「自然栽培」その考え方と技術 11
文・木村秋則 構成/撮影・編集部
画/岸田真理子
出典/季刊書籍『自然栽培』
慣行栽培や有機栽培から、自然栽培に切り替えると、一時的に特定の虫が大発生することがある。
とくに土に肥料分が多いと、それまで農薬で抑えていた虫が一気に増える。
栽培者が頭を悩ませる時期だ。
ところが、生態系のバランスが整っていくうちに「害虫」と呼ばれる虫たちは、役割を果たしたかのように減っていく。
そのとき、人も自分の役割に気づくのだ。肥料と農薬を使わずに、命の力を発揮させるその考えと技術は、農業はもちろんあらゆる分野で誰もがすぐにでも活かすことができる。進化し続ける「自然栽培」のすべてを木村秋則さん自身のことばで伝えるシリーズ第11回目。
人の都合だけでは見えてこない世界
リンゴが実るようになったのは、山の生態に近い状態が畑で再現できたことが一番大きいのではないかと思っています。
だからといって、放置栽培はだめです。なぜなら畑は、人が食べるための農作物を育てる場所だからです。
自然と栽培をひとつにする。この一見、矛盾している環境を人の手で成し遂げるのが自然栽培です。
自然は常に動いています。水も空気もです。水はけが大事であると同時に、地上にも地下にも空気の通り道をつくる必要があるのです。
それは、畑であっても田んぼであっても同じで、農作物が元気に生育するための条件です。
私のリンゴ畑でも、水はけをよくするために溝を掘っています。リンゴの根が伸びていけるようにするためです。
リンゴの木が元気に育つためには、地下から吸い上げる水や、葉でつくられる養分を枝の隅々にまで行き渡らせるようにする必要があります。
日の光をできるだけまんべんなく木に当てることができるように、風が通るように剪定をします。
リンゴを実らせるのは人ではなく、リンゴの木です。人は〝お手伝い〟をするだけです。
自然には〝過剰〟がありません。人が、多くを求めすぎるから肥料が必要になります。それが病害虫を呼んでいるのです。
生態系が自然の状態に近くなっていくと、害虫などの特定の生きものが大発生することがなくなります。
生きもの同士の、〝食べる、食べられる関係〟ができてくるからだと思います。農薬をまくから食物連鎖の関係が崩れて、特定の害虫の被害が増えていくのです。
私が自然栽培をやってわかったことは、どんな生きものにも役割があるということ。
それを人の都合だけで見て、排除しようとするから問題が起きるのではないでしょうか。
自然から学ぶ。このことはこれからますます大事なことになってくる。
そう、私は思っています。
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自然栽培 Vol.11
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。