草の繊維を分解してたんぱく質や脂肪を作り出している腸内細菌

難病である脊髄小脳変性症を発病するが、西式甲田療法を実践して克服され、1日に青汁1杯(+少量のサプリ)で元気に過ごし森鍼灸院院長、断食道場「あわあわ」をやられている森 美智代さんにお話を伺っています。

前回の記事はこちらから⇒生菜食や少食の人は尿素も再利用できる


「人間離れした牛のような腸」

「腸内細歯の研究を始めて30年。こんなサンプルを見たのは初めてです」

これは、私の腸内細菌について調べてくださった理化学研究所・微生物系統保存施設室長の辨野義己先生の言葉です。

私の腸内細菌は、人間としてはかなり特殊らしいのです。「人間としては」とはどういう意味かというと、草食動物に近い細菌構成になっているというのです。

辨野先生によると、「森さんの腸の中は日本人離れ、いや人間離れしている。まるで牛のおなかのよう」だそうです。

私たちの腸には、100兆個ともいわれる莫大な数の腸内細菌がすんでいます。

その種類は、解明されているだけでも500種以上といわれ、それぞれの細菌は、いつも腸の中で「勢力争い」をしています。

ちなみに、便の半分はこの細菌たちの死骸といわれていますから、便を調べれば、その人の腸内細菌の種類や、バランスがわかります。

この腸内細菌のバランスは、もともとの個人差に加え、食事や環境によっても違ってきます。

そうはいっても、人間の腸にいる細菌の種類やバランスは、おおよそ一定の範囲内にあり、普通は、その範囲を超えて極端に細菌構成が違うことはないようです。

ところが、私の腸には、通常は人間にはほとんどいない細菌がたくさんいたり、ある種の働きをする菌類が普通の人の何倍もいたりして種類とバランスが特殊だったのです。

その代表として辨野先生があげたのが、「クロストリジウム」という菌です。これは、植物の繊維を分解して、たんぱく質の材料であるアミノ酸を作り出す菌だそうです。

一般に人間の腸には、0.1%くらいしかいないはずのこの菌が、私の腸には100倍近い9.8%もいました。

植物の繊維を分解できる菌には、ほかにも「ユーバクテリウム」などいくつかの種類があります。

それらを合わせると、普通の人の腸には30%くらいいるそうですが、私の場合は約60%でした。

これは、どういうことを意味するのでしょうか。

葉菜や海藻などに多い繊維、いわゆる食物繊維(ダイエタリーファイバー)とは、一般に人間のもつ消化酵素では消化できない成分の総称です。

寒天やコンニャク、ワカメ、葉菜類などが、ダイエット向きの食品だといわれるのも、食物繊維が豊富だからです。

食物繊維が腸で消化されず、その分エネルギーにならないので、食べ過ぎて肥満に悩む人にとっては「ヘルシーフード」になるわけです。

逆に、野菜だけ食べていてもじゅうぶんな栄養がとれませんから、そういう極端な偏食や過度なダイエットは「体に悪いよ」という話になります。

しかし、牛は草だけを食べているのに、あれだけの大きな体を作り、メスならたんぱく質や脂肪の豊富な牛乳までたっぷり作ります。

それは、草の繊維を分解して、体や牛乳の材料になるたんぱく質や脂肪を作り出しているからなのです。

そのために働いているのが、牛の消化管(牛の場合は腸だけでなく、いわゆる反蜀をするための胃にも細菌がすんでいるそうです)にすむ細菌たちです。

そして、私の腸にも、そういった細菌が「人間離れして牛並み」に多く含まれているというわけです。

ですから、私にとっては、草(葉菜)やそれから作る青汁は、普通の人がいうダイエットに役立つヘルシーフードではなく、しっかり栄養源になるらしいのです。

なんだかありがたいような、ちょっとありがたくないようなお話ですが……。

捨てるはずのものをとことん利用する細菌クロストリジウムやユーバクテリウムなど、「繊維を分解してたんぱく質を作る細菌たち」の働き方を、もう少しくわしくいうと、植物の繊維を分解してエサにしながら、腸内にある「アンモニア」からアミノ酸を作り出すのだそうです。

アンモニアは、体内でたんぱく質が使われたあとに出る代謝産物(代謝とは体内での物質の合成と分解のこと)、つまり「カス」です。

アンモニアのままでは有害なので、体内では、アンモニアを安全な「尿素」に変えて蓄えます。その多くは尿として、排泄されます。

一部は腸からしかし、実は使ったあとの「カス」とはいえ、アンモニアの中には、たんばく質の材料になる窒素がかなり含まれています。

クロストリジウムやユーバクテリウムなどは、この窒素を利用してアミノ酸を作り出す「アンモニア利用細菌」なのだそうです。

つまり、これらの細菌は、捨てるはずのものをとことん利用するリサイクル細菌たちだったのです。

この細菌たちのおかげで、私の腸では、普通は消化できない繊維を消化したうえ、普通は捨てるアンモニアからたんばく質の材料を作っているらしいのです。二重の驚きです。

こういう機能が、もともと自分の体に備わっていたのか、断食や生菜食を行う中で備わったのかはわかりません。

しかし、初期の長期断食や生菜食で体重のへりが大きく、回復にも時間がかかったことを考えると、体を慣らしながらそういった食生活を続ける中で、体が適応していったと考えるのが自然でしょう。

先ほど「人間離れ」といいましたが、「実は人間の中にも、一部、これに近い細菌構成の人たちがいる」と、辨野先生は話してくださいました。

それは、パプアニューギニアの人たちです。

パプアニューギニアの高地に住む人たちは、イモ類など、ほとんど植物性食品しか食べないのに、体格がよくて元気なのだそうですが、彼らの腸にも「アンモニア利用細菌」が多いとのことです。

これもまた、長い年月をかけて、その地の食生活に体が適応した結果なのでしょう。

日本でも、私だけでなく、超少食をしている甲田先生の患者さんたちの腸を調べたら、きっと同じような結果が出ると思われます。


こちらの記事は「食べること、やめました」―1日青汁1杯だけで元気に13年 (森 美智代(著)マキノ出版)より、著者の許可のもとより転載しています。

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森美智代

鍼灸師。大阪府八尾市にある森鍼灸院院長。

短大卒業後、養護教諭として勤務中に難病である脊髄小脳変性症を発病するが、西式甲田療法を5年間実践して克服。

その後、鍼灸師の免許を取得し、森鍼灸院を開業。

1日に150ccの青汁と少量のサプリメントをとるだけの生活を20年近く続けている。

森鍼灸院のサイトはこちらから⇒ 森鍼灸院

2015年、三重県名張市に「断食道場あわあわ」を開業(所在地:三重県名張市瀬古口231)。

主な著書に「断食の教科書 (veggy Books)」「「食べること、やめました」―1日青汁1杯だけで元気に13年」「「おうち断食」で病気は治る (週1回で奇跡が起こる)」などがある。

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