医学博士、池川クリニック院長。胎内記憶でも有名な池川明さんにお話を伺っています。
前回の記事はこちらから⇒妊娠中の授乳は流産しやすいという指導法の間違い
ーーー帝王切開って運命を変えるだとか言われてたりいろいろありますが、あんまりよくないんですか?
良くないといえば良くないけど、赤ちゃんが無事生まれてくるのが良しとするならばもちろんOKですよね。
ーーー助からない命を助けてるという部分もあるんですよね?
だからね、その助からない命を助けていいのかっというのはまた別の問題なんですよね。正直わからないです。
普通、私たちは、助けることはいいことだ、という常識で、助けます。
でも自分の人生を自分で短く決めてくる子もいるらしい。
だから助けることができなくても、その結果は赤ちゃんの願い通りだとしたら、それはそれで悲しいけれど尊重されるべきではないかなあ、と思うのです。
一方、助けるために行う帝王切開。
これはお母さんは無事に産めなかった、と後悔したり子どもに対して悪いという感情を持つ人も多いのだけれども、子どもから見たら決して悪くないということもあったりします。
一人、帝王切開で助かった子でその時の記憶を持っている子がいてそのお子さんは「助けてくれてよかった」と言ったお子さんです。
いんやくりお君という「自分をえらんで生まれてきたよ」という本の著者の子は、生まれつき心臓と肺に重い疾患があって、34週で帝王切開になったんですよ。
帝王切開
お母さんは自然出産がしたくて、わざわざそういう病院に行っていてイメージを作っていたのに突然帝王切開になって、赤ちゃんは生まれた後ずっと泣きっぱなしだし、私の何が悪かったのかとずっと自分を責めてたんですって。
赤ちゃん抱っこしても泣きやまないので、ある時、泣いているりお君に文句を言ったそうです。
「お母さんだって、普通に産みたかったんだ。お腹切って出したからりおくんはお母さんのことが嫌いなんだ」と言ったら、りお君はじーっと聞いててそれから泣かなくなったんだそうです。
それである程度大きくなってしゃべれるようになってから「お母さん、僕泣いてたでしょ、あれは神様に無事産ませてくれてありがとうってお礼を言ってたんだ。
でも赤ちゃんはしゃべれないでしょ?だからお母さんには泣いて聞こえたかもしれないけれど、あれは神様にお礼を言っていたんだよ。」
「自分は生きて生まれたかった、そしたら神様が願いを聞いてくれてお腹を切って出してくれて助かったよ。ポンと出るだけだったから簡単だったよ。」
なんてことを言うのです。大人には想像もつかないですよね。
だから自然出産だったら死んでたんです。でも今、りおくんは生きてる。
ーーーそうやって話してくれるのってだいたい3歳くらいなんですか?
そうですね、結構早くて幼稚園の前くらいですね。りお君は利発な子だったので、結構喋ってましたね。
りお君のお母さんと初めてお会いしたのが、りお君が生後半年の時で、だからお母さんはまだその時は傷ついてるんですよ。
こんなこと言われたあんなこと言われたすごい嫌だと、いっぱい話しててて。その時にもう一生酸素のくだは取れないって思っておられたのですね。
もし、この子の酸素のくだが取れて、抱っこして公園歩けたらすごい幸せだけど、贅沢な願いですよねって笑ってたんですよ。
で、その後お会いした時に、小学校になっても漢字の書き取りを覚えないんだそうです。
そこでりお君に怒ったんです。
「いい加減に覚えて頂戴」そしたらりお君がね、「お母さんしょうがないよ、だって地球はじめてなんだもん」って言うんですって。
そういう子なんですよ。
それでそういう話を聞いたんで、お母さんに「一番最初にお会いした時に酸素のくだ外れて公園に歩けたら幸せって言ってましたよね~今そうなったのに、何か不満があるんですか?」って聞いたら、
「それよく覚えてます、でも人間って贅沢で一つ願いが叶うと次々と思っちゃうんですねー」って仰ってました。
だから障害持ってる子のお母さんたちもすごい辛い部分いっぱいあると思うんですけど、例えば他の子ができて当たり前のことが我が子ができるようになった。
すごい嬉しいはずなんですよ。
でもそれは普通の人が、例えば立ち上がったとかね、もう食べるようになって嬉しいのと同じように成長はゆっくりだけども、できることがひとつずつ増えたら嬉しいって気持ちは変わらないんです。
だから健常だったらいいってそういうのもあるかもしれないけど、障害を持ってるがゆえにほかの人が当たり前だって思ってることにどれだけ幸せを感じるかということもありますよっということですね。
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池川明プロフィール
1954年、東京都生まれ。帝京大学医学部卒・同大大学院修了。医学博士。
上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、89年、神奈川県横浜市に池川クリニックを開設。
サイトはこちらから⇒池川明ドットコム
主な著書に「子どもはあなたに大切なことを伝えるために生まれてきた。 (青春文庫)」「ママのおなかをえらんできたよ。
」「ママ、さよなら。ありがとう
」などがある。

養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。