農産物に多量の農薬と肥料が使われているのが常識となっている中、イチゴの無農薬・無肥料栽培(自然栽培)は”最も難しい”言われてきた。
愛知県豊田市で自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんにお話を伺ってきました。
前回の記事はこちらから⇒自然栽培のイチゴは腐らず枯れる(有機栽培との違い)
ーーー自然栽培の土は違ってきたりするんですか?
そうですね、土はものすごく固いと思いますよ。やっぱり何もしてないんで、僕はですけど土作りをしないやり方なのでね。
イチゴが痩せた土が好きなんで、これ以上、土がよくなられると困るんです。
ここは7年は無肥料でやっているんですけど、草とかを生やしてた時期は最初あったけど土がだんだん良くなってきちゃうと、イチゴにとっては不利になってくるんです。
なぜかというと厩肥力がすごい強いんですよ。
イチゴの根っこってどんどん新しいのが出てくるから、ナスとかピーマンみたいな直根で一本だと、新しく2本目はでてこないじゃないですか?
そういうタイプは厩肥力が弱いんですが。
稲みたいに次々に根っこを出してくるタイプがあるんですけど、どんどん新しい根っこをだしてくるのでどんどん吸えるんです。
またイチゴはもう少し違って、多年草といって冬でも生きてるし休眠して1年中ずっと休眠から目覚めれば、また種をこぼしたり増殖してきたりするのでものすごく強いんです。
ものすごく強いんだけど、どうしても肥料をやっちゃったりすると強い厩肥力を持っているので吸ってしまって病気になりやすいんです。
だから一般の栽培だど肥料がいらないのに、あげないといけないことになっているので矛盾しているんですね。
無肥料でやると根が太くなる
しかも化学肥料をバンバンやってると、根が細くなっちゃうんです。台風がきたら株ごと飛んでいっちゃうなんてありますからね。
無肥料でやると根が太くなるんです。
植物は根っこから大半の養分をとっているわけじゃなくて、5%くらい取ってるだけで、後は空気と水で自分の体で作っていくんです。
だからここ(ビニールハウスの窓)を開けているところを締め切っちゃうとやばいんです。
昼だったら二酸化炭素がなくなるのでだいたい2時間くらいでダメになっちゃう、そうすると光合成ができなくなるんです。
植物はほとんどの養分を光合成で作っているんです。
だけど餌をやらないといけないイメージで肥料をやるんですね、でも植物は動物と違って自分で炭水化物を作る事ができるんです。
基本的には全ての植物がそれをやれるんです。
土の力がどれほどすごいかって事なんですよ。
こうやって雑草を生やしてあげないと土は作れないんじゃないかとか、色々あるんだけど、
はっきりいって関係なくて大事なのは、温度と水で、温度と水がベストであればいくらでもできると思います。
それくらい土はどの土でも恵まれている。絶対に悪い土なんてない。だからどこでやってもできますよ。
ーーー今まで農薬を使ってた土でも大丈夫なんですか?
