医学博士、池川クリニック院長。胎内記憶でも有名な池川明さんにお話を伺っています。
前回の記事はこちらから⇒【胎内記憶】生きて産ませてくれてありがとう
ーーー赤ちゃんの障害の要因の一つっていうのは、食事だとか出産時の問題で起きることがあるんですよね?
障害という用語が嫌なので障碍(害ではなく差し障り)という用語を使う人もいます。言葉を言い換えても意味するところは同じだと思いますが。
大まかですが、障害の原因は2割くらいは出産時の脳性麻痺だったりします。
今は逆子で帝王切開するでしょ、あれは帝王切開しないで逆子で生まれた子が脳性まひになった、だから帝王切開すれば脳性麻痺にならなかったのに、とたくさん訴えられて医者が敗訴するという判決がいっぱい出たんです。
昔は逆子でも普通にお産することが多かったのですが、裁判になるのはいやだから、今ではほとんど、どこでも逆子は帝王切開になると思います。
昔は逆子でも自然分娩が普通だった
ーーー以前は逆子でも自然分娩してたんですね。
はい、普通にしてました。まだできる先生いますよ。で教えてるところもあるけど、もう少ないですよね。
逆子の産ませ方とかもいろいろあるんですけど。ほとんど無事生まれるんですよ。でも今の時代は「ほとんど」ではダメなんですよ。完璧でないとダメですので。
なので今は帝王切開に切り替えて全員帝王切開になります。
ところが逆子の脳性麻痺は帝王切開すれば防げたはずだ、と思っていたのに実際には脳性麻痺の率は減らなかった。
ということは、お腹のなかですでに脳性麻痺になっているのではないか、と今では言われ始めています。
既に妊娠中から、赤ちゃんに脳梗塞が起きている場合もあるんです。
CT撮ればわかるんです。でも全員にCTは被爆するからやりませんよね。
もちろんお産が原因だっていう場合もありますけど、でももう区別がつかないんですよね。
それで医者もリスクを犯すより、元々脳性麻痺になって生まれてくるの子もいるのに、逆子で生ませてそれが自分のせいにされてしまう。
帝王切開で産まれて脳性麻痺で生まれてくれば医者のせいではなく、赤ちゃんの持って生まれたものとわかりますからね。
親も嫌だけど納得はできますからね。
だからお互いのために逆子なら帝王切開となっていますね。
脳性麻痺になる要因
ーーーお腹の中で脳性麻痺になる要因ってなにがあるんですか?
食べ物もあるだろうし、いろんなものだと思います。わかりません。でも昔からあるんです。食も血液ドロドロになるような生活が問題なのかもしれません。
タバコやお酒、お菓子ばかり食べている、添加物も多いような食事、それに母親のストレスなども関係すると思います。
ところが、そんなことは医学的には言われていない。
基本的に患者さんがどんな生活をしていてどんなストレスを抱えていたか、なんて調査はされません。
すべて原因は医者の責任とされているので、本当の原因など見つからないのではないかと思いますよ。
でも、結構危ない生活をしている人でも全く問題ないことがあれば、すごく注意しているのに発症することもある。
人によって全く違うというのが実情ではないでしょうか。
陣痛促進剤
ーーー病院では陣痛促進剤を使うと思いますが、その陣痛促進剤が脳性麻痺の原因になるという話を聞いたことがあるのですが、どうなんでしょうか?
出産時の事故で重い脳性まひになった赤ちゃんの約3割に陣痛促進剤(子宮収縮薬)が使われ、そのうち8割近くでガイドラインを逸脱した不適切な使い方があったと報じられた。
報道の発端は、出産で赤ちゃんが重度の脳性まひになった際に補償する「産科医療補償制度」を運営している公益財団法人・日本医療機能評価機構の「再発防止報告書」。
陣痛促進剤と脳性まひにはどのような関係があるのか。
陣痛促進剤(陣痛がない状態で使用する薬は「陣痛誘発剤」と呼ばれる)は飲み薬や点滴で投与される。
薬の効き方には個人差が大きく、副作用もある。
副作用では、強すぎる陣痛によって子宮が破裂したり、強い子宮の収縮で酸欠状態が続き胎児の脳性まひを招いたりするおそれがある。
脳性麻痺はオキシトシンとかでなるわけではないんですよ。使い方の問題だと思います。
脳の虚血状態、酸素がいかない状態で脳性麻痺になるんですけど。
赤ちゃんには胎盤で酸素を供給してるんですね、陣痛がくると子宮の動脈が圧迫されてせまくなってしまうんです、だから胎盤からの酸素の供給量が少し減るんですね。
でも普通の赤ちゃんは、予備力があるから低酸素にも強いので多少のことは大丈夫なんです。
ところが陣痛を起こして過強陣痛にすると、ずっと胎盤から供給される酸素が滞ってしまって脳性麻痺になる可能性があるということなんですよ。
ーーー陣痛促進剤が直接原因というわけではない?
促進剤の使い方の問題なんです。促進剤自体が原因ではないです。
ーーーでは、陣痛促進剤は問題ないということですか?
いや、問題はあります。合成だから、合成化学なんですけど。
構造式は脳からでるオキシトシンと同じものを作るので構造式は同じなんです。
ただ自然のものと構造式、分子構造は一緒だけどもL体とD体と共鳴体があるんだけど、合成するとひとつのものしかできないみたいで、バランスが崩れるんですね。
もともと合成物質でも天然のものでも、子宮の収縮のレセプターについて働きをする。
レセプター=受容体(じゅようたい、receptor)とは、生物の体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持った構造のこと。
それは一緒なんですよね。環境ホルモンはここに擬似的なものがくっついて、振る舞いを違ったものにするから問題があるって言われているんだけど。
レセプターを介してのレセプターの刺激は一緒なんですよ。
だからあとは使い方の問題なんです。早く産ませたいからがんがん使っちゃうんですよ。
そこが問題なんです。
ーーー量を使うから良くないってことではなく?
使い方がまずいってことですね。人によってレセプターの効く量や時期によっても違うんです。
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池川明プロフィール
1954年、東京都生まれ。帝京大学医学部卒・同大大学院修了。医学博士。
上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、89年、神奈川県横浜市に池川クリニックを開設。
サイトはこちらから⇒池川明ドットコム
主な著書に「子どもはあなたに大切なことを伝えるために生まれてきた。 (青春文庫)」「ママのおなかをえらんできたよ。
」「ママ、さよなら。ありがとう
」などがある。

養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。