看護師や療法家を含む医院・施設専属のクリニカルアロマケアチーム タッチケアサービスさんによる連載コラムです。
~中医学視点から観る【春と産後】~
月1回産後ケア連載シリーズ。今回6回目となりました。
前回、中医学視点から観る【アレルギーと産後】について書かせて頂きましたが、今回は中医学視点から観る【春と産後】について書かせて頂きたいと思います。
ぜひバックナンバーとご一緒に読まれることをお薦めします。
おのずと繋がって人(産後)そのものが観えてくることでしょう。何故ならば中医学理論は物事を一つだけにフォーカスして観ないからです。
日本の国の良さは何と言っても四季を味わえるところではないでしょうか。
卒業式・入学式・就職・退職などの別れもあれば出会いもあるドラマの多い季節。この時期にいろんなイベントが多い国も日本ぐらいなのでは?と思うほどです。
では春と言ったらどんなイメージを連想されるでしょうか?
人間にとって良い意味でも悪い意味でもどんな影響を受けやすいと思われるでしょうか?
今の時期、自然界では夏至に向けて陰から陽へのベクトルが徐々に大きくなっていっています。
実際に日の出が冬に比べて少しずつ早まり、日の入りも徐々に遅くなってきているのを体感されていると思います。
そして、冬眠していた動物たちが目覚め地上に出てきて動き始めるころ。植物たちは綺麗に生き生きと花を咲かせ始めます。
そこから観えてくるものは、春は伸びやかに上へ上へと昇るような明るく活発的なイメージではないでしょうか。
実はこれらの現象は人間の体内でも起きていることなのです。
寒く硬直していた体が少しずつ解けて動き出していく。
代謝が活発になっていく時期なので、春になると何かを始めたくなる気持ちになったり、皮膚や体の筋肉なども緩みやすい状態になるので眠くなったり、冬に停滞していた老廃物を排出しやすい状況になるはその理由からです。
逆を言えば、それだけ体も心も繊細になっている時期とも言うべきでしょう。
春先に自分のデリケートなところにトラブルを起こしやすい方がいらっしゃるのは季節変化(温度変化)に影響を受けやすいと考えられるからです。(もちろん理由はそれだけではありません。)
出産はいのちと引き換えの大仕事。
その産後の体は出産の他に赤ちゃんへの授乳や育児が休みなく始まることでさらに消耗していく。
体のベースである【気・血・津液・精(体の基本物質)】を使いきった状態。
貯金する暇なく次から次と体のエネルギーを使わなくてはならない状況の中、産後の体は車のガス欠に近いイメージ。
少しガソリンを入れて走ったらすぐにガス欠。長距離を走らせる力はない。近所のところまで出かけるのがやっと。という感じでしょうか。
そのエネルギーをつくる工場が【脾胃(胃腸のようなイメージ)】です。その胃腸を動かすにも【気】がバランス良く働いてくれないと胃腸は動いてくれません。
春先はその胃腸をはじめ体の気のボス的な役割の【肝】がとてもデリートになる季節でもあるのです。
人間は気持ち良い時は何をしても楽しかったり、ごはんが美味しかったり感じるのと同じように、【肝】も適度な心地よい環境を作ることが大切なのです。
ある程度の緊張感はほどよい気を巡らすので良いのですが、度が過ぎるとアクセルを踏み続けてしまったり、ブレーキを踏み続けてしまって動かなくなってしまったり、あるいはブレーキとアクセルを間違って大きなことに繋がったりするのです。
そうするとどうなるか。身近な例えでは過食になりがちになってしまったり、イライラしてお腹の調子もいまいちになったり、逆に何もやる気が起こらなくなったり、朝が起きずらかったり、不眠に繋がったりすることがあります。
特に産後は喜びと同時に慣れない育児や授乳に悩まされ寝不足が続くことで、自分が思っている以上に体と心は不安定になっています。
そこで春の季節が重なると出産で体が緩んでいる上、春の緩みによって、皮膚などもとても繊細になりがちです。
皮膚一つ一つの細胞にも気血津液が潤っているもので、消耗しきっている産後の体に補ってあげることが必要になって行きます。
口からの必要なだけの質・量の栄養を体内へ。
体外からはアロマトリートメントケアを。アロマは皮膚を通して体内へも浸透していくもの。
体の様子によってアロマ選択は慎重に扱わなければなりません。
何よりもアロマの香りは気のボス的な存在の【肝】のご機嫌を良くさせる力があります。
更に人のタッチングによって気持ちはとても穏やかになり呼吸が深くなっていくのです。そうすると、気が巡り胃腸の働きがスムーズに動いてくれるはずです。
春の季節は産後に限らず人にとって、自分が思っている以上に体と心はとても繊細になっています。
アロマの香りを生活に取り入れてみることをお薦めします。どうぞ気持ちがよい春が過ごせますように。
タッチケアサービス講座・中医学担当 山口恵美
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タッチケアサービス
看護師や療法家を含む医院・施設専属のクリニカルアロマケアチーム。出産直後の患者、延べ15.000件以上の症例等を保有。
西洋医学・東洋医学両視点からのケアを深めるための講座を開催。現場に則した内容の講義講座や勉強会を行う。
クリニカルセラピストを目指す方、セラピストとして学びを深めたい方、また各療法家、医療従事者すべての方が対象で理論だけにとどまらず実践的かつ専門的に学んでいる。
また、様々なかたちで生活に取り入れやすいホリスティックライフ実践のための提案・ケアを一般対象にも行っている。
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。