【東洋医学における肺について】肺と五行との関係性・五気から考える風邪予防

あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師の資格を持ち、東京医療福祉専門学校に専任教員として勤務されている湯浅陽介さんによる連載コラムです。

東洋医学における肺について『呼吸機能全般を「肺」ととらえる』

年も改まり、冬真っ盛りの気候です。

気温が下がって寒さを実感する年末辺りからマスク姿の人が目立ち始めます。

風邪などの呼吸器の感染症やその予防のためのことと思います。

今回は、その呼吸器について東洋医学の観点からみて行きたいと思います。

現代医学では、呼吸器は簡単に言うと鼻から気管・気管支を経て肺に連なるものです。

空気の通路、気道と呼ばれる鼻腔・咽頭・喉頭から気管・気管支とガス交換の場となる肺に続きます。

咽頭にはリンパ節という免疫を司る組織があり、気管には異物を外に排出するための分泌液や線毛があります。

病原体が入らない・追い出す機構があります。

吸い込まれた空気は、何回も枝分かれする肺の中の気管支の枝を通り、毛細血管との間でガス交換が行われます。

肺は大きな臓器で、上は鎖骨より2~3cm高い所まで、下は横隔膜に接して肝臓に乗るような形であります。

東洋医学ではこのような呼吸器が担う機能全般を「肺」と呼んでいると考えられます。

肺と五行との関係性

東洋医学の肝・心・脾・肺・腎を「五臓」と呼びます。

お酒を飲んだ時の「五臓六腑にしみわたる」の五臓です。

ちなみに六腑とは胆・小腸・胃・大腸・膀胱の五腑に三焦(さんしょう)という独特の器官を加えたものを言います。

この五臓や五腑を「五行(ごぎょう)」にあてはめます。

今回、五行そのものの詳細には触れませんが、東洋思想で世界・あるいは宇宙を構成する要素とされている「木・火・土・金・水」の5つを五行と呼びます。

我々は「もっかどごんすい」と読んでいます。

色々な要素がありますが、今回はそのいくつかを表にまとめました。

人体の器官を五行的にみた「五臓」「五腑」「五体」、身体に影響を及ぼす邪気をみた「五気」、季節をみた「五季」を挙げてみました。

五行で言うと肺は「金」に属しています。

また「金」の属するその他の要素とも関わりがあります。

たとえば表にあるように肺は「五体」で言うところの「皮」に対応しています。

これは肺が皮膚を司っている、ということです。

古くから知られている健康法に乾布摩擦がありますが、皮膚を通じて呼吸器を強めることが出来るわけ東洋医学的に理にかなっていると考えられます。

また、人体は、表面の皮膚が口から折れ返って体内の気道や消化器の粘膜へと移行して肛門までつながっています。

ですから、気道内や胃腸のような消化管内は実は身体の「外部」なのです。

逆に血管内や筋・関節内、脳や各神経などが「内部」です。

そして、肺と対応する五腑は「大腸」です。

これも例えばアトピーなどの皮膚のトラブルがある患者さんは腸が悪いことが多かったり、喘息とアトピーを両方持っている患者さんがいたりすることで肺と大腸、肺と皮膚との関連をみることができます。

