狩猟から見える命との関わり

取材・文/加戸玲子
撮影/籐 啓介
出典/季刊書籍『自然栽培』

獣害は野生動物が増えすぎたことが原因とされ、病虫害と同様にみなす風潮がひろがりつつあるなか、日々の観察と実体験から、「山の獣けものは増えるどころか、年々減っている」と指摘する人がいる。

「シカやイノシシは、自身を犠牲にしてまで山を再生させようとしているのではないか」という古谷暢康さんだ。

それは、害虫は意味があってやってくるという自然栽培の考え方にも通ずる。

山と対峙し、狩猟から調理まで一貫して行うなかで見えてきた獣と人との関係、獣害のとらえ方、そして狩猟肉の扱いまでを聞いた。

自らも獣となり、山に入る

丹沢山地のふもとで生まれた私は、山人の文化にふれて育ちました。おもにシカやイノシシを獲りますが、狩猟の多くを学んだのは、師と仰ぐ大先輩の猟師からです。

それぞれの地域やターゲットによって適した狩猟方法は異なると思いますが、この地の山と獣を知り尽くした師のやり方は、猟犬に追わせて獲物を待つだけの巻き狩り(*)とはまったく違います。

犬は使わず、鉄砲を持って一人で山に入り、「カタ(獣の跡)」を読む。

獣がいつ来て、どうやって帰ったかを読み取り、跡を追ってたどり着く。そして、気づかれずに仕留める。

犬やチームプレーに依存せず、自分自身が獣になるのです。すると、山の状態が見えてくる。土から木から空気から、手に取るようにわかるのです。

肉の味も違います。緊張もストレスもない状態でいるところを鉄砲で撃ち抜き、死んだことすらわからせずに獲った肉が一番おいしい。

わな猟だと、全力で逃げようとする衝撃で脱臼や骨折が起き、肉が血まみれになります。体中が緊張し、ストレスが溜まるので味が落ちているように、私には感じます。

どんな状況でも一発で撃ち抜き、担いだり引きずったりせず、体が温かいうちにその場できれいにさばいて包み、バッグに入れて下山する。

すべてを山のなかで完結させる師のやり方は非常に美しく、肉も見事です。

一方、いま行われている多くの狩猟現場は、肉の扱いが粗雑で、山のことは二の次になっているように思います。

趣味や娯楽の延長として、みんなで山に入る。猟のしきたりにしたがい、終わったら全員で肉を分けますが、ほとんどの人が食べずに近所の人にあげるか、捨てるか、ペットのエサにする。

それも彼らの文化なので否定はしませんが。

かといって、命をいただくありがたみを感じるというのも少し違う気がします。

我々は食物連鎖のなかで生きており、人間が頂点に立っているのではありません。

山には、狩る者も狩られる者もおらず、シカを追いながら、実は自分がシカに追われている。

皆が同じ円周上を回っているだけ。木々も人間も獣も銃も、すべてが同じところから来て、かたちを変えて循環を築いているだけなのです。

(*)巻き狩り…一般的に行われている狩猟方法で、山の広範囲に射手(しゃしゅ)を配置し、猟犬と勢子(せこ)に獲物を追い込ませる。射手は配置場所から動くことなく、逃げてくる獲物をじっと待つ。

激減する獣が伝える滅びと再生

獣害は確かに多いです。しかし毎日、山に入って見てきた状況からいえば、鳥獣は激減しています。

上の世代の人たちも、「あれだけ山にいたシカはどこへ行ったんだ」といぶかしんでいます。山に食いものがなく、生き残った獣が危険を冒して里に出てきているから多く見えるだけなのです。

そうなった原因は、植林で山が荒れたというよりも、山の寿命が近づいているからだと私は受け止めています。

山を焼き払っても5年もすれば潅木が生えてくるように、そもそも人間が壊せるような自然ではないですから。

このあたりの地質や日本列島の生成を考えると、山は永遠ではないと私は思うのです。

その滅びを獣が伝えている。

シカが森を食べ尽くすのも、一度滅ぼして新たな森をつくるために浄化しようとしているのではないかと思います。

ですから、現在起きていることはあまり重要ではなく、山野が滅んだあとに我々がなにをするかが問題です。

この間違った状態を存続させるのか、白紙に戻して再生させる手助けをするのか。いま自然林を甦らせようと植林しても獣が食う。

これは、「そんなことをするな」という自然の防衛ではないかと思います。

元来、シカは山の神の遣いでした。里に下りて猟師に撃たれることで、我々に神の啓示と恵みをもたらすと考えられてきました。

しかし、現在はただの害獣扱いです。シカが山を下って人の前に現れるときにこそ、なにかが背後に控えているのですが、

それを理解する時代ではなくなった。

獣たちは、里に出ても撃たれるし、山にいても餓死する。自ら絶滅を早めるようなことをしています。

そこに込められているのは、獣だけではなく我々人間がすべからくたどり着く「運命」からの重いメッセージだと思います。


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  • 作者:農業ルネサンス『自然栽培』編集部
  • 出版社:東邦出版
  • 発売日: 2017-06-01

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