自家採種するうえで気をつけること

1986年の創業以来自然栽培を普及し、医者にもクスリにも頼らない自立した生き方を提唱してきたナチュラル・ハーモニーの代表・河名秀郎さんにお話を伺っています。

前回の記事はこちらから⇒有機栽培=無農薬とは限らないことを前提として捉える必要がある


ホームセンターなど一般に売られている種は、あらかじめ薬剤処理がされています。

その多くはエメラルドグリーンやコバルトブルー、ショッキングピンクなどの色付けがされ、処理されているか否かが一目でわかります。

これは野菜や穀類の初期生育において危害を加える病虫害に薬剤処理することで発芽率を上げるためです。

実際、そのように処理しないと虫やウイルスに侵されて、農業そのものが成り立たなくなるというのが実情のようです。

なぜ種までも農薬に頼らなくてはならないのでしょう?

それについて自然栽培では、種の肥毒(肥料、農薬成分など自然界に存在しない異物の総称、第4弾に記載)について言及しています。

土の「肥毒層」とは人間に当てはめると「肩こりなどのこりや冷え」に当たる

種も肥料、農薬を施された植物の結果なので、土と同様、種にも肥毒が蓄積してしまう。これを種毒と呼んでいます。

自然栽培では、農産物が虫やウイルスに侵されるのはその肥毒に原因があると説いていますが、種も同様で肥毒があれば当然そこの虫やウイルスが集まり、浄化作用として働く。

要は肥毒の掃除をしにくるんですね。

———種の消毒をなくすことはできるのですか?

自然栽培のマニュアルでは、その種毒を抜いていく方法が示されています。

それは、肥料、農薬が施されていない圃場で採取した種子を毎年繰り返し連作することによって当初の有肥の種子を無肥化するというものです。

自然栽培による自家採種ですね。

その無肥化する年数は条件によってまちまちですが、取り組んでいる生産者のお話を伺うと虫やウイルスに侵されることなく、生育も順調になるまでに少なくとも8年から10年くらいの時間は必要だと話されます。

ただ、その間は不安定で生産性が落ち込むこともあるので、品目によっては専用の採種場を別に設け、そこで無肥化・固定してから実際に生産に臨むというスタイルをとっている生産者もいらっしゃいます。

その場合は無肥化・固定するまでは一般の種子を使用してしのいでいます。

———その際、種の種毒の影響は出ないんですか?

種毒の影響は部分的ではないかと考えられています。

生産者に以前聞いたことがあるのですが、肥毒が解消された畑に、例えば市販のキャベツの種を蒔いた際、外葉が虫食いにあったそうですが、その後は順調に生育し立派なキャベツができたそうです。

生産者曰く、外葉の虫食いのタイミングで種毒が解消されているんではないかと話されていました。

自家採種は、自然栽培を取り組む上で重要なファクターであり、すべての品目を取り組むにこしたことはありません。

しかし、そのプロセスはそう簡単ではないことも事実です。

私は、まずできる範囲で取り組みつつ、一般の種子とも並用しながら経営バランスを損なわないように進むべき課題ではないかと思っています。

自家採種

———自家採種するうえで気をつけることはありますか?

基本的には、その地域で自然交配によって育種されてきた種(在来種)が望ましいと言います。

しかし、種の世界ではほとんどがF1種(一代交配種)に支配されているので、特別なルートで手に入れるしかないようです。

振り返りますと、1950年代までは、種といえばこの在来種が一般的でした。

しかし、育種技術が進む中、現在では自然では受粉しえない系統の品種同士を人為的に交配させて新たな品種を生み出すF1技術が主流となっています。

その技術は、種の交配によって「寒さに強い、病気に強い、甘みが強い、収穫量が多い、日持ちがいい」などの得たい特性を強化することができます。

しかし、一方で在来種のようにその形質が親から子に受け継がれることはできず、F1種から生産者が種子を採り、翌年畑に植えたとしても、親と同じような形質を保つことはできません。

保つどころか、形質もバラバラになったり、弱い野菜が混じることになったり、販売できるレベルには程遠いものになってしまう。

それゆえに自家採種には向かないと言われています。

私の知る中で、F1種を自家採種で繋げている方もいらっしゃいますが、かなりのリスクが伴うそうなので、あまりお勧めはできません。

まあ、どんな種子からスタートしたとしても、種毒が消え、生産者の思いによって選抜された種子はやがてその地に固定され、その人ならではの品種特性を奏でることになります。

特に毎年、高額のF1種の種子を購入しなければならない枠組みから解放され、依存型から自立型の農業に転換できるチャンスでもあります。

そして何より、その人、その地域ならではのオリジナルの農産物が産まれ、ブランドになるかもしれません。

そんなオリジナリティあふれる野菜が方々で見れるようになったら、食文化も豊かになるんじゃないかと、胸がワクワクします。

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kawana

河名秀郎(かわな・ひでお)

1958年東京生まれ。國學院大學卒業。

千葉県の自然栽培農家での研修を経て、ナチュラル・ハーモニーを設立し、自然栽培野菜の移動販売をはじめる。

業務用卸売り事業、自然食品店、自然食レストランなどの衣食住全般を統合した「ナチュラル&ハーモニック」を展開、また自然栽培に特化した個人宅配も展開している。

生産者に対しても自然栽培の普及を目的に設立した「自然栽培全国普及会」を運営し、日本各地、韓国にも赴き、各種セミナーを開催している。

自然栽培全国普及会HP http://www.jnhfa.com

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2017年4月〜9月 6回連続セミナー 新宿・中目黒・千葉

詳細はHPにて: http://www.naturalharmony.co.jp/school/booknow.html

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主な著書に「ほんとの野菜は緑が薄い (日経プレミアシリーズ)」「自然の野菜は腐らない (カルチャー・スタディーズ)」「野菜の裏側 ―本当に安全でおいしい野菜の選び方」などがある。

HPはこちらから⇒ オフィシャルサイト「ナチュラル・ハーモニー」

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