農業は植物だけではなく人も育てる

自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんにお話を伺っています。

前回に記事はこちらから⇒植物本来の力を引き出す方法とは?【土の大事さ】

障害者が農業に取り組む活動が、<農福連携>として注目を集めています。

その中でも、「自然栽培パーティ」は、名前通り、自然栽培だけに絞り、全国の障害者施設が手を取り合って助け合って、障害者にあった仕事づくりに挑戦します。

棚田などの耕作休耕地を田んぼや畑に戻し、無農薬・無肥料で、いのちの力みなぎるコメ、野菜、果樹を育てます。

農福連携

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農福連携を縁があって始めました。

福祉の力を借りて、それで組織を作っていったら国のお金が農業に直接入っているわけではなくて間接的に入る形になるんです。

農業は元々、現金がないので人件費が一番きついんですね。

そしたらその人件費も抑えられて、一緒に物を作って売れた物を今度は工賃アップに使えばいいと思うんです。

福祉は農業する力を持ってないんですね、財力は持っていても。なぜかというと職場関係上、時間で縛られていたりとかしていたりするので。

そういう色んな事が農業にとって不具合になってくるんです。

それを農家が補ってやれば、農業を職場にしようとしている福祉関係は確実に農業との連携をしっかりとればうまくいくと思います。

今、それを試しにやっていて、ある程度育ってきているんですが・・・

福祉が困っていた事はお金面じゃなくてそこに来ている利用者さん達が精神が不安定になってしまったり、もう来なくなったりとか精神面的な部分で色々問題があったりするんですね。

それにスタッフも一緒に巻き込まれたりしたりしているんです。

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だから非常に閉鎖的でもあり、なんかこう~社会の隅にでも追いやられているような感じがあるんです。

社会との接点があまりなくなってしまう。

一箇所の施設にまとめて入れとけばいいやみたいな感じもあり、やりたいのかもわからないボールペンをひたすら並べる仕事などをやっている。

そうすると10人並んでいるのに、1人か2人しかやっていなくて後の分をスタッフがやっていたりしてるんですが、それでは発展がないと思ったんですね。

そんな状態を打開したいと言って、今付き合っている福祉の人達は自然栽培に踏み込んできたんです。

それで「やってみよう!」ってなりまして、半年間くらいやり方などは話し合って、やってみて最初は工賃を少し払っていたんですが・・・。

僕らが、だせる工賃は半日で500円くらいなんですね、できなくてもできても払うって約束だったんです。

でもやっぱり、僕らからすると、できてもできなくても500円払わないといけないってのは毎日の事ですし、出費になるんです。

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収穫物がない時は、出費しかないわけですしね、それくらい農業って苦しいんです。

だけどもらう側は班で来ているのに、半日来て「500円の評価なのか」になるんです。

これをがんばって増やしていこうね!って言ってもお金の価値になった瞬間にすごくモチベーションが下がったんです。

お金の尺度で計られてしまうと、スタッフも含めてすごく辛そうな顔をしていました。

それだったらそのやり方をやめよう!となり、やめてみたんです。

そして向こうと話し合っていたら共同体になろうってなったんです。要はここの圃場もあなたたちの圃場でもあり、みどりの里の圃場でもあるっていうような、もうちょっと垣根を下げて共にやっていくようなやり方をしよう。

※圃場(ほじょう)とは、農産物を育てる場所のことです

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下請け作業をやらせるのではなくて、常にいろんな箇所で連携を組んで一つの企業になっているようなイメージでやっていこうよってなったんです。

栽培計画を立てる時もウチがやらないのをやってもらいながら、商品をかぶらせて売り先に困るよりも違うのをやることで商品の厚みを増やして、それでもっといいサービスを提供していこうよっていう風にして、そんな形で成り立たせていこう。

