自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんによる連載コラムです。
勉強会
2年前から毎月第4月曜日にみどりの里では無肥料無農薬をテーマに勉強会を開いています。
(写真をプロジェクターで見せて発表します )
3年前くらいに知り合った新規就農者たちと自然栽培のことをもっと情報交換できる場がほしいねと軽い気持ちで始めた勉強会でした。
イメージは「今月はどうだった?」と皆に聞ける感じがいいなと思ってました。
なんとか栽培を教えてくれる偉い先生をたてるのではなく、「こうやったらうまくいったよ」とか、「この手は全然うまくいかなかったよ」と話し合えるといいなと思ってました。
(参加者がときには先生でもあり、ときには生徒でもある形です)
畑で起きた良いことも悪いことも、ただただ純粋に見て、情報としてありのままを皆に伝えてます。
その情報を答えじゃなくてヒントとして、参加者は自分の分野に活かしていければいいと思っています。
正解なんて自然ともろに付き合っていかなくてはならない農業にはありません。
たくさんの手段を持ち、ころころと変わってしまう自然環境の中でも、野菜たちにとって一番いい環境に合わせていけるかが、成否をわけるポイントです。
この勉強会には自然栽培という名前はつけませんでした。テーマは無肥料無農薬ではあるのですが、ただの勉強会です。
名前をシンプルにしておくことで、制限をかけず参加者の幅を広くしておきたいなと思ってました。
(家庭菜園の方も情報発信します)
(変わった野菜を紹介して、種を配ってくれました セイロン瓜)
農薬使用している農家さんでも、もし無農薬にできるだけ近づけていきたいとか思っていれば参加OKです。
だってこうやったら農薬使用しなくてもすむようになったなんていう情報があったら非常にありがたいですからね。
でも、「ほらみろ!だから無農薬なんてできないんだ!」と言う人はお断りです。
それじゃあ発展しないもんね。
難しいからこそ皆で知恵を出し合って解決していきたいんですよ。
自然栽培のような無肥料の世界なんてまだまだ未開拓な部分が多くて、誰がヒントを持っているかわからない状態です。
家庭菜園の人が持ってるかもしれないし、まだ初めて間もない農家が見つけるかもしれないし、農業に関わっている職業の人が持っているかもしれません。
幸いなことに第1回を始めるときから名城大学の土壌学の礒井先生も参加し続けてくれてて、研究者の知っている資料や知識を農家に教えてくれます。
(第2回目の勉強会写真 礒井先生がネタを持ってきてくれた)
私たち生産者は、土の中のことはたぶんこういうことだろうと推測してカンでやっていることが多いです。
でも先生が研究分野の情報を紹介してくれることで、あいまいだった部分がはっきりしてきました。
(先生がいろいろ面白い資料を紹介してくれる 三枝正彦・木村眞人 土壌サイエンス入門 文永堂出版 2005)
これまで研究分野でわかったことが農家へ提供されることは少なかったです。
でも礒井先生が研究分野のことを農家さんへ提供して、農家さんが実際に経験していることを研究分野へ提供することは、お互いが発展するはずです。
礒井先生はそんな情熱をもって勉強会に参加し続けてくれます。
最初のころに「参加者が私と野中さんだけになっても勉強会を続けていきましょう」と言ってくれたことは非常に励みになって続けてこれています。
農業の厳しさの要因の1つに1年に1回しかお米も野菜も作るチャンスがこないことがあります。
失敗したらまた来年になってしまいます。
一つの結果を出すのに1年もかかってしまうので自然栽培をわかりきれる前に、寿命がつきるなと思いました。
自然界は想像してたよりずっと広く深いです。
たくさんの目で自然、畑、作物を見てたくさんの頭で考えていけば自分一人で見る世界より、もっと広く深い世界を見れるはずです。
そうやってたくさんの実際の情報を知ることで、知ってればやらなかったのにという無駄な1年にせず、皆の情報をもとに、より充実した1年へとしていきます。
勉強会は毎月開催なんです。
それは生産者のモチベーション維持の理由もあります。生産者が失敗してしまったとき畑に一人でいたら立ち直れなくなるくらいへこみます。
この勉強会を毎月開催することで気分転換していただきたいです。
環境は自然の気分次第なので、毎月畑では理不尽なことがいろいろ起きてます。そんな馬鹿なという天気やトラブルが襲ってくると、頑張ってもどうしても乗り切れないことがあります。
そんなときもこの勉強会で皆に会って、失敗したことも話してしまえば皆にとっては貴重な情報にもなるし、皆に話すと気が晴れるものです。
「次は台風対策にこんな手を使ってみるのでまた結果が出たらここで話します」
と失敗談の後に希望の話しができれば無農薬の世界の未来は明るいです。
(ナスなどの野菜の支柱の立て方をテーマにすることもある)
あと毎月顔を合わせているといいことがあって、皆だんだん仲良くなっていろんな交流が自然と生まれ始めます。
「マルシェに参加するときに品数を増やしたいから野菜を出してもらえる?」
とか
「ユンボで畑に溝を切りたいのでレンタルお願いできる?」
とか
「今度畑を見せていただいてもいい?」
とか
「苗が足りないんだけど、余ってない?」
とか
私は交流が深まると思いもしなかった連携が生まれ始めて、それがこれからの発展に欠かせない要素になると思います。
誰かが無理やり枠を作るより、自然に生まれてきたグループでうまくやっていければ長続きするだろうな思ってます。
一緒に共同出荷までやるようになるとグループの仲間が困ると自分も一緒に困るという現象が起きます。
そのとき仲間の痛みが自分の痛みにもなり、自然と助け合える関係を作っていけるはずです。
無農薬栽培をやって皆が幸せになっていかなければなりません。
そんなふうに展開していけばいいなと勝手に頭で思い描きながら勉強会を続けてます。
勉強会内容はみどりの里のブログに毎月書いてますので、気になる人はぜひ見てみてください。
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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
ブログはこちらから⇒農業生産法人みどりの里ブログ
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。