自然療法を実践するには技術だけでなくて「思考」も大切【旅で気づく自然療法】

家庭でドイツ自然療法や手作りの暮らしを実践しながら、自然からの癒しを探求されている森 Wenzel 明華(さやか)さんによる連載コラムです。

旅での自然療法的な気づき

4月初旬のイースター休みは家族でアフリカ大陸のモロッコを訪れました。

その旅での自然療法的な気づきです。

わたしは自然療法を実践するには、その技術だけでなくて「思考」も大切だと思っています。

なんていうか心構え的な感じでしょうか?

そういうのも知っていないと、技術や知識だけが増えても、意味がないんですよね。

実践していく「知恵」というのは思考することにあると考えています。

その怒涛の旅路は(ブログに綴っておりますので読んでみてくださいね)

自然療法王国「モロッコ」

さて、モロッコ旅行を自然療法的な視点から眺めると、感想は、モロッコは薬草天国!だということ。

オーガニックとか自然農という枠組みを大きく超えて、「野生」というかんじでした。

まさに、自然療法王国です。(実際に王国ですよ)

ちょうどわたしたちの訪れた季節はモロッコでは春でした。

春真っ盛りで、都市でもすこし郊外にでるとそこにはカレンデュラやカモミール、ミントなんかがわんさか自生していました。水辺にはクレソンが・・・

市場にもわんさかとハーブが積まれていました。

リアドという個人の邸宅を改装したエキゾチックな宿泊先では、ウェルカムドリンクとして、日常的な飲み物としても「ミントティー」が登場していました。

ちょうどオレンジの花々の咲く季節で、マラケシュではネロリの香りが町中にあふれていて、本当に幸せでした。

わたしたちの今回の目的は「サハラ砂漠」自分たちでフェズ〜マラケシュまで列車で8時間の旅をしたあとは、1泊してマラケシュからは4泊5日でガイド兼ドライバーのかたとともに、サハラ砂漠へ。

これが、ものすごい旅路でした。

マラケシュから700キロくらいのところにサハラ砂漠はあるのですが、移動には1日かかります。

でも道路はけっこうでこぼこだし、ドイツの高速道路のようにはいきません。

わたしたちは2日間かけてオアシスやバラの谷に滞在したりして、ゆっくり移動していきました。

この旅での総移動距離は2000キロ以上になりました。

くたくたになりました。

アトラス山脈を超えていくのですが、山脈のこちら側マラケシュなどは緑溢れている光景が、アトラスを超えるとどんどんと岩や土だらけの荒涼とした風景に変わっていきます。

これは山脈によって気流の変化がおこり、山の向こうとこちら側ではまったく気候が異なる現象なのですが、その差がすごくて驚きでした。

わたしたちが訪れたのは春先で、雪解け水が川になり、雨季になる前です。

アトラス山脈の向こう側、つまり砂漠の方角は川の周りだけ緑の帯ができていて驚くほど豊かなのですが、あとはひたすら無味乾燥したゴツゴツの岩山や土地が広がっています。

夏になると灼熱地獄のようになるらしく50度を超えることもあるそうです。

想像を絶する暑さだろうな、、、と春先のまだうすら寒いモロッコで思いました。

茶色い岩ばかりの土地の川沿いの豊かに広がる緑の帯をみていると、水は生命の源なんだなぁと本当に胸に迫ってきます。

そういう光景をいくつもいくつも超えて、サハラ砂漠へと車は向かって行きました。

薬草の勉強をしていると、ハーブの歴史なども学びますが、川のそばで文明が発達してきたこと、それとともに自然療法も発達してきたということが理解できます。

その理由を肌で感じることができたのがモロッコ旅でした。

まだまだ未開の地という場所も多くて、水道が通っていない場所では、女性たちが岩山の這うようにして立っている家々から水汲みにでかけている姿も目にしました。

厳しい生活だというのは、手に取るように理解できます。

文明の発達と自然療法の発達

自然の力の偉大さと、その自然を屈服させようと科学が発展してきたのだろうか、と人類と自然の関係、歴史を想いました。

でもなにを失ってしまったんだろうか?ということも。

サハラ砂漠で腑に落ちたこと、、モロッコの旅は、どの町も印象深く素晴らしかったのですが、圧倒的に素晴らしかったのは、やはりサハラ砂漠でした。

わたしはその時、ドイツでのいろんな諸問題に心煩わされていて、かつ移動がハードすぎて疲れきり、夫とも喧嘩までしていたんですが・・・サハラ砂漠で、一気になにかがかわりました。

サハラ砂漠は広くて、どこまでも砂の山が続き、とても静かで、なにもありません。

地球の大きさ、宇宙の広さがあるんです。

なんか、自分が悩んでいること、この世界のこと、人間がしようとしていること、してきたこと。

そんなことは自然の前、宇宙の中にいると、ほんとうにちいさなちいさなことなんだなと。

悩んでいたことが馬鹿馬鹿しく感じられました。

人間のつくったルールにはどこか限界があって、みんなが気持ちよく暮らそう、居心地よく暮らそうと努力してきているけれどどうにもすべてがぴったりおさまるわけもなく、どこかにひずみが生じてしまう。(そんなもんなんだな。。。。)

(そうか、そういうもんなんだ・・・)ということは、すとんと胸に落ちた感じでした。

なんて不毛の地のようにみえるサハラ砂漠でさえ、薬草をはじめ植物が生きています。

生きていくというのは、本当に大変だけど、人間には限界がある。

科学や人間の常識、ルーールは大切なものですが、その評価に振り回されたり、ルールにとらわれすぎていると、身動きが取れなくなることがあります。

それでも正しい道ってなんなんだろうか?それは天を仰ぐことなのかなと。

宇宙をみて、天を向いて、生きていくのが「自然療法」的な生き方なのだと感じました。

自然な暮らしと薬草

わたしたちのガイドさんは、もともとご両親がノマドで、その後、農家をされているそうなのですが、「ベルベル緑の薬局」といいながら、いろんなハーブの使い方を教えてくれました。

