皮膚のコンディションは呼吸器や消化管の状態のバロメーター【柑橘系の生薬の作用】

あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師の資格を持ち、東京医療福祉専門学校に専任教員として勤務されている湯浅陽介さんによる連載コラムです。

二十四節気の冬至

今年も今月を残すのみとなりました。寒さもひときわ厳しくなってゆく12月。

師走の忙しさにお疲れの方もあることでしょう。

そんな時、温かいお風呂につかる時間は疲れが取れるひとときではないでしょうか。

今月22日は二十四節気の冬至です。

この日は古来、ゆず湯に浸かる風習が伝えられています。

諸説ありますが、寒く風邪をひきやすい季節に「身体に融通が利くように」とか「冬至と湯治をかけている」とか言われます。

柚子は実が成るまで時間を要することから「努力が実ることを願う」という験担ぎともいわれます。

由来は様々ですが、柚子を用いる辺りに古人の知恵を垣間見ることができます。

柚子の健康に対する作用を見てみようと考え、薬としての活用に思い当りました。

しかし、調べる限り、いわゆる漢方薬の生薬としては柚子そのものを用いた処方はみつかりません。

そこで柚子はもともと柑橘類として知られていますので柑橘類の生薬としての作用を見てみましょう。

柑橘類の生薬【枳実(きじつ)や陳皮(ちんぴ)など】

まずはミカンの果実を用いた枳実(きじつ)や枳殻(きこく)です。

枳実は東洋医学的に脾や胃に作用するとされています。

そして枳殻はそれらに加えて肺と大腸にも作用します。

消化促進、鎮咳・去痰、胸腹部の緊張感緩和の作用が知られています。

次いで、ミカンの果皮を用いた陳皮(ちんぴ)と橘皮(きっぴ)は同様の物と見られることも異なるものとして見られることもあります。

これらは脾や肺に作用する、と言われています。

健胃作用、鎮咳・去痰作用が知られています。

ここで言う脾や肺などの臓器は現代医学で捉えられている臓器そのものだけを指すのではなくその器官系統の機能まで含めて捉えています。

東洋医学におけるいわゆる「五臓六腑」(下図)です。

東洋哲学の「陰陽論」および「五行説」

東洋哲学の「陰陽論」および「五行説」はこの世界が「陰」と「陽」、そして「木火土金水」の五つの要素からなるとしています。

それは人体も同様で、陰陽、五行からなると考え臓腑を陰陽と五行に配当して捉えています。

なお、上表の「火」の部分は括弧にそれぞれ「心包(しんぽう)」、「三焦(さんしょう)」があり「六臓六腑」ととらえるなど諸説ありますがここでは触れません。

さて、先に挙げた柑橘系の生薬が作用する「脾・胃」、「肺・大腸」についてみて行きます。

「脾胃」は消化器官・機能を指します。

五行の「土」の陰と陽のペアになっています。

「胃」はともかく、東洋医学における「脾」は現代医学で言う「脾臓」とは異なるものと考えられています。

「脾臓」はリンパ節の塊として免疫にかかわる器官であり、「脾」はむしろ現代医学で言う「膵臓」と捉える考えがあります。

膵臓は現代医学では血糖値を調節するホルモンや消化液を分泌する消化器官の一つです。

ですから東洋医学における消化器官である「脾」を膵臓と考えても不自然ではありません。

また、大腸は現在とほぼ同じように考えて良いものです。

これは上表で「金」の「五腑(陽)」に配当されており、そのペアとして「肺」が「金」の「五臓(陰)」として配当されています。

「肺」も臓器そのものの他、呼吸器系の機能まで含めて「肺」としています。

上表に示しましたが肺と大腸は、「五体」の「皮」を司るとされています。

「皮」とは「皮膚」のことです。

皮膚のコンディションは呼吸器や消化管の状態のバロメーター

これは現代の人体のとらえ方でもありますが、皮膚が口や鼻で折れ返って体内の粘膜とつながっているので、その後の気管や消化管などは身体の「外部」となります。

下図の通りです。

ですから、皮膚のコンディションは呼吸器や消化管の状態のバロメーターと言えるわけです。

これは何も東洋医学の観点からだけではありません。

消化管、特に大腸の状態はアトピーの患者さんの皮膚の状態に影響しますし、アトピーがない方でも便秘が続くと肌荒れがみられることがあります。

逆にプロバイオテクス食品などで腸内環境が改善されると肌のコンディションが良くなることがみられます。

冬の季節は寒さから風邪を引くなど呼吸器系を病むことがありますが、冬の乾燥から肌のコンディションを崩すこともあります。

また、「脾」「胃」も風邪で胃腸炎などを起こしたり、単純に冷えることで状態を崩したりすることがあります。

消化器など身体の内側の疲れをいたわる、これも古人の知恵が残る習慣

また、現代は冬至の時期、忘年会シーズン真っ盛りです。

消化器に負担がかかることも多々あると思われます。

柑橘系の生薬の作用を考えると冬が極まる冬至にゆず湯、というのは古人の知恵なのでしょう。
お風呂だけでなく、柑橘系の生薬を試してみたい、という方もあるかもしれません。

そんな方には新年の元日に「おとそ」を飲むことをお勧めします。

お近くの薬局やドラッグストアで購入できる「屠蘇散(とそさん)」をお試しください。

メーカーによって処方に差異がありますが「陳皮」が入った処方があります。

その他にも「白朮(びゃくじゅつ)」、「桔梗(ききょう)」、「山椒(さんしょう)」、「肉桂(にっけい)」、「大横(だいおう)」、「乾姜(かんきょう)」、「防風(ぼうふう)」、「細辛(さいしん)」などが入っており、胃腸を整えたり、身体を温めたり、水分代謝を助けたりする作用があります。

年末から続く消化器など身体の内側の疲れをいたわる、これも古人の知恵が残る習慣と言えます。

是非、お屠蘇で良いお年をお迎えください。

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湯浅 陽介(ゆあさ ようすけ)

1974年富山県生まれ。あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師の資格取得後、教員養成科にて同教員資格取得。東京八丁堀の東京医療福祉専門学校に専任教員として勤務。学科と実技の授業を担当。学校勤務の傍ら、週末には臨床に携わっている。

学校HP⇒ http://www.tokyoiryoufukushi.ac.jp/index.php

学校FB⇒ https://www.facebook.com/tokyoiryofukushi/

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