自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんによる連載コラムです。
自然栽培稲作1~2年目の残肥はいらない
自然栽培の畑でも田んぼでも1年目というものがあり、このときは前年の残った肥料(残肥)というものを引きずります。
前年の畑が有機栽培なり慣行栽培なり肥料をやっていた状態から受け継ぐことになります。
耕作放棄地でも土ができすぎていて畑や田んぼレベルを超えているのでこちらも自然栽培がやりづらいときもあります。
前年の残肥が残っていたとしても肥料をやって作るよりは断トツ自然栽培の要素を持った農産物になりますのでご安心ください。
品質ではさほど問題を感じさせませんが、生産者としてはそのささいな違いが大きく感じられると思います。
田んぼで残肥がなくなったなと感じるのは3年目です。
3年目以降はそれほど差を感じなくなります。
1~2年目は残肥の影響で収量が上がりやすくなります。
生産者としては収量が上がることはうれしいことですが、この期間は自然栽培の戦略がうまく使えません。
一つは雑草に余計な養分を与えてしまうということです。
余計な養分がない状態での田んぼでは稲を苗の段階で植えて他の雑草が種から始まるより有利な立場にして栽培を進めます。
(20~25日の育苗期間を終えて田植えに突入)
これが田植えです。
(植えた後まだ雑草の発芽が見られない)
イメージは雑草赤ちゃんVS稲幼児です。
養分が少なければ稲はもともと養分を吸収する力が強いので赤ちゃん雑草に奪われるほど弱くはないです。
(田植機を改造して作った除草機)
そして除草機が更に稲を有利にしてくれるので最終的には稲は小学生くらいで戦えます。
ここまで差をつければ少ない養分を奪い合う状態なら稲が断トツ優位に田んぼ内で活躍できる戦略となります。
(2017.6.16 自然栽培9年目の田んぼの草はまだ大きくなれない)
雑草は満足に養分を取れないので大きくなれません。
しかし、ここに残肥があると
(2017.6.16 自然栽培2年目の田んぼではもう雑草が大きくなってきてる)
稲と雑草で分け合えてしまいます。
すると雑草の成長が稲より早いものがありますのでせっかく差をつけたのに
(2017.6.19 自然栽培2年目 雑草の成長スピードも早い)
追いつかれ、追い抜かれて、五分五分の勝負もしくは不利な勝負になりかねません。
残肥があっても品質はさほど問題なく自然栽培でいけるのは残肥は雑草にとられてそれほど稲にまわってこないからです。
残肥があって喜んでるうちはまだ自然栽培の本当のすごさに気づいていない証拠です。
自然栽培を始めて1~3年目くらいは肥料がほしくなるものです。ゼロになってからが本当の自然の理の中にはまれます。
(2017.6.16 自然栽培8年目の田んぼは雑草が生えてこない)
すると自然はよくできていて人もちゃんとその中で生きていけるようになっているんじゃないかと感心してしまいます。
ゼロになることを恐れて肥料をまくのですが、ゼロになると思ったらゼロじゃなくて新しい世界が待ってたという感じです。
水、光、熱、土、太陽、酸素、二酸化炭素、有機物、微生物、根、葉、枝、幹・・・
そのどれもが答えを持っていて追求すれば新しいやり方が見つかります。
ここ3年くらい田んぼでは「水」を追求してました。
すごくたくさんのことを学ばせていただき、上手に扱えば無肥料でも収量を反収1俵(60キロ)くらい上げれます。
今年からは「泥」をテーマに追求していきます。
これは更に自然栽培を確かなものにしそうな結果が出始めました。
肥料を入れない状態でどうやって収量を上げていくかを考えるとありとあらゆる自然現象に注目し、追求して活用していくしか手段がないです。
(2015.7.15 無肥料下で養分を圧倒的に有利に得ることができた稲)
でもそれが自然と調和した栽培へと繋がっていきます。
残肥があるとそれが邪魔してこういった自然現象が素直に出てこないのでなくなったときから調和した姿が見えてきます。
鳥が稲に群がらなくなったりイノシシの害が少なくなったりと自然の理にはまり始めると思わぬ副産物があります。
ゼロだと思って恐れた世界はけっこう素敵な世界のようです。
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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
ブログはこちらから⇒農業生産法人みどりの里ブログ
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。