予防医学の重要性を説き続ける医学博士・脳神経外科専門医「田中佳先生」にお話を伺っています。
【本出版の秘話】
ーーーまず「あなたが信じてきた医療は本当ですか?」の出版の動機や流れきっかけ、医師として現代医療への提起を教えてください。
この本を出版する直接のきっかけは、講演会に今回の出版社の方が来てくださったことから始まりました。
その講演会は 3年半くらい前でしたが、参加者さんのレスポンスがものすごくよくて、コール&レスポンスというのはこういうことなんだ!こんな一体感があるんだ!っていう体験をさせてもらいました。
700回近い講演会の中でも歴代一位の出来映えでしたねえ。
そんな希有な講演に、たまたまという必然なんでしょうかね、出版社さんが来場するなんて。
でね、「この講演会をそのまま本にしたい!」と言われたんです。
それは面白いからやろうということになって、本作りが始まりました。
苦節2年半。読み手のことを考えて書き直すのに苦労しまして、何度も書き直しの指示が来て、励まされ、学ばせて頂き、心の底から湧き上がるまで耐え、最後の1年はのたうち回りましたね。
でも、その甲斐あって、医師側の考えや患者さん側の考えをわかりやすくお伝え出来ていると思います。
大手出版社の営業部長の感想で、「この本は面白いし、誰も批判していないのがいいですね」って、そこよ!そこ!流石ですよね、営業部長。
もう、ね、皆さんに是非知っていただきたい医者や医学の在り方とかを解説している本です。
読んでくれた方の感想も、最初は笑って読めたけど、後半は感動して泣いたって。
うんうん、そういう構成なんだよね。嬉しいなあ。
【治るの見解違い、医者の治ると患者の思っている治るの違い】
まずはじめに、「治る」の見解違いを知ることが大切です。
医者の治ると患者さんの思っている治るは本当に違います。
ー医者ー
風邪をクスリで治しましょう。
ほら鼻水止まって、熱も下がったからもう治ったね!ー患者ー
風邪のウイルスを撲滅した時点で治るのですよね?
このような感じで、同じ「治る」でも認識は違うのです。
経験した人がこの本を読むとわかりますが、殆どの人は医者の話術に飲み込まれてしまいます。
こちらも「全て先生にお任せします」という言葉を言わせるために、巧みな話術を使います。
私自身も9割9分、手中に収めてきた実績がありますからね。
反対に、自分の思い通りにならない患者さんには恐怖の大王となり、突き放しにかかります。
いまじゃ古い医者しかしないかも知れないですけどね、「じゃあ、もう、知らないよ、私はもう責任は持てませんからね、好きにすればいいでしょう」 などと言い、不安をあおります。
こんなことはね、もう、医者としてというよりは、人としてどうかしてますよね。
医者からそのように突き放されてしまった時の絶望感というか、恐怖感というか、やっと今では分かります。
ましてや、がんで手術だとなったら、医者に従うしかないと思ってしまいますよね。
そこはね、本当は冷静に考えないといけないところですよ。
なぜこの世に一人の主治医しかないと思ってしまうんでしょうか?ということです。
日本にはもの凄い数の医者がいますので、あなたに寄り添う気のない医者に、なぜあなたは命を預けられるんですか?と。
こんな普通の感覚を持つということがとても大切なんです。
大きな病院が少ない地方なら、大都市病院へ行く気合いも必要かなと。
だって、人生がかかってるんですからね。質の悪い医者は飛ばされるっていう大学医局人事があったりもしますから。
ただ、一般的には医者に質問できないと思っている人が多々います。
本当はそう思い込まされ続けているからなんですけどね。
お医者様は絶対という感覚が患者さん側にある。特に高齢者の方。
いつの間にか多くの民が擦り込まれている。医者もそれに慣れてて傲慢になりがちである。
最近の医学教育は少し変わってきているみたいですから、患者さんへの理解を示すお若いお医者さんが増えてきている感じはします。
教育システムも変わってきている。
ただ、世代交代には、あと30年くらいはかかるかな。古い高圧的傲慢医者が絶滅するのを静かに待ちましょう。
もうね、この本が時代遅れになることを願っています。こんな傲慢医者って、昔はいたよねえって(笑)。
話が逸れたので戻しますが、常に自分の意識に集中して生きて欲しいですねえ。。。
本質に立ち返ること。そうしないと浅い常識に流されて、結果的に人生が翻弄されるという現象が起きてしまいますから。
この本では、そういうことも踏まえているつもりではあります。
現代医療を信じてる人には衝撃的な内容かもしれません。
でも、本当のことしか書いていません。希望を叶えようとしてくれる医者に出会ったら幸運です。
ともかく、自分の人生がかかっていることなので、全てを納得してから医療を受けて欲しいなあと思います。
あ、もちろん現代医学の限界を知った上で、ですよ。
【医師と患者、生活の質:QOL(Quality of Life)の見解の違い】
「症状が消える」というのと、「病気が消える」というのは、方向がまるで違います。
例えば、大腸癌の術後に麻酔から覚めたらお腹に人工肛門がつけられていたというのはありがちなことです。
事前に言われていたとしても、患者さんは人工肛門がどのようなものかちゃんと分からずに手術同意書にサインをしてしまう。
それしかない、それが最善だという説明を受けますからね。
先ずは、それ意外に方法は本当にないんですか?という一つの質問ができるかどうかなんです。
まあ、無いって言われるでしょうけどね、質問をするかどうかで医者の人間性は透けて見えるものです。
