引き続き南蔵さんの5代目、6代目にお話を伺ってきました。
前回の記事はこちらから
【たまり醤油と醤油の違いは知っていますか?】
・醤油は、ほぼ同量の大豆と小麦を麦麹と塩水とでもろみを造り、一年ほど熟成させて造られます。
・それに対して、愛知県知多郡武豊町のたまりは、大豆と塩水のみで造られ、麹はみそ玉、(製麹)と呼ばれる麹を使用し、二年から三年の長期自然熟成をすることで丸みを帯びた味とコクに仕上げています。
近年、醤油は脱脂加工大豆を原料として、温醸速醸法といって六ヶ月位で造られるものもあります。
二年も三年もかけて熟成させるには寝かせておく場所も必要ですし、生産量にも限りがあり、手間も費用もかかります。
コストを下げるために製造日数の短縮が考えられます。短期間で造るために無理をした部分を何でカバーするかというと、保存料や殺菌剤の添加物です。
溜まりと醤油は違う
まず原材料から違います。醤油は小麦も入ってますが、たまりは大豆のみなのが本来の姿です。
大豆、塩のみを原料とし長期間掛けて天然醸造で仕込むのが昔ながらの伝統的なやり方なのです。
最近ですと小麦を2割くらい使っている溜まりもありですが・・・
たまり醤油は一般的な醤油に比べると収量が少なくて、高コストになります。
あまり出ないので貴重なんです。
出来上がった、たまりは、3年間熟成したのちにしたたり落ちた旨みたっぷりの濃厚なエキスをそのまま製品にする(生引溜)の他、桶から出した味噌を布にはさみ、圧力をかけて搾る(圧搾溜)があります
五水仕込みと十水仕込みがあるんですが、原料を100に対して50の仕込み塩水というのが五水仕込み、十水仕込みというのが100:100なものが十水仕込みです。
普通の醤油ですと12、14水仕込みで仕込み塩水の方が多いです。悪い表現をするとシャビシャビですね。
五水仕込みは特に貴重でその分濃厚で、旨みも変わってきます。
ーーーたまりに火入れしてる理由はなんですか?
保存性ですね。たまりの方は液体ですからカビやすいんです。個体に比べて液体ですから火入れをやらざるおえない状態です。
ただカビてもいいからその覚悟で生の醤油が欲しいって方には売りますが、ただ責任は持てませんよと。
ーーーどれくらいでカビちゃうものなんですか?
夏場は冷蔵庫入れてないとすぐですね。蓋をしておけばよっぽどいいんですけど、開けたり閉めたりして空気に触れるでしょう?
そうすると酸化してしまうんで、やっぱり空気が一番の敵ですから、だから夏場はやっぱりいくら言われてもダメですね。
冬場限定でどうしても欲しいお客さんは売りますが。
ーーー火入れすると酵母とかは死んでしまうんですよね?
全部が死ぬわけではないですが、ある程度は少なくなります。やっぱりアルコールだとか殺菌剤をいれるとその時点で止めてしまいますので。
うちの場合は火入れの温度が低いのです。大手さんは100℃くらいで火入れしたりするのですが、うちの場合は75~80℃くらいです。
ですからまだ菌は生きています。わざとそうしてはいるのです。高温まで上げてしまうといい菌も死んでしまうんですね、そうすると風味も悪くなってしまいます。
だからそのギリギリのところでやっているんですね。
色が濃くてドロっとしたのが溜まりというイメージは強いですが、黒くてどろっとしたものだけがたまりではない。
そのことを知っていただきたいですね。
続きはこちら⇒三年熟成で天然醸造本物の生味噌、海の精(天然塩)仕込み
前回の記事はこちらから⇒原料にこだわり生味噌にこだわる本物の味噌造りとは?
昔から豆味噌・たまりの本場といわれました武豊で、代々受け継がれました製法を現在に至るまで頑固に守り、自然の味を造り続けてまいりました。
五代目 青木弥右衛門
購入できるサイトはこちらから⇒南蔵商店 青木弥右衛門
〒470-2544 愛知県知多郡武豊町里中58番地
TEL:0569-73-0046 FAX:0569-73-0091
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。