肺と風邪の関係

さらに病気との関連をみると東洋的な人体観では肺に由来する「気」が皮膚上の腠理(そうり)(「=毛穴」くらいに思って下さい)を開閉していると考えます。

これが開くと汗が出、閉じると汗が止まる、という具合に働いています。

ここに表の「五季」の冬に対応する「五気」の寒邪が入ると風邪の初期症状が出ます。

冬には風邪を引くことが多いわけです。

腠理に寒邪が詰まっているため汗が出ず、寒気がします。

邪気と、それに対抗するため身体に備わっているエネルギー(気)とがぶつかり発熱をします。

この風邪の初期にいわゆる漢方薬の「葛根湯」が良いとされます。

身体を温め、腠理を開くことで詰まっている寒邪を汗とともに排出させます。

ちなみに市販されている葛根湯でも、その効能書きを読むと「首・肩こり」があります。

東洋医学では寒邪は風(風邪(ふうじゃ))と結びついて人体に影響を及ぼしますが、そうなると身体の上(首や肩)に入りやすいのです。

そのためそれがこりの症状として出るのです。

首肩の腠理が詰まっているというわけです。

実際、現代の我々も寒い時に首や肩をすくめますね。

それが続くとこりが出るというわけです。

古代人は非常によく病態を観察したものだと驚きます。

ですから、どんな風邪にも葛根湯、ではないのです。

「汗が出ない」、「寒気や発熱がある」、「首・肩のこりがある」という条件がそろった風邪の初期症状に良く効きます。

しかも飲んで寝てから発汗がないと見立てが外れていた、ということになり効果も期待できません。

発汗が寒邪の排出のサインだからです。

もし発汗がみられたらすぐに着替えて冷やさないようにし、引き続き休みましょう。

寒邪だけではない五気から考える風邪予防

さて、冬には「五気」の寒邪が旺盛で風邪を引きやすくなりますが、肺との対応でみると「燥」にも破られやすい、つまり障害されやすい、とみることも出来ます。

「燥」つまり乾燥が呼吸器に良くないということです。

これは経験的に皆さんもご存知のことと思います。

東洋医学では「肺」は湿り気をもった器官である、とされています。

だから窓ガラスに息を吹きかけると水蒸気で曇るわけです。

これは現代医学においても共通で、吸った空気が鼻の中を通ることにより温度と湿気を帯びて奥へ吸い込まれます。

逆に言うと、肺、呼吸器は乾いてはいけない器官なのです。

冬に晴れる日本の太平洋側は非常に乾燥します。

また、寒いので寒邪もはびこります。

この季節の風邪の予防は、睡眠や食事など規則正しい生活はもちろんですが、いかに「寒邪」と「燥邪」を避けるかという視点が重要だと思われます。

寒邪への対策は大事です。

貝原益軒も『養生訓』の中で「久しく風寒にあたるべからず」と説いています。

とは言え、外出したり外に長居をしたりということはあると思います。

そういう時にはやはり、寒邪の入り口となる部分を覆うのが一番です。

首にマフラーやネックウォーマーをすることは皆さん行っていると思います。

意外と無防備なのが腕と足です。

腕には「清冷淵(せいれいえん)」というツボがあり、そこから寒邪が入ると考えられています。

二の腕の後ろの中央で、肘から指3本分上にあります。

前腕部が出ていても、肘が隠れているのとそうでないのとでは体感温度が違います。

サポーターなどで覆うことをお勧めします。

そして足には「三陰交」というツボがあります。

内くるぶしから指4本分上で、スネの骨の後ろ際にあります。

レッグウォーマーなどで覆いましょう。

実際に施術をしていると女性の患者さんで、ご本人も「冷えがある」と言いながら、冬でもくるぶし丈のソックスの方が結構います。

この三陰交は特に女性には大事なツボで生理痛など女性特有の症状に効くとされています。

ここは治療のみでなく保健としてもお灸がオススメなツボです。

そんな場所を冷やすことは望ましいことではありません。

肘から上は指3本分、内くるぶしから上は指4本分は必ず覆いましょう。

燥邪への対策としては、多くの方が着用していますが、マスクの使用が挙げられます。

最近では感染症の予防効果はあまり期待できないという意見も散見されますが、呼吸器をあるべき潤った状態に保つには効果的です。

外出時のみならず、就寝時の着用が良いです。

就寝時にはガーゼを湿した「濡れマスク」も良いですが、口周りに密着するような使用感にやや難があります。

保湿効果は落ちますが、マスクの表の面を霧吹きで湿らせて使用するのがオススメです。

また我々は睡眠中に気付かず口を開けていることがあるので、口の防御にもマスクは有意義です。

起床時に喉が痛くなっているという状況を緩和できます。

また、日中も部屋の空気の保湿に努めましょう。

屋内では加湿器の使用をお勧めします。

最近はパソコンのUSB電源で稼働する卓上用のものもあります。

デスクワークの方は職場でも使えます。

以上のような寒さ対策と乾燥対策でこの冬を元気に乗り切りたいものです。

余談ですが、冬期に雪や雨の多い日本海側はむしろ除湿が必要なほどなのでこの限りではありません。

寒さ対策がご参考になれば幸いです。

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湯浅 陽介(ゆあさ ようすけ)

1974年富山県生まれ。あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師の資格取得後、教員養成科にて同教員資格取得。東京八丁堀の東京医療福祉専門学校に専任教員として勤務。学科と実技の授業を担当。学校勤務の傍ら、週末には臨床に携わっている。

学校HP⇒ http://www.tokyoiryoufukushi.ac.jp/index.php

学校FB⇒ https://www.facebook.com/tokyoiryofukushi/

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