日本人のDNAには米が息づいている

スーパーマーケット「福島屋」の六本木店では、〝おむすび〟が1日800個売れるという。

その理由は、安さではなく、おいしさにある。生産の現場を見続け、生産者とともに歩んできた「福島屋」グループの会長、福島徹さんに、日本のおいしい米、そして自然栽培の可能性を聞く。

取材・文/柏木智帆 写真/編集部

スーパーとして幅広い選択肢を提供する

都内に4店舗を展開するスーパーマーケット「福島屋」は、〝おいしさ〟と〝安心安全〟を打ち出した商品を販売することで知られる。

「ただ、うちは自然食品店や健康食品店ではありません。精製された白砂糖は少ないほうがいいというような考えで商品展開していますが、コーラも置いていますし、カップ麺も売っています」と話すのは、福島屋グループの会長、福島徹さんだ。

たとえば、青果コーナーには、慣行栽培から有機JAS、自然栽培の農産物も置かれている。

ただし、どの野菜にも、自社で計測した「硝酸態窒素(P81)」を表示するなど、食品に対する責任感やこだわりが並ではない。

もともと一般的なスーパーから徐々に変化し、現在のかたちになった。だからこそ、生活者目線で良いものを適正価格で販売するだけでなく、幅広い選択肢を提供しているのだ。

そこには基本となる信念がある。

全店舗で売り切れるおむすびさまざまな食品を扱うなかで、福島さんにとって米は特別だ。

「日本人のDNAには、日本でつくられる米が息づいています。私たちはさまざまな食材を販売していますが、あくまで和食が基本。

ごはん、味噌汁、おしんこ、梅干。それがあったうえで、スパゲティがあり、カレーがあり、ラーメンがあるのです」

福島屋のすべての店舗で人気を集めているのが、お惣菜売り場のおむすび。六本木店では、なんと1日800個を売り上げるときもある。

使っている米は、店内で販売している契約農家米で、だいたい1、2カ月ごとの頻度で切り替えている。

種類は、藻塩を使った「塩」、山漬けの「鮭」、無添加の「タラコ」などシンプル。具材にもこだわり、店内で一つひとつ手でむすぶおむすびは、飛ぶように売れていく。

2016年12月に東京・秋葉原にオープンする新店でも、惣菜売り場のメイン商品はおむすびだ。

良いものは必ず市民権を得る福島屋が取り引きしている30軒ほどの契約米農家のうち、自然栽培で米を生産している農家は、北は宮城県から南は高知県まで、7、8軒。

「つがるロマン」や「ササシグレ」など、10 品種ほどの自然栽培米を扱っている。

福島さんは自然栽培を、「作物が自然環境のなかで植物や微生物などの力によって育ち、その成長に応じて人がよりよい環境をつくる、本来あるべきすがたが素晴らしい」と、高く評価している。

また一方で、「自然栽培だから良い、という方向から入ると表層的になる」と話す。

福島さんの考えの根底にあるのは、「健康とは、物事の自然の秩序であり、自らの生命を賢く制御するうえでの必然の属性である」ということ。

つまり、農産物がつくられた環境や過程を理解することに加え、価格、調理の手間、食べる量や食べ方などさまざまな問題を自分の意思で解決することによって、おのずと「健康」になるという。

「健康」に置き換えて「美しさ」でもいいし、「おいしさ」でもいい。

自然栽培だからいいのではなく、「自然の秩序」のもとで生産されていることが重要なのだ。

「自然栽培がトレンドではなく文化として定着するまでには時間がかかるでしょう。でも、安いだけの農産物が求められるスタンスは変わってきている。良いものは必ず市民権を得ると思っています」

また、自然栽培の農産物がひろがるには価格面での課題があるという。

「慣行栽培や有機栽培に比べて自然栽培米が割高となっている現在の状況では、お客さまの生活を支えるという意味で無理が生じてしまいます」と福島さんは説明する。

急激な変化ではなく、現状に即しながら、生産者と二人三脚で徐々に農薬を減らしていく方向を目指しているのだ。

肥料と農薬を使わない自然栽培では収穫量が落ちるため、農家に自然栽培米をつくってもらうことは容易ではない。

宮城県にある福島屋の契約田んぼでも生産委託先の農家を説得しながら続けている。

それでも福島さんは、自然栽培に取り組む米農家たちと情報交換してきたなかで、「自然栽培でも、1反(10アール)あたり7俵は穫れる技術がある」と確信。

契約米農家たちに無理のない範囲で自然栽培を推奨している。

価値観ひとつで日常の食卓は豊かになる

福島屋に買い物に来る客の多くは、良い商品、大手スーパーでは手に入らない商品を求めているが、「うちは、お金持ちだけを相手に商売をしているわけではありません。

自分の生き方や食べ方を考えることで、お金をかけなくても毎日の暮らしのなかで豊かさを享受できると伝えたい」と、福島さんは言う。

自然栽培米が慣行栽培米よりも高いといっても、ごはん茶碗に盛ると、たった数円の違い。

「高い食材は買えない」といいながら、缶ジュースや菓子などは値段を気にせずに買ったりするのは、お金の問題ではなく、なににお金をかけるかという価値観の問題というわけだ。

客に対して「こうあるべき」と価値観を押しつけない一方で、福島屋が良いと思う商品を展開する。

「住み心地や着心地と同じように〝食べ心地〟も大事です」と福島さん。こうした姿勢が多くの客を惹きつけている。


自然栽培Vol.9より許可をいただき転載させていただいています。

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