食事を元の正しい形に戻していく
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養生 本格みりんを作り出して、その後どれくらい期間が空いて有機をスタートさせたんですか?
角谷 これは私どもに蔵見学に来られた20人ほどのお客さんが作り方を見てもらい、ここまで丁寧に作ってらっしゃるんだったら、もう一歩進んで原料の安心安全についても気をつかったらどうですか?と言われたんです。
養生 どこの団体さんなんですか?
角谷 これは救世教さん(いわゆる食でもって世界平和を達成しようと言う)なんですね。
養生 その当時ってまだ有機が知られてないんですよね?
角谷 有機と言うよりも、みなさん化学肥料に対して堆肥をちょっと使えば有機農産物だと。勝手に有機を名乗れた時代だったんです。
養生 まだ基準がなかったからなんですね。
角谷 はい。化学肥料については色んな所で歪みもでておったし、あるいは原因のわからないアトピー、アレルギーなどが子供たちに増えていく中で、恐るおののいている事が始まった時代でもあったんですね。その中で化学肥料、農薬の使用に懸念をもつ方が増えてきていたんです。
私たち自身も米の栽培の中で使われる化学肥料、農薬に懸念はしておったんですが、有機というもののそういったお米を作っている農家さん、生産者の存在があの当時見えてこなかったんです。
養生 まだあまりいなかったんですね。
角谷 はい。その当時もう海外輸出はしていたんですが
養生 そのきっかけなんなんですか?
角谷 これもお客様からのご紹介で、ディーラーさんを通じての海外輸出が始まっていたんです。
養生 本格みりんとしては三州さんだけですよね?
角谷 はい。そんな中で海外のオーガニックの状況もディーラーさんを通じてはいってきたし、有機とはなんぞやと言う話や情報が入ってくるんですね。
海外からのお客様も来ていただいており海外ではこんな状況だよ、こんな制度があるんだよと。
色んな物が見えてくる中で、関心はあったんですが、国内の有機米の生産者が見えてこなかったんです。
養生 それは何年くらいなんですか?
角谷 それは昭和の60年代にはいったところですね、お客様から背中を押してもらって有機米の生産者をご紹介いただいて、それからすぐ始めたんですね。
養生 その時はまだJASのマークもない時代ですよね。
角谷 全くない状態です。まだ自称有機が多くいた時代です。例えば私どもは海外を通じて有機、オーガニックとはなんぞやと、第三者認証をもって有機と名乗れる状況と言うのは聞いていましたから。
その中で、有機米に取り組みをしながら、パンフレットを作りしかしそこには有機と言う言葉を使う事無く化学肥料や農薬を使わないお米の良さを伝えてはいたんですね。
ただ本格みりんが普通に売られているのの倍くらいの値段で、そしてさらにその原料を全て有機米に焼酎も含めてするとさらに4、5割と高くなってしまうんです。
今でこそ有機野菜と言うと2~3割増しくらいですよね?私たちが取り組み始めて時代は、野菜もお米も一般刊行に比較して4割、5割は高いのは当たり前だったんです。
野菜の場合は生産者さんも増えたりして徐々に安くなり2~3割くらいになってきて、しかも野菜の場合は価格がその時の慣行栽培の野菜が常に動くから、差が縮まってきたんだけども、お米の場合は昔の価格から横並びなんですね。
養生 変わらないってことですか?
角谷 はい。変わらないんです。
養生 値段的にどれくらいなんですか?
角谷 今のお米の価格はどうですか?普通にお店に並んでいる価格で4000円代と言うと高いですよね?
養生 そうですね。
角谷 今は3000円代。3000円を切るようなのが普通になってきている。昔は4000円代を切るお米はなかったんですよ。その当時(60年代)米一表の値段が18000円から20000円、60kgでね。
今現在は米一表で11000円、12000円だと高いって言われる時代です。
そんだけ変わっているんですね。4割近く米の価格が下がっているんです。みなさん日本の米は高いと思い込んでいますが、こんだけ下がっているんですよ。
ところが有機米の価格はずーっと変わっていないんです。18000円から20000円の時代に30000円近い価格だったんです。
養生 そんな高いんですね・・で、それが今でも変わってないんですよね?
角谷 はい。
養生 すごいですね~よく決断されましたね本当に。
角谷 (笑)いや取り組み始めたころは4~5割の違いが今では倍以上ですね。それでも私どもは有機米をずっと作り続けてきたんです。
お客さんの中にこの有機米で作った物でしか使えないって言う方がいるんですね。
本格みりんが倍の値段するのに、さらにそれから4~5割高いみりんを売ろうとして売れるものではないんですよ。
ありますよ、と案内はしてもどうぞ使って下さい。とはとても言えないんですよ。
有機のみりんを使って頂いてるお客さんと言うのはアトピー、アレルギーに悩みながら子育てを頑張っている若いお母さんなんですね。
あるいは大病されて、お医者さんや薬に頼らない方が行き着くところはどこですか?
養生 やっぱり食ですよね。
角谷 食事を元の正しい形に戻していく中で使える食材が限られてくるわけですね。そんなお客さん方の世界に少しづつ使って頂けるお客さんが増えていったんです。
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。