本願」って、自分は怠けて他人の力に頼るみたいに使いますけど、ネットの言語由来辞典にもあるように、
他力とは「阿弥陀仏の力」であり、本願とは「全ての生命を極楽浄土へ導く」であり、阿弥陀仏の本願の力により成仏することなのだとあります。
人のふんどしで相撲を取るような使い方は間違えているのだと、お寺の方からも教えられたこともありますし。
こんな感じで「酵素」は本来の意味から外れていったのだなあと感じています。
ちなみに、体内の酵素の種類は3000を超えると言われているんです。
途中で数えるのが嫌になるほど多い訳です。外から何をどう摂ったらよいのかというレベルじゃない(笑)。
例えばアルコールを分解するのは、アルコール分解酵素でしょ?
お酒飲みながらアルコール分解酵素を飲みませんよね。アルコールが分解されてアルデヒドになりますが、これがこのまま多量に残ると二日酔いです。
その後、アルデヒド分解酵素が働いて酢酸になるんです。二段階の分解ですね。
アルコールを分解できない人は顔が真っ赤になって直ぐに酔う。アルデヒドを分解できない人は二日酔いになりやすい。
両方の酵素が乏しい人を下戸と呼び、両方が充分の人を笊(ざる)と呼ぶ。
肝臓の働きをよくするからとウコンを飲酒と一緒に飲んだりしますが、健全な肝臓なら、まあ、まだ、許せますけれど、肝機能が下がっている人が飲むと走り疲れた馬に鞭をいれることになり良くないですね。
まあ、アルコールは直接脳に働きかけるわけですし、完璧に守られるべき脳に侵入する物質は基本的には毒素の範疇でしょうから、分解の対象と判断されているのでしょうね。
大昔からお酒はあるから、脳も許しているのかもしれませんけど。
あと、肝臓でコレステロールを作ろうとすると10個の酵素が必要なんです。けっこう手間がかかるんですよね。
人は食べると、三大栄養素を分解する酵素を肝臓、膵臓、胃で作る(分泌する)システムが稼働するわけですよね。
必要な分の酵素を体が作るだけです
酵素の生産ライン、生産スピードにも限りがあるので、ゆっくり食べた方が消化は良くなります。
だから、噛まずに飲むような早食いをすると、消化管にも消化臓器にも大きな負担がかかりますよね?
だからゆっくり噛んで、ゆったり食事をするということは、消化の助けになるのです。
酵素を摂る前にすべきことです。
5分で食事の全量をかきこんで食べれば、消化は長引くは、負担はかかるは、その分の仕事しようとして胃腸の方に血液がいってしまっているので、
もし、消化管が喋れたら「おいおい、なんでこんなでっかい未消化物を大量に送り込んでくるんだよ、ったくもー、しょうがねえなあ、おーい全員フル稼働だぞ!働け!はたらけ〜!!」な感じでしょうね。
そこで運動されたら血液が筋肉へ行って、消化管の血液は減って、消化不良に陥るし、消化管の動きは停止するし、いいことがないんです。
だから、食休みも重要です。
食べた量が多くても時間がかかるので、負荷がかかりますからね、腹八分目に医者要らずという言葉に繋がるのだなあと。
昔の人は体感できていたので、このような教えが脈々と伝えられているのです。
(お命頂き糧とさせて)いただきます、ゆっくり食事をし、良く噛み砕き、腹八分目として消化臓器への負担軽減策をとる食生活の教え。
ああ、素晴らしい。
それと、消化吸収を十分に稼働させるためには、充分なミネラルが必要になってきます。
まあ、全ての代謝活動には酵素とミネラルが必要なので、何はなくともミネラルですね。
酵素は自動生産されてますけど、ミネラルが全て外部補給に頼っていますからね。
あと、胃腸を動かすには、副交感神経が優位にならないとダメだし、副交感神経を優位にするにはリラックスしていないと動かないし、ということなんです。
食休み中はそうなってますね。
このような総合的な意味合いも込めて考えるってことが健全さということです。
学び続けていく。それが人生
でもみんな部分をとるんですよ。 食休みは何分がいいだとか、ミネラルはこのサプリがいいだとか、みんな知識が断片的なんです。
サプリを買う前に、質の良い農作物を買いなさい!と言いたいです。
そんなだから、ちょっとした情報にも右往左往するんです。胡麻が健康に良いからと、そのまま飲んだら全部そのままの形で排泄されます。
試しに白ごまを飲んでみれば胡麻まぶしのウンチが出てくるので分かります。
考えてみたら胡麻ってすごいですね、あらゆる消化に絶える胡麻を讃えたいです。 あ、だから擂り胡麻にしなければならない。
でも、擂って放置しておくと酸化してしまう。だから使う直前に擂るのが本筋となります。
テレビは典型的ですね。面白ければいいので、見ていると部分を切り取って盛り上げてるな~、みんなこれで右往左往しているんだろうな~って、見ています。
わたしもダイエット番組を見ては右往左往しています(笑)
そういう点では、大雑把でいいので仕組みを知っておくのがとても重要になってきますね。 このように、断片的な知識ではあまり役に立たないのです。
情報に左右されるということは、断片的な知識で本質からはほど遠いところにいるのだとう自覚が大切ですね。
そして、学ぶことです。
修正に修正を重ねて学び続けていく。それが人生でもありますので、知識が無いことを馬鹿にしてはいけません。
完璧な知識を持つ人間は1人もいませんからね。
ですから、学ばないことが問題なのです。
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田中佳(たなか よしみ)医学博士・脳神経外科専門医
東海大学医学部を卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て市中病院にて急性期医療に長年携わる。
大学在任中に悪性脳腫瘍に関する研究にと医学博士を取得。
日本脳神経外科学会認定専門医・日本抗加齢医学会認定専門医。
現在は脳神経外科診療(保健医療)を行いつつ、予防医学の教育講演活動に取り組んでいる。
田中先生のサイトはこちらからどうぞ→ 田中佳先生のホームページ
主な著書に「あなたが信じてきた医療は本当ですか?」「発想の転換で元気に長生き 健康自立力」「続・健康自立力 ‐後悔しない治療の受け方‐」「健康の原点は食と腸にある!」などがある。
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。