【米との正しいつき合い方ーお医者さんに聞く!-】
取材・文/やなぎさわまどか
イラスト/川村若菜
出典/季刊書籍『自然栽培』
米を食べる人が減っている。1962年から比べると、現在の消費量は半分以下だ(*)。
ライフスタイルが変わり、パンやパスタなど米に代わる主食が増えただけでなく、昨今は糖質制限や炭水化物ダイエットで米を食べない人もいる。
日本人にとって古くから体をつくってきた米と私たちはどのようにつき合っていったらいいのか。
医師でありながら、自然栽培で農業に携わり、さらに伝統医療アーユルヴェーダを学び続ける三林寛さんが〝お米とのつき合い方〟を教えてくれた。
*参考資料/農林水産省「食料需給表」
お米は日本人になじみ深いエネルギー源
私たち日本人は昔から、お米を栽培し、生命活動のエネルギー源として取り入れてきました。
エネルギーが必要な目的は大きく二つあり、ひとつは体を維持するため、もうひとつは脳や体を動かし活動するためです。
私たちが生きるために欠かせないエネルギー源のひとつに糖質があげられます。
糖質は光合成によって太陽の光エネルギーから体に取り込む物質ですが、光合成ができない私たち人間は、自分で糖をつくることができません。
そのため、植物などが光合成してつくった糖質を食べることでエネルギーを得ています。
糖質はとくにお米や小麦など穀物に多く含まれていて、日本では気候風土に合っていたお米、大麦、蕎麦、きびなどを大切なエネルギー源としてきました。
私は3年前からインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」を学んでいます。
アーユルヴェーダには「サートミア(慣れ)」という代々食べ続けてきた食べものが体にいいという概念があり、これは日本の身土不二にも通じることが多く、重要な暮らしの考え方だと感じています。
エネルギーは〝諸刃の剣〟。摂り方次第で体を壊すことも
エネルギーはとても大切ですが〝諸刃(もろは)〟の剣の一面ももっています。
とくに糖質は科学的に不安定な物質のため、摂り方を間違えると危険な場合もあるのです。
たとえるならばガソリンでしょうか。
燃えやすく、大きなエネルギーを生みガソリンは私たちの日常に欠かせない物質ですが、取り扱いには注意が必要で、灯油のように自宅に買って置いておくことはあまりしないものです。
糖もエネルギーが高いうえに、反応性も高いという危険な物質です。
タンパク質と結合すると、AGEs(終末糖化産物)をつくり出したり、うまく体内で処理できなければ活性酸素が発生したりと疾患の原因になりやすいことがわかっています。
上手にコントロールできなければ、体を生かすはずだったエネルギーで体を壊すことにもなりかねません。
お米だけでなく小麦など、糖質の多い食材は食べ方に気をつけることが必要です。
変化した生活様式でも活性酸素をおさえる暮らし方
近年、糖尿病や肥満が国民病になったといわれるのは、食物繊維の摂取量が低下していることに加え、生活様式の変化によって運動量が低下したことも関係していると思います。
運動量が減少し、ビタミン・ミネラルの不足により代謝が滞ると、摂取したエネルギーの処理が追いつかず、エネルギー代謝に問題が発生しやくなり、活性酸素という危険物質の原因になります。
デスクワークが主流となり日常的な運動量が減少した現代は活性酸素が発生しやすい生活習慣ともいえますが、そもそも活性酸素をつくり出す最大の原因はエネルギーの過剰摂取、つまり食べ過ぎによるものです。
そのうえ運動不足のため代謝が追いつかず、さらにビタミン・ミネラルの欠乏によって除去能力も下がる、といったように私たちの日常的な習慣にこそ要因が潜んでいるのです。
活性酸素の発生量をおさえる生活は、エネルギー過多にならないよう食べ過ぎに注意し、エネルギー代謝が滞らないように適度な運動、そしてビタミン・ミネラルを十分に摂ることを意識するといいでしょう。
以前、能登にある長寿の村を独自に調査した際、おばあちゃんたちの圧倒的な運動量に驚きました。
日の出から日没までずっと畑作業などをして、とにかくよく働き、足腰も強い。
93歳のおばあちゃんに話を聞いたら、90歳まで自分で田んぼをやっていたそうです。
お年寄りとはいえ体をよく動かすのでエネルギー代謝が高く、食事は主にご飯と味噌汁、畑で採れた季節の野菜を毎日よく食べていました。
体を動かし、お米、大豆、野菜を基本とした昔からの暮らし方が、結果的に長寿をもたらしていると実感しました。
体の状態に合わせたお米の食べ方、選び方
まずは自分や家族の体質を知ることが大切です。
玄米と白米を比較すると、玄米のほうが消化しにくいといえます。
また、玄米の特徴のひとつとして、食物繊維が豊富なため血糖値の上昇がゆるやかでもあります。
糖尿病など血糖値を気にしている方には玄米を食べるほうがいいでしょう。
消化力についても理解しておくと体に合ったお米が選びやすくなります。
もしも玄米を食べたときに胃がもたれるように感じるとしたら体質的に白米のほうが合って
いるのかもしれませんし、体質だけでなく、不調で消化力が落ちることや、お年寄りなど消化力が弱ってきた場合なども白米のほうが食べやすいと思います。
消化力については季節による変化もあります。
夏の暑い時期、体はエネルギー代謝を抑えて発熱しないようにするため消化力は低下しますし、反対に体を温めたい冬は代謝を上げて熱をためようとします。
たとえば夏にそうめんなど消化しやすいものを食べたくなることや、冬になれば消化力が上がり、玄米など消化の重いものも食べやすくなるといったように、体の状態を感じ取りながらお米を選ぶといいでしょう。
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。