脳内物質オキシトシン研究の第一人者であり、脳や胃腸の分野で米国で最先端の研究を20年続けた「クリニック 徳」院長の高橋徳さんにお話を伺っています。
前回の記事はこちらから→ オキシトシンを出す日常の工夫や習慣【アロマセラピー、腹式呼吸など】
急性の病気には西洋医学はすごい力を持っていると思います。慢性病に関してはどうなのかなと。
例えば問題になっている高血圧、糖尿病、高コレステロール、動脈硬化などは通常の食生活、運動で予防できるのです。
ある80代のおばあさんで血圧の薬だけで5種類も飲んでいまして+認知症の薬などで合計10種類くらい。
なぜうちに来たかと言うと薬を毎日飲んでいるのだけど昼になったら体がすごく重くなって、しんどいんですと。
それで血圧はどのくらい?と聞くと元々飲む前が170くらいあって飲み始めて120~130。
普通は120~130は正常って言いますがそれはおかしいです、80代のおばあさんが20代の若い者と一緒なんて。
昔は年齢+90と言っていたんですから。それがどんどん下がってきて年寄りでも一律に130以上は高血圧になっていきました。
これは結局、製薬会社が一生懸命大学などに働きかけるからです。
ディオバンの事件も一つの大学で寄付金5000千万円です、もらった教授は医者相手の研究会で喋るわけです。
「これは良い薬ですよ、血圧はやっぱり130以下に下げないといけない」など言うわけです、そしたら開業医さん達は大学の偉い先生が言っているのでそうだなと思ってしまう。
さきほどのおばあさんに、それでは血圧の薬は5種類もいらないから2種類にしましょうと減らして、次の週に来た時に「先生、体が楽になりました」
血圧はどうですか?と聞いたら「高いんです、170もあるんです」
その次の週に来て「体は楽なんですが、血圧は高いんです」
もちろん高すぎるのも良くないですが、体が元気なのが大事なんです。
体の異常があって、検査したら確かにこれがその病気の原因でしたと言うのが本来の医療であって、検査がまず先にあって血圧を一律120~130にする、それで体がおかしくなっているのはおかしいです。
コレステロールもそうです、元気な人が病院に行ってコレステロールが高いと言われ薬をもらうようになり、下がってくるとお医者さんに「これは薬を飲んでいるから下がっている、やめたらまた上がります」と言われます。だから死ぬまで薬を飲まないといけない。
年をとって血圧が上がってきたら薬を飲む人が多いですが、私は薬を出す前に腹式呼吸の練習をさせたり、散歩を毎日させます。
糖尿病でも程度もありますが、いきなり薬は良くないですよ。とりあえず食べる物控えて体重落として運動すれば良くなっていくものです。
ーーーアメリカではそこらへんはどうなんですか?
少しずつ医者もわかってきてはいますね、大きな製薬会社は結局はグローバル企業なんです。
アメリカで売れなくなったコレステロール剤、ワクチン、抗うつ薬などが日本にきています。
薬の在庫処分を日本人がさせられているわけです。
抗うつ薬(SSRI)がでたのが10年前くらいです、その時アメリカでも「うつは心の風邪」だと言って、これを飲んだら良くなりますよと一気にその服用が広がりました。
そうこうしているうちにそれで副作用がでてきたわけです、ひどくなると自殺する人もでてきました。
大手の製薬会社が訴訟をいっぱい抱えているわけですが、オープンにするのは嫌なのでこそっとお金を支払い和解していたのです。
そして売れなくなった在庫が日本に流れてきたのです。
心療内科に行って少し気分が悪いと、「うつですね」と薬がでます。効かなくなればまた別の薬。
それで治るならいいですが余計おかしくなってしまう。
心の病に薬だけで対応するその発想をやめないといけない。
頭の中はそんな簡単じゃなくて、抗うつ薬(SSRI)なんてのはうつ病はセロトニンが低いから上げるという話なんですが。
うつ病はセロトニンだけが異常なのか?
頭の中でそれこそセロトニン、オキシトシン、ドーパミンなどいろんな神経が絡み合ってうつ病と言う病気になっていると思うのです。
それをセロトニンの単独犯行説にしたがる。
製薬会社
ーーーアメリカはやはり製薬会社が強いのですか?
