自然栽培の流通が果たす役割 自然食品店「サン・スマイル」

自然栽培の流通が果たす役割

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新しく農業をはじめた人には必ず伝える言葉がある、と話すのは、この道17年のベテラン松浦智紀さん。

「まず、自分で売ってみて!と言うんです」

埼玉県ふじみ野に自然食品店「サン・スマイル」をかまえ、自然栽培農産物を中心に販売、小売り店や飲食店への卸売りもやってきた。

前述の言葉も、長期的に農家と関わり、ともに成長したいという視点に立つからこその言葉だ。

ファーマーズマーケットでも宅配でもいい。駅前でチラシを配るのもひとつ。身をもって売ることを体験するうちに、どれくらいの価格なら売れて労力に見合うのか、自分で計算できるようになる。

直接販売ならキロ400円で売れるものが、流通を通せば手取りは200〜250円。それでは、就農初期の少ない栽培面積では生活できないことを松浦さんはわかっている。

新しく農業をはじめても、やめる人を数多く見てきた。自然栽培を広げるためには、生産者が永続的に農業を続けられる環境づくりが大事。

そのために、流通の果たす役割は大きいと自負している。

遠方であっても直接畑に出向くことが多く、取引前には必ず生産者と対面で話をする。栽培方法や目的を聞いて、作付け計画や技術について話し合い、契約を結ぶ。

生産者に無理をさせないため、1町歩(1ヘクタール)つくりたいと言われても5畝(5アール)しか買わないと言い切ることさえある。

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一方で販売先にも生産者の特徴や収量に波があることを伝えておかなければならないし、消費者に価値を伝えることも、すそ野を広げるためには大切な仕事だ。

まさにつくり手と売り手、買い手をつなぐ役割を一手に担っている。

流通として生産者に望むのは「お客さま」を考えること

取引が成立すれば、都度リスクを抱えて仕入れ、そのほとんどを売り切る。驚くのは、売上の半分以上をふじみ野の直営店一店舗であげていることだ。

自然栽培自体を知らせることも大事だがそれ以前に、地域に必要とされる店を目指してきた。

新鮮な野菜や果物、コメ、加工品などがにぎやかに並ぶ店に、お客さんが途切れることはない。客の心をつかんで離さないのは、ここにある野菜や食品の「味」。

松浦さんの仕入れの目は確かだ。

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基本は農家目線。だが厳しさもある。「たとえば」と、かたわらにあった里芋を二つつかんだ。

「これは一般的にはS玉とL玉。自然栽培なのでM玉で揃えてとは言いませんが、小さすぎるのと大きいのが一緒に入っていて困るのは誰か。お客さんです。そこは甘えてほしくない」

先日届いた小松菜は、まわりの葉が黄色になっていた。収穫したあとどういう状態で保管し、郵送すれば鮮度が保てるのか。

「そこまで考えるのが生産者の責任」と話す。

一般の流通であれば簡単に門前払いするような局面にも根気強く対応するのは、厳しさの奥に農業への深い愛があるからだ。

都会に暮らす人たちに、自然の力を感じられる野菜を届けたい。そう願って17年間続けてきた。

先人の道に学ぶこと

松浦さんは言う。

「有機栽培のものが国産農産物全体のわずか0.4%。自然栽培はさらに少ない規模にすぎません。いいことをしているという意識は捨てて、市場のニーズに歩み寄ることが必要です」

⇒ 自然食品店「サン・スマイル」

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市場とのギャップに悩むのは、もじょか堂の澤井さんも同じ。

環境に配慮した作物を届けることが水俣らしいと感じながらも、お客さんに求められるのは「とにかくおいしいもの。慣行栽培でも、おいしいものはつくれますから」。

自然に近い栽培法でつくられたものが必ずしもおいしいとは限らない。さらに有機や自然栽培に限ると、供給量が圧倒的に足りず、特別栽培のものも扱っている。

こうした課題を思うとき、昭和40年代からはじまった有機農業運動の歴史に学ぶべきことが多いと話すのは坂ノ途中の小野さん。

「有機農業がより広がる可能性を秘めていたこの45年間。しかし、〝安全とおいしさばかりを追求する利己的な消費者〞を育ててしまった面もあるのではないか。

〝真に環境負荷に配慮できる農家、消費者〞を育てるために、できることはもっとあるのではないか、考えてみる必要はあると思います」

同じことを繰り返さないために、と言い足した。

「野菜は生きものです。一度食べておいしさを感じられなかったとしても、せめて何度か向き合ってほしい。そして、味や見た目も大事だけれどほんの少しだけ、環境負荷の大きさを買い物のモノサシのひとつにしてもらえたら」

それぞれのやり方で、農産物の流通に思いをかける流通会社。

こうした〝届けてくれる人〞を知ることで、私たち買い手が考えるべきことも見えてくる。


自然栽培Vol.5より転載させていただきました。

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