【今日から雑草を見る目が変わる「草っておいしいんです」】
取材・文/やなぎさわまどか
写真提供/前田純(※一部編集部撮影)
出典/季刊書籍『自然栽培』
雑草という名の草は存在しない。
実は、すべて名前のある「葉物野菜」だ。
長いあいだ雑草を研究し、現在は”雑草農家”でもある前田純さんに草をおいしく活かす方法を教えてもらった。
古来から続くスーパーフード
雑草の起源は氷河期だという。地球が氷に包まれていた時代から「おそらくさほど変わらない形でいまに続いているものもあるだろう」と話すのは、〝雑草農家〟として5年目を迎える前田純さん。
京都大学農学研究科で雑草を研究していた豊富な知識を背景に、雑草を育てる目的で「日照時間が長い」という理由だけで単身、愛知県岩倉市に移住した。
耕作放棄地や休耕田などを活かし、年間を通して雑草を自然栽培している。
前田さんが惹きつけられてならない草の魅力とは一体なんなのだろうか。
「草はずっと人間のそばにあって、人は、まだ野菜という概念がない時代から草を食べていました」誰の土地でもない道に生えているのだから、草は誰にでも平等に手に入る。
また、どの草を食べると体にどんな効果があるかという効能にも人は助けられてきた。
たとえば道端に咲くセイヨウタンポポは、葉物野菜と比べてもとても栄養価が高い。
※↑長命草
長命草(ちょうめいそう)は、「一株食べれば寿命が1日延びる」と言い伝えられてきたが、実際に42種類もの栄養成分が確認された。
さらに、関東以西に生息するハーブのツボクサは、アーユルヴェーダの中で若返りの植物と記
録されているだけあって、脳細胞の活性化に効果的であることが証明されている。
栄養豊富で健康効果の高い植物は近年「スーパーフード」と呼ばれることがあるが、前田さんの話を聞いていると、私たちの足もとはスーパーフードであふれていると思わされる。
「人間がこんなに一生懸命研究を繰り返して、体にいい野菜やおいしい野菜をつくろうとしているのに、実はずっと私たちの身近に生えてたんです。それも、誰かがタネを蒔いたのではなく勝手に生えてる。これってすごいですよね」
名前や文化が消えてしまわないように
平安時代につくられた日本現存最古の薬物辞典『本草和名(ほんぞうわみょう)』では、ハコベが記載されており、かつては歯磨き粉としても利用されていたのがわかる。
また、人々が草をただ食べるだけでなく、お茶、薬、生活用具など暮らしの一部として活用していたことも記録に残されていた。
残念ながら気候や農業のあり方、生活様式の変化によって、それらの情報が伝わり続けること
も減り、いつの間にか草の名前よりも「雑草」という総称に変わってしまった。
名前が消えることで草そのものの食文化も薄れてしまう現状を「もったいない」と感じた前田さんは、自ら草のおもしろさを伝える活動もしている。
草の話を聞きながら五感で楽しむ雑草のワークショップは、参加者のほとんどが「草がおいしかった」「草を見る目が変わった」という声を寄せるそうだ。
そこで、もともと自炊していた「雑草料理」も、専門家と協働しはじめた。
「食べるという直接的な経験をすると、草のことが身近になります」
かつて人の暮らしの一部だった雑草との関係性を、いまもう一度取り戻したいと感じる人が増えているのか、前田さんのワークショップは満員が続いている。
雑草は適地適作の極み
前田さんは、ワークショップの参加者に、味や香りが気に入ったら自宅の庭やプランターで育てることを勧めている。
万が一、栽培環境と合わなければその草は静かに消えていくだけだし、逆に消えなければずっと栽培可能ということだ。
雑草のタネは軽いものが多いので、どこからか飛んできて、いつの間にか増えていくことも十分にありうる。
前田さん自身も、季節ごとの雑草を自家消費用としても栽培し、調理中にもっと香りがほしい、もしくは味のアクセントがほしい、などと思ったら庭に出て草を取るという。
こうしていま、「毎日なにかしらの草を食べて暮らしたかった」という長年の夢を叶えている。
身近な草を食べる
【草を食べるにあたってのポイント】
草のほとんどが、おひたしや炒めものとしておいしく食べられる。
また、多くが全草食用できるホールフーズであるからこそ、採取にあたり農薬、排気ガス、放射能汚染といった危険性がないことも確かめてほしい。
管理者の人物像がわかる耕作放棄地、田畑、空き地などで安全性の高い草を摘もう。
栄養価の高い草が多いため、食べ過ぎないことも大事。
前田さんと料理家たちが考案した雑草料理レシピを参考に、身近な食材を試してみよう。
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自然栽培 vol.18 その役割が、半端じゃない。土に「雑草」、体に「雑穀」
自然栽培Vol.18より許可をいただき一部転載させていただいています。
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。