残念ながらそうですね、例えば医者の世界で学会や研究会をやるのですが、ホテルを借りて何百人集めてやります。
すごいお金になります、その費用の多くを製薬会社が出しています。
学会をやると何百万円という製薬会社からのサポートがつき、そしてランチョンセミナーというのはお昼に,誰かが1時間の講義をします。その間にみんなにお弁当を配ります。
お弁当を食べながら講義を受けるこれがランチョンセミナー。
そしてそのお弁当を配る時に製薬会社がちゃんとスポンサーにつくわけです。お弁当には『00製薬』と書いているわけです。(笑)
ランチョンセミナー大人気ですよ、タダで昼飯が食べられますから。
そのスポンサーを探さないといけないから学会の運営事務は大変なんです、このランチョンセミナーをこの先生にやってもらいますが、その時に弁当を出してもらえませんかと。
製薬会社もお金だけだすと思いますか?
違いますよね、当たり前ですが下心はありますよ。医者の方もその下心を汲むわけです。
ーーー論文なども有名なランセットやネイチャーなどにでていたら信用できるというわけではないのですか?
そういうわけではないです、例えば論文書いて投稿するとだいたい2~3人レビュアーと言ってチェックする人がいます。
よくあるのが投稿する側とレビュアーがつるんでいるのです。お金ではなくてコネですね。
そういうコネがあると、このいい先生知っている(友達)から、この先生が読んでくれれば友達なので悪い風には批判(レビュー)しないです。
そして次はその関係が反対になったりします。貸し借りの関係です。
だから決してネイチャーにでたからと言って良い論文とは言えない。一説にはネイチャーに載った論文の半分は嘘であったとも言われています。
私もアメリカにいたときはそのようなコネはよく使いました。
統合医療
話は少しずれますが、最近週刊誌で「薬はだめだ!」と言って、現場の患者さんが困っています。
何を信じたらいいんだという感じです。お医者さんに行けば「飲みなさい!」と言われ週刊誌を見れば「飲むな!」ですから。
ある出版社がその交通整理をやりたいと言って、日本の医者100人にアンケートを出しました。
100人の医者がそれぞれ2ページ分くらい書き一冊の本にするみたいですが、私にもアンケートが来ました。
もちろん100人なので「西洋医学が良いですよー」という医者も多いと思います。
「薬とは一口に言ってあなたにとってはなんですか?」と聞かれましたので「西洋医学の薬は石油から作られた人工の物質で、長い歴史の中で人類が一切経験していない異物」
その解毒処理のために腎臓、肝臓,皮膚などが総動員されています。
漢方薬はどうかといえば「人類が長い歴史の中で自然界から取り出して、 人体実験を繰り返しながらその効能が生き残ってきたもの」と答えました。
もちろん漢方薬が万能ではなく、抗生物質は残すべきですし、どうしても血圧が高い人は薬の力を借りて下げるのは必要になってくると思います。
私のクリニックでは基本的には対話、視診、触診、鍼です。
『西洋医学』と『東洋医学』には長所もあれば短所もあります。それぞれの長所を取り入れ、お互いの短所を補い合うような医療、これを『統合医療』といいます。
『統合医療』は通常の『西洋医学』に『東洋医学』や『伝統医学』などの『補完代替医療』を加えることによって、病気の早期発見や予防、根治、健康維持の増進などを目指す新しいタイプの医療体系です。
このような統合医療が日本でも増えていけばと思っております。
【関連記事】
オキシトシンを出す日常の工夫や習慣【アロマセラピー、腹式呼吸など】
自律神経を整えてストレスをなくす幸せホルモン「オキシトシン」
五感に心地いい刺激を与えることで体の不調を改善【補完代替医療】
高橋徳(たかはし・とく)
ドクター徳プロフィール
1977年、神戸大学医学部卒業。関西の病院で消化器外科を専攻した後、88年米国にわたる。ミシガン大学助手、デューク大学教授を経て、2008年よりウィスコンシン医科大学教授。
米国時代の研究テーマ「ストレス」を研究していく過程で、オキシトシンと出合う。以降、10年以上にわたりオキシトシンの研究を行い、アメリカでオキシトシンに関する論文を発表。
帰国した後、国内のオキシトシン研究の第一人者として、日々研究を続ける。
13年には、郷里の岐阜県で統合医療クリニック「高橋医院」を開業。
16年、名古屋市に分院「クリニック徳」をオ—プン。
主な著書に、『自律神経を整えてストレスをなくす オキシトシン健康法』(アスコム)『人は愛することで健康になれる (愛のホルモン・オキシトシン)』(知道出版)、『あなたが選ぶ統合医療: 古今東西の叡智が命を守る』(知道出版)。
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。