そうするとみんな、どんどん身が入ってくるんだよね。

最初来た時はみんな暗かったんですよ。

「これじゃあイチゴが暗くなってしまうよ(笑)」って感じだったんだけど・・・

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1ヶ月で、まず1週間のうちに半日しか来れなかった人が、「イチゴが自分が行かないと死ぬんじゃないか」に変わったんです。

それで自然と「今日は私は午前中は収穫をしましたけど、午後はまだイモムシを取ってないので今日の分を取らないとイチゴが死んじゃう」って言って次の日も来て、そして毎日来るようになったんです。

そうするとイチゴがうまく育つんです。

イモムシに葉っぱを食べられていたりしていたのに、キレイな葉っぱが出てきて回復するのが目に見えてわかる、だから自分達がやった事がわかって、しかも自然栽培のイチゴだからできたのがめちゃ美味しいんだよね。

それが自信になっていき、そしたらいつも「すいません、すいません」って言ってた子も今では「今日のイチゴの味はちょっと落ちています」など向こうから情報を教えてくれるようにまでなっていったんです。

こっちから声かけても返事をしなかった子でも、向こうからからおはようございますって大声で言ってくれるようになったりして、

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天井もない、壁もない、何か大きな声をだしたって別に大丈夫って中に、みんなで入ってなんとなくみんなで仕事して終わったみたいな感覚がすごい新鮮で・・・

仕事ってそういうもんなんだって教えられたんですね、何か・・・

普通は仕事ってお金を稼ぎに行くもんだって思ってしまうよね、仕事を探しに行ったら時給がいくらで、何時間労働でどれが割がいいのかな?って探しますよね。

ずーっと仕事をやってきて、仕事は人生の最大の喜びなんだよ、仕事がなくなったら全然生きがいなんかないんだよなど、

そんな話は聞いていて、まぁ確かにそうなんだろうなって自分でも思っていて、そういう仕事の仕方をしていたりしたんだけど・・

彼らが仕事をしてお金が発生していないのにすごい顔が生き生きと変わっていく事実と、

ある障害者さんのお母さんがここに来たことがあって、その時に僕がたまたま居合わせて

「ちょっと見てってくださいよ、本当に綺麗になって草とかも本当にないんです。今年は過去最高の圃場になったよ。みんなのおかげでありがたいです」

それで自分もやっぱり申し訳なさがあって、工賃がちゃんと作れてないから「工賃はちゃんと作りますんで」って言っていたら

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そのお母さんは涙ぐんでいて

「自分の娘がありがたいなんて言われたことがなかった」それで「一度も役に立ってもらったなんて一度も言われたことがなかった」って言ったんです。

苦しんでいるのは障害者さんだけじゃなかったんだと、お母さんも当然のごとく苦しんでいて・・・

でもそれはお金が稼げない事を苦しんでいたんではなくて、世の役に立ててなかった事に苦しかった。存在が認められる場所がなかった。

その時に、先にこっち(やりがい)なんだなと思ったんです。

工賃とかはまず置いといてまずは役に立つこと、役に立つようになってどんどん自信をつけていって、仕事の幅も広がってった時に工賃もあがってると思うんです。

仕事っていうのはお金目当てでやるんじゃないってことは、頭では知っていたんだけど。

彼らの反応があまりにも素直だから、思った事が素直にでている感じなんだよね。だからその反応を見ているとそうなんだろうなと。

仕事はまず最初に、やりがいが大事でお金は後からついてくるってことなんです。

勿論、お金は大事ですけど、一番がお金ではなくてやりがい(人の役に立つなど)が一番なんだなと教わりましたね。

これはイチゴと会話していても、わかんなかったと思います(笑)

同情で入れたわけじゃなくて、完全に戦力として考えてやってたから、逆にそれがよかったのかもしれません。

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農業ってのは植物を育てるのが楽しかった、こんなのが(無農薬・無肥料)できるのが楽しくてしょうがなかった。

「でも最近、畑で人が育ってるじゃんってね、それがまたさらに面白いんだよね。」

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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)

農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
ブログはこちらから⇒農業生産法人みどりの里ブログ

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