日本の食文化に欠かせない大豆【肥料いらずの大豆は土のバロメーター】

「自然栽培」その考え方と技術 10

文・木村秋則 構成/撮影・編集部 画/岸田真理子 出典/季刊書籍『自然栽培』

自然栽培に取り組む生産者の多くが、せっせと大豆を育てる。

自分たちで味噌や納豆をつくる人もいる。荒れ地でも育ち、「肥料いらず」と昔からいわれてきた大豆の力はそれだけでない。

土を豊かにしてくれる自然栽培の強い味方なのだ。

大豆の育ちを見れば、土の状態を知ることもできる。

肥料と農薬を使わずに、命の力を発揮させるその考えと技術は、農業はもちろんあらゆる分野で誰もがすぐにでも活かすことができる。

進化し続ける「自然栽培」のすべてを木村秋則さん自身のことばで伝えるシリーズ第10回目。

日本の食文化に欠かせない大豆

大豆の自給率はいま6パーセントくらいです(*)。

油の原料や、家畜の飼料に使われているぶんを除いて、食用にかぎっても24%程度の自給率だといいます。

食文化が欧米化して久しいですが、日本には日本の食文化があります。昔はどこの町にも豆腐屋さんがあって、豆腐は毎日食卓にのっていました。

味噌、醤油、納豆は日本の発酵文化の代表であり、大豆はそうした発酵食に欠かせないものです。

安いからといって海外から輸入するばかりでなく、日本の加工業者である、豆腐屋さん、味噌屋さん、醤油屋さん、納豆メーカーなどが、国産大豆を優先して使うようにしてほしいと思います。

生産者と加工業者が手をつなぎ合ったら、もっと国産の大豆は使われるようになるはずです。

健康によい、日本発の発酵食品として、輸出もできるはずです。世界では和食がブームなのに、豆腐の原料が、実はすべて遺伝子組み換えの大豆だった、などということにならないようにしたいです。

(*)自給率6%(2014年度)は国内生産量から種子用6000トン除いた数値。種子用を含むと7%。(『大豆の需要量、自給率の推移』農林水産省)

(中略)

肥料いらずの大豆は土のバロメーター

私が自然栽培を伝えるために、日本全国をまわり始めたのはもう30年以上も前ですが、その頃、「大豆を播いてください、大豆を播いてください」と必ず話をしました。

でも、なかなか伝わりませんでした。大豆を播いてほしいという理由は、昔から「大豆は肥料いらず」と伝えられてきたからです。

そのはたらきは、〝肥料ありき〟のいまの農業ではあまり注目されていません。

大豆は痩せた土地に向いた作物で、栽培すると土が豊かになります。

根は60センチくらい伸びて、硬い土をやわらかくします。それだけでなく、その根が土のなかにいる「根粒菌」(P78)を呼び寄せて根に「根粒」をつくり、大気中の窒素を固定します。

この窒素固定のおかげで、大豆を育てると荒れ地でも栽培が可能になるのです。

根粒が多く付くときは土が痩せている証拠。根粒が付かなくなると、土が肥えている証拠で、そうなってくると花もあまり咲かなくなり、実も少なくなります。

根粒の数が土の状態を知るバロメーターなのです。

土の状態をみるために、まず大豆を播いて根粒がどれくらい付くか見てみましょう(右頁写真)。

根粒は夏には付き始めるので、畑の何カ所かで根ごと抜いてみてください。どのくらい根粒が付いているでしょうか。

もし一株に30粒以上の根粒が付いていたら、翌年も大豆を播いたほうがいいです。

10粒以下なら、土のなかに窒素が十分あるということなので、もうそこには大豆を播かなくてもいいのです。これは、私がいままで試してみて得た結果です。

私も、いまから30年以上前ですが、リンゴが実らない時期に、畑に大豆を播きました。5年間播き続けたら根粒がほとんど付かなくなりました。

それは、土が「もう窒素は十分あるよ」と教えてくれているのです。

私はいまでも土の状態をみるために、畑の何カ所かに大豆を播いて根粒の数を確認しています。

根粒は、大豆だけでなくあらゆるマメ科植物に付きます。以前、友人が家庭菜園で自然栽培をしたときに、マメ科植物のカラスノエンドウが生えていました。

その近くでトマトを栽培して、土を掘ってみたら、トマトの根がカラスノエンドウの根に近づいていました。

カラスノエンドウの根に付いている根粒から、トマトの根が窒素を分けてもらっているのではないかと思うのです。

このように、大豆をはじめマメ科植物の根に付く根粒は、土に足りない窒素を補っているので、収穫のときは根ごと抜かずに刈り取ってください。

大豆の場合は11月くらいまでは土のなかに根を残して、根粒が分解するのを待ってから株を抜くといいです。


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自然栽培 Vol.10

自然栽培Vol.10より許可をいただき一部転載させていただいています。

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