質問して不機嫌になったり、突き放されたら「こいつはダメだ!」という判断をすればいいだけなんです。
この人は自分に寄り添う気がないんだなと。
医者を選ぶ基準は「自分に寄り添うかどうか」です。そのような目線で医者を見ればすぐわかりますよ、きっと。
本にも書かれていますが、いい先生な感じで、すごく優しいのに、現代医学一辺倒っていう医者の対応が難しい。
いつも「そうですよね」と満面の笑みで言ってくれるが、薬は減らさない。
医学常識を優しく押し付けてくる。
患者さんに寄り添うということは単に態度が優しいことではなく、どれだけ患者さんの声に耳を傾けてくれているかです。
そして可能な限り、希望を聴いてくれるか、聴こうとしてくれるか、なのです。
担当の医者を変えるのは面倒くさいし、お金がかかるということもありますので、いかに今の主治医と良好な関係を築くかということが大切ですね。
そのような時は「人生を語れ」です。
医者を選ぶ基準は「自分に寄り添うかどうか」
如何に患者さんの人生に興味を持ってもらえるかです。
例えばダルビッシュ投手が肘を怪我して手術するという状態で、整形外科医の目の前に来た時に、どう手術しますか?って言われたら、まず野球人生を考えてプロ野球ができるように考えますよね。
ところが一般人の場合は、あなたの人生をそもそも医者は知りません。
興味もありません。目の前の患者さんは、ただの人です。
人生を考えて治療をしてくれません。
プロスポーツ選手や歌舞伎役者さんと、貴方とでは手術への意気込みが違うでしょうね。
だからこそ、自分の人生を熱く語れということです。
例えば私は日本国宝の陶芸家なので指が動かなくなるのは死んだも当然です、舞踊をやっていますから腕が上がらないと困ります、帯を締めた時に人工肛門では困ります、のように人生を語らないと医者は真剣に考えないです。
それでも平気で「諦めて下さい」って言いますしね。
命とどっちが大切ですか?っていう殺し文句も使いますしね。
医者の言う「命」って、心拍があることですからね、その方の人生ではありません。
そもそも同じ土俵じゃない。立ち位置が違う。目的の方向性も違う。
何のために医療があるかという原則論で言えば、どうしたらその人がより幸せになるか?ということであり、その人が幸せであるかどうかは医療だけでは決まらない。
多くの医者は医療を行えば健康になって幸せになると勘違いしている。
例えば手術をしないときっと2年で死ぬ、手術をしたら半身不随だが20年生きられると言われたらどうするかですよね?
手術をやることによって不自由な人生だが20年生きようと思うのか、手術をしないで全力で2年生きることに意味を見いだすのか、その人生観は人それぞれ違うということです。
しかし、これは医者(医学)にとっては関係ない事なんです。
手術をして20年生きてもらうことが医学における正義であり、医学者としての真理なのです。
ともかく、死なせたら負けだ。少し長生き出来る方法があるのに選ばないなんてあり得ない。まあ、そんな感じです。
医師免許を持つ者は「患者さんを救いたい」と思っています。
救える可能性がある限り、諦めません。
しかし医者と患者さんの感覚の違いによる落とし穴みたいなものがあるんですね。
・医者の興味=病気
・患者の興味=人生
といった具合です。
患者さんの人生はその人その人のフルオーダーメイドです。
手術しないと2年だよ、手術したら20年だよと言っても、2年を選ぶ人がいることを医者は理解できない。
理解する概念がないと言った方がいいのかもしれません。
頭が医学一辺倒だからかもしれません。
人生経験が乏しいからかもしれません。
経験してなかったら人生観的に知らないことだらけですから、共感できません。
まあ、知る暇もないというのも大きいかも知れません。
ドラマでもよくありますが、カップ麺にお湯を入れて食べようかなって時に呼ばれたりして。
私も昔、ラーメンを頼んだ時に呼ばれて、戻って食べる時には汁無しうどんになってましたから(笑)。しかも冷えて。それでも食べて。それくらい忙しかったです。
その他にも専門バカにならざるを得ない環境もあります、なぜなら患者さんはガンガン来ますし、自分のスキルもあげなきゃいけない。
大学だったら出世しないといけないし、出世するには学会に発表をしなきゃいけない、論文を書かなければいけない。
偉くなるんであれば医学博士とらないといけない、などです。
いまの世の中は、患者さん側の依存という問題と、医者側の問題という、双方の問題があります。
患者さん側の「不調なら病院に行けばいい」という考え、まずはそこからの意識改革が大切です。
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田中佳(たなか よしみ)医学博士・脳神経外科専門医
東海大学医学部を卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て市中病院にて急性期医療に長年携わる。
大学在任中に悪性脳腫瘍に関する研究にと医学博士を取得。
日本脳神経外科学会認定専門医・日本抗加齢医学会認定専門医。
現在は脳神経外科診療(保健医療)を行いつつ、予防医学の教育講演活動に取り組んでいる。
田中先生のサイトはこちらからどうぞ→ 田中佳先生のホームページ
主な著書に「あなたが信じてきた医療は本当ですか?」「発想の転換で元気に長生き 健康自立力」「続・健康自立力 ‐後悔しない治療の受け方‐」「健康の原点は食と腸にある!」などがある。
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。