1年はなんかおかしいなってのがあるかもしれないけど、2年目は多分いけると思うよ。
それくらい土も浄化する能力が高いし、自然栽培とかを始める人でもこんだけ兼業農家とか普通の農家が農薬使っているので、結局その後をやるしかないんですよね。
自分が開墾しないかぎりはね。
だからできるんだけど、その転換する時が前年度の影響が多少でるかな?ってのはウチでもある。
後は自然のあぜの草がこんなもんだから、あそこらへんはあんだけ草があって、そうだからそこへ種を蒔いちゃうような農業ってのは業にはならない。
「自然栽培」とは、化学肥料や農薬、そして堆肥などの有機肥料にも頼らず、植物本来の持つ自然の力を引き出す栽培方法のことで、決して放任栽培ではない。
それはただ自然環境に浸りたかった状態であって、食料を生産していかないといけないウチらとしては自然のルールを見つけてそれを利用して、より収量がとれて味もよくなるようにする。
そして病害虫も自然のルールに沿ってやれば抑えれるので、病害虫も原因があるから栽培面でそいつをちゃんと潰せばいいんです。
そうすれば物がとれるよっていう状態にでもっていけるから、それがやっぱり自然栽培なんだと思う。
自然状態だと周りからあまりにも邪魔されすぎる、要は自然環境の中は競争なんだよね。
例えば木が生えていて、思っていることは他の木が早く枯れてくれんかな?そうなれば俺はもっと根が伸ばせるのにってやってる状態。
その中でせめぎ合ってやってるんだけど、能力の半分も出せてるかわからない状態なんですね。
その中で自分たちが手を入れてあげれば100%の力を引き出せるんです。そうすると自然界でとれるものよりもレベルの高い物がとれる。
自然だけだと作物を取る目的じゃないから、ただ生きていくというかこの混沌とした中でどれだけ幅をきかせて生きれるかってだけだと思うんです。
子孫を残していくってだけなんですよ。
それをちゃんとみんなの食料として渡していけるようにいくにはそこの自然をよく見て、例えば温度が高いと植物がよく育つなとか、
例えば日照りの日が5日間も続いてしまったよ、暑いのに水を欲しがってるじゃん、でもやれないっていう風になるのが自然なんです。
だけどそこに自分が水やりをしてあげるだけでも植物の力を引き出せる。そうすると初めてものになっていく。
肥料はまた違って、肥料は求めてないんだよ。土の中に十分あるし、5%くらいしか必要としてない。
まず60~80%くらいが水でプラス二酸化炭素。
それだけで炭水化物はできるんです。だって炭と水の化合物ですから。
酸味も甘味も全部、炭水化物だから。チッソは微量でよくて水をいれると炭水化物とチッソが結合してアミノ酸になってタンパク質がつくられる。
植物の体の90%くらいは炭水化物でできているんですね。だからその後わずかちょっと細胞面にタンパク質がいるわけです。
チッソが一個入ってきたら9つくらい炭水化物を使うと思ってもらったほうがよくて、だから実へまわすための糖分がチッソをいれちゃうと抜かれちゃう。
チッソだけ入ってくると、植物は人間みたいに排泄ができないのでね。
ーーー植物はどうやって排泄するんですか?
それは実に送って実を腐らせて落とすんです。
チッソなど必要以上に自分の体に取り込んでおくと毒になっちゃうから、ある一つの実を選んいらないものを送るんです。
そうなるとチッソの多すぎる実になるから病害虫がいっぱい寄ってくる、で腐って落ちる。
それをいっぱいやっちゃうとたくさんの実が崩れちゃう。
だから肥料をやるといらない分が入ってきてしまう。それは植物は止められないんです。あったら吸っちゃうんだよね。
こんな濃い土で根をあんまり大きくすると、入ってきすぎるから実を落とすことになるし、それができなくなると自分の体を腐らせて終わらせるしかなくなるからそうならないために根を小さくする。
自然栽培だと根が大きくなりますよってのは、ないところはないなりに根を張るんです、そうすると水切れもなくなる。
根は養分だけじゃなくて水もとってますから。
水切れがなくなるから純粋な水が入ってくる、チッソで汚れてないからね。
植物は本当は水が欲しいんですよ。
チッソはあるぶんだけでいいんです。そこにチッソをいれてしまうと、そこに水をたくさんあげてはだめですよって言われてるんだけど、あれは肥料を入れてるからなんです。
肥料を入れてなかったら、水をガンガン入れても大丈夫でそのほうが喜ぶ。
それはルールだからね、この自然のルールにのってやらないと自然系の栽培は成り立たないと思います。
自然の中でやっていくのはそんなに甘くないので、逆に言うとうっかりしていると自然によって殺されたりもしますから、うまく付き合わないと。
だって自然にとってはどうだっていいんだから、あなたが私に合わせて、私はこうやるからあなたが合わせてって、だから俺たちは自然環境には従うんです。
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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)
農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
ブログはこちらから⇒農業生産法人みどりの里ブログ
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