自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんによる連載コラムです。
自然栽培田んぼの雑草コナギ編
無肥料無農薬の自然栽培は窒素という病害虫のエサとなる肥料をやらないことで病害虫の発生原因なくして病害虫を減らして無農薬栽培をやりやすくしていきます。
自然栽培田んぼの雑草に対してはどのような効果が見込めるでしょう。
自然栽培の無肥料作戦は稲作の病害虫には効果がすぐ出ましたが、雑草は全く関係なくどんどん発芽して成長していきました。
なので私はこのテーマに最初のうちは手でとることや機械除草のみで挑んでいました。
(しっかり雑草が根を張っているので固くて取りづらいです)
これは本当につらい作業で農作業で最もつらいのは田んぼの手除草で、特にコナギの手除草はつらいです。
1日中かけても4条を70~100mくらい進めるだけです。
1時間やって振り向いて自分のとったスペースの狭さに「えっ!まだこんだけしか進んでないの!?」と天を仰ぎます。
朝6時から夕方19時ころまで毎日毎日採りました。朝体が痛くて起きれない毎日です。
それでも1日でも休んだら草との戦いに負けてしまうとふんばりました。除草剤がなぜ生まれたのか身に染みてわかります。
そして、田んぼ面積が3haを超えたとき完全に手がまわらなくなり、雑草に負けて収穫不能田んぼが出るようになりました。
(コナギに負けた田んぼ ここまでくるとコンバインでの収穫はできません)
近所の評判も落ちました。
これではこの先続けていけないなともっと雑草についてよく知らなくてはならないと思いいろいろ調べたり観察しているといつもやられているコナギという草はどうも稲と性格が反対のようでした。
イメージで言えば稲は酸素が必要で、きれいな水ときれいな土をイメージしておくと作りやすくなります。
コナギは発芽に酸素が必要なく、有機物が分解するときのガスわきしているような場所で稲が根を張ることを嫌がる場所でも大丈夫突き詰めていくと泥に入ったわらの存在が稲の根張りを邪魔していました。
冬にわらを焼いておいて土の中に入らないようにして土がきれいな状態を保って田んぼに突入していくとガスがわくこともなく稲の根がすぐに伸びて張っていきます。
するともともと稲とコナギがまともに戦えば吸肥力の強いイネ科の稲が勝つので、コナギは大きくなれず稲の邪魔をしなくなっていきました。
(葉に少し黒い筋が見えるコナギ これは生育不良を起こしていて根が張れていません)
(簡単に抜けるが、悪い田んぼにするとこのころでも取れないくらいの根張りになる)
(まだ生育不良中で本領発揮できないコナギ)
(本気の稲の前ではお手上げ状態)
これでだいぶ除草が楽になり、収穫不能になることがなくなりました。
これでもともとコナギという雑草が悪いわけでなくそういう田んぼを作った私が悪いということが証明されました。
稲が好まない田んぼを作って生育不良を起こした隙をコナギにつけこまれただけで稲が好む田んぼを作ってあげればそれだけでコナギを防ぐ手となり手除草で取り除かなくてもすむようになっていきました。
(本当にうまくいくと手除草で取り除かなくても収穫時にこれくらい差をつけて勝っている状態になる)
ここに自然と向き合うときに善悪論では超えられない壁があることに気づきます。
病害虫も雑草も全て別に存在していても問題ないのです。
稲が喜ぶ環境を作ると同時に病害虫や雑草の好まない環境を作ればそれだけですむ話しなのです。
都合の悪い雑草の存在を否定してただ戦いを挑めばそれは途方もない労力を使うことになり、結局負けてしまいます。
こうした一つ一つの自然栽培の事例がいちいち私にどうやって進んでいけばいいかを教えてくれます。
(コナギ手除草をやめても大丈夫です)
自然栽培の無肥料無農薬は入口にすぎないです。
その先には未開拓な自然の理の世界があってそこに足を踏み入れ始めると無農薬はそれほど難しいものではなくなります。
無肥料にすることでしかその扉が開きませんのでご注意ください。
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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
ブログはこちらから⇒農業生産法人みどりの里ブログ
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。