自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんにお話を伺っています。
勉強会で出会えた仲間たちと
とにかく自然栽培野菜をたくさんの人に届けたいんだという夢はもう一人では叶わないことだとわかってます。
勉強会に来てくれた人、農福連携仲間、いろんな縁で繋がった人、皆でやらないと叶わないです。
ここで第43回の勉強会のときに、皆にいくらで野菜を買って、いくらで販売していくかの価格のリストを公開して、これで出荷してくれる仲間を募りました。
(農福仲間のストレートアライブさんの販売プレゼン)
これには皆取引をしようかと前向きに考えてくれました。
無農薬野菜の差別化と価値の見直し
この価格は他の野菜が安くなろうと高くなろうと変えない予定です。
無農薬野菜の差別化と価値の見直しを自然栽培でもう一度試みます。
自然栽培野菜は肥料を使っていないので味で勝負できます。
なので少し高いくらいの値段ならお客さんも満足してくれています。
(自然栽培タマネギと自然栽培切干大根も大人気)
具体的には市場価格の高値がずっと維持できればいけると思ってます。
お客さんはスーパーで見たことある値段なので、高すぎない値段だと思って購入し続けれるはずです。
普通は農家は高値で取引されるときなんてほとんどなくて、市場での供給量がすぐ多くなり価格は下がってしまうので、ものすごく高い値で野菜が少し売れるより普通に取引される高値あたりが維持できれば、そのほうが経営しやすいはずです。
値段が変わらなければ無農薬農家もギャンブルな部分がなくなり、安心して無農薬栽培を続けることができ、お客さんも価格で安いほうを選ぶのではなく、もう価格が決まっていれば他と比べる必要もなくなります。
安すぎる無農薬野菜があるとすれば、誰かが泣いてるか、誰かがズルしたかだけです。
販売の仕組みが無農薬の世界も整えば、小さなマーケットで椅子取りゲームはもうしなくてもいいはずです。
勉強会にわざわざ来てくれる人たちとは、力を合わせて発展させていける仲間でありたいです。
販売窓口から仲卸へ
無農薬野菜がほしい人はいっぱいいるのに、生産者とうまく繋がっておらず、すれ違っている状態をよく目にします。
販売窓口をお願いした障害者福祉のストレートアライブさんには、自然栽培グループ「とものわ」を作っていただき、みどりの里の販売窓口から仲卸へと発展しました。
(自然栽培ニンニクの芽)
これで自然栽培生産仲間を増やして、皆で喜び合える環境を作っていきます。
実際この「とものわ」へ自然栽培野菜を一度集めることで、それぞれの生産者の生産物がちゃんとほしい人のところへほしいだけの量を届けることができ、他の生産者と価格競争をせずにすみます。
大口の販売者との約束を守るために、一緒に生産してその量を確保しようとした場合、相手の生産者が困ったときに自然と手が貸せるはずです。
相手がこけると自分も販売の約束が守れなくなるからです。
これがそれぞれで販売していると相手がこけると笑顔になります。
ライバルだからです。
これではあまりいい未来がやってこないなと思います。
仲卸というのはそんな社会的な大事な役割を持っていることに気づけました。
自然栽培と農福連携
私は自然栽培にもう一つカラーを入れて販売していきます。
それは一緒に作って販売している障害者さんの色を入れていきます。
(障害者さんがいたから自然栽培を発展させれました)
彼らの協力があったからここまで来れました。
みどりの里が頑張って自然栽培を続けて生産し続けられるのも障害者さんの手がなかったらありえなかったです。
障害者さんたちはお金がほしいのではなく、まず必要とされる場所がほしいです。
そして活躍し始めたら工賃として結果がつく仕組みにしていけば大丈夫です。
その仕組みは野菜での報酬など様々な方法でやっています。
農福連携をお金だけの関係にしてはいけないです。
そもそも障害者さんはお金の価値で測れない存在です。
農福連携で障害者さんに工賃をたくさん払っても、彼らは救われないです。
それよりも彼らと一緒に生きていける場所を作ることのほうが大事です。
農福連携で作った自然栽培グループ「とものわ」が、自然栽培野菜をお客さんが手にとりやすい価格帯にできているのも障害者さんの頑張りがあって実現できているだけです。
(ミニトマト誘引用のひもを切って作ってくれてます)
生活介護レベルとなると、そもそも働かなくても国がちゃんと守ってくれてます。
だからといって彼らから人の役に立てる働く場を奪っていいのでしょうか?
散歩やどうでもいいことをやらせていれば、人に感謝されることもないので彼らの心は荒れていきます。
実際その実情に困って福祉は農福連携を取り入れています。
無農薬栽培なんて困り果てている産業です。
健常者のみではどうしようもなくなっているこの場所に、彼らが入ることで同時に国の力も入ることになります。
そうすることで今までなかなか叶わなかった無農薬野菜の量産に踏み切れます。
(難しかった自然栽培ミニトマトも今年はたくさん採れそうです)
障害者さんたちは自分が活躍できていることを自覚できる人もいます。
そうすると自信もつき始めて障害が軽くなってきます。
心もずいぶん落ち着いて、皆自然栽培農作業が大好きです。
こんなことも一つ、彼らへの報酬になるのです。
このままどんどん皆に成長していってもらいたいと思う自分も生まれました。
私も一人でやっていた殺風景な圃場より、障害者の皆が来てくれて賑やかにしてくれるほうが
断然幸せを感じます。
(イチゴの管理も収穫もパッキングも皆でやると楽しい作業です)
「私たちは自然栽培野菜を通して、障害者さんも含めて皆が幸せになれる社会を作っていくことを約束します。」
この思いをグループ理念となり、自然栽培仲間と共有して、自然栽培野菜を通してお客さんとも思いを共有していきたいです。
皆で頑張ればありえない話しではないでしょう。
もう愛知県では多くの福祉施設が自然栽培に挑戦し始めて互いに協力しあって、他の農家と農福連携を進めるところも出てきています。
(福祉施設のスタッフ向けの自然栽培塾)
昨年は販売を頑張ったので、今年は生産者の仲間集めをしていきます。
福祉施設も含めた仲間です。
農福連携と自然栽培を両輪に更に発展させて無農薬産業に貢献していきますので応援していただけたらうれしい限りです。
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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。