ミント、ヘナ、フェンネル、あともうひとつは名前がわからなかったのですが、やはりヘナは暑い時に体の火照りを冷ましてくれるというのが一般常識。

砂漠のベルベル人たちは、薬はほとんど使わず、ハーブで治すそうです。

「朝、太陽と共におきて、夜は日暮れと共に眠る。食べてるものは全部自分たちで作っているものや新鮮やもの。つかれたらハーブティー飲んで、眠る。だからぼくの両親は、自然と共に生きているから元気なんだよ」

ガイドのはミッドさんの仕事はドライブすることがかなり多いので、「ぼくのような仕事はダメだね。毎日ドライブだし、食べてるものも、不自然すぎるから。」といっていました。

日本の都会の暮らしは、どちらかというと体力的にも、精神的にも「不毛の地」に近しいものもあるのではないかと思われます。

だからこそ、大いなる存在は自然療法という方法で、自然の叡智を体、心、魂にとりいれると言う術を人間にあたえてくれたのだと思います。

ホメオパシーも、薬草も、フラワーエッセンスも、アロマも、マッサージ、整体も・・・

あまり英語ができないガイドさんだったんですが、その素朴な語りと性格が、ほのぼのした愛のある人であり、フェズで英語ペラペラのガイドさんに会った時に、あまり心を感じられず

(仕事はやはり最終的には、愛なんだなー)と感じました。

まぁ、とくに人間相手の仕事は「愛」が大切ですよね。

もちろん「成果」もですけど。結果がみえないとやはり、駄目ですしね。

ただ技術の発展にしても、科学の発明にしても。全てのはじまりは「愛」からなんだろうなと思いました。

すべては自然に還るということ

サハラ砂漠というのは、さらさらの砂というイメージがあるかもしれませんが、そのほとんどは乾燥した荒野なんです。

ガイドさんが、メズルーカという砂漠の街の、かつて大いに栄えた大きな街があったという場所に連れて行ってくれました。

今では数軒の家があるだけで、あとは荒れ果てています。

「ここは銀山があって、フランスの植民地時代には大きな街と市場があったんだけど、今はなにもないんだよ」

すべてが土にかえり、その街でなくなったひとたちのお墓がありましたが、それも墓石はうすっぺらい石の破片のようなものでできています。

これもあと数十年したら、完全に土にかえるのだなと。

その後もこの地域でお墓をみたんですが、すべてそんな感じの簡素なもの。

石も(どうそ、勝手にどうぞ、お使いください)って感じでおはかの敷地というか、空き地みたいな感じ。

その隅っこに、重ねてテキトーに置いてあるのです。

ヨーロッパでも、日本もお墓って立派なものだったりしますが、墓石自体も、人間のエゴなんだな・・・と。そんなことも感じました。

わたしたちがこだわって買っている家具や洋服、いろんな雑貨なんかも。

最終的にはそれらのものも、人間の執着を表すものだといえるでしょう。

最後は畳1枚の上で、なんにもなしで死ねたらすっとあの世にいけるのかなと。

オーガニックというのも、素晴らしい概念ではあるんですがあまりにも自然から離れてしまった人間たちが、危機感を感じてつくられた「ルール」の中に存在しているのだなと。

アフリカでは野生のまま、そのままにハーブが活き活きと自生しているのをみるとこれが本来の姿なんだなぁと、人間も、植物もこうありたいと、自然療法的な意味でも考えました。

便利さとひきかえに、自然がない都会でもいつか多くの人が「野生」的に生きていければと願います。

そして、いつかわたしたちの肉体は土に還ります。

地球に還っていきます。

魂も天に、宇宙に還るのでしょうね。

そして土に還らないものが・・・それは人間が便利さを求めるために作ったプラスチックでした。

ゴツゴツした砂漠のあちこちにプラスチックのごみが落ちていて、それをみると胸が痛みました。

自然は人間に大いなる恵みをたくさんあたえてくれているのに、人間はいったい自然にたいしてなにをしてるんだろうか、と情けなく感じました。

~最後に~

モロッコの旅は、本当に大変でしたが、様々な野生の薬草たちに迎えてもらい、熱い人々と出会いダイナミックな光景に息をのみ、満点の星空の下で砂漠の砂の上に寝転んで、お散歩して、プラスチックゴミをみて、わたしの思考も宇宙につながったんだなーと、思った瞬間がたくさんありました。

それは旅の最中にも感じましたが、ドイツに戻ってきて、旅から帰ってきてからも、ずっと心にどっしりとつながりを感じて思い出せるものになりました。

自然とのつながりと、人営みを深く学んだ旅でした。

日本にいるとなかなかアフリカまでは旅することは簡単ではないかもしれませんが、一度きりの人生、と思うと考え方も変わってきたりすることもあるのではないでしょうか?

日本は4月から新生活がはじまりましたよね。

ドイツからみなさんの幸せと健康をお祈りしています。

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森 Wenzel 明華(もり ウェンツェル さやか)

著書「ハーブ療法の母ヒルデガルトの家庭でできるドイツ自然療法」(BABジャパン)「ホメオパシーってなぁに?」(ホメオパシー出版 )

「誰でも家庭でできる自然療法」がテーマです。持ち前の好奇心と行動力でドイツでは、自然と共に生きています。家庭で自然療法や手作りの暮らしを実践しながら、自然からの癒しを探求しています。

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