自然栽培の美味しくて安全なイチゴを安定供給する自然栽培農家・野中慎吾さんにお話を伺っています。
農家と福祉が協力してやっていく共同体構想
生産の協力関係の先の販売の協力関係の重要性を考え、障害者さんと一緒に農業をやる農福連携を進めています。
昨年1年はメインの出荷先のスーパーやまのぶに出荷量を減らすことを飲んでもらい、やまのぶ外の販路を増やすことを頑張りました。
野菜を出荷するときに絶対避けねばならないことが、生産者の出荷量(供給)が販売先のほしい量(需要)を超えてしまうことです。
これが野菜の値段を恐ろしいほど下げます。
お客さんにとってはありがたいことですが、簡単に生産者は原価割れになってしまって特に無農薬で頑張っている人は大ダメージを受けてしまいます。
販売先がほしい量を超えた野菜を販売者は売り切るために値下げに踏み切らねばならなくなります。
販売者がほしい量だけを渡せるようになれば値段は下がらずにすみます。
ほしい量を大幅に超える場合は相手先である販売者は大迷惑になります。
これは本当に大事なことです。
どれだけ無農薬で奇跡のようなことを起こしても、需要と供給のバランスが崩れたら価値はなくなります。
価値を失わなかった自然栽培エンドウ豆
昨年は障害者福祉の皆は開拓に明け暮れた1年でした。
ニンジンクラブさんやアイチョイスさん、わくわく広場さんなど障害者福祉の皆が頑張って新しい販路を築いてくれました。
これでやっと出荷調整をこちらでやれるようになりました。
相手のほしい量をほしい量だけ出荷する体制です。
おかげで今年5月にはやまのぶで自然栽培コーナーを作ることができ、第一関門だった自然栽培エンドウ豆を自然栽培の価値を落とさないで販売しきることができました。
(自然栽培スナックエンドウ)
これは高く売れたことを喜んでいるのではなく、エンドウ豆がたくさん出ているときに原価割れせず出すことができたということです。
具体的にはエンドウ豆1袋210円で販売していました。
私は130円で福祉に渡して、福祉側は収穫袋詰め出荷と売り場管理までして1袋50円ほど取り、販売先が税抜き210円で販売していました。
これは誰もそんなに儲かってないですが、生産量がたくさんあればなんとかなります。
でもエンドウ豆がものすごく周りで採れている時期、他の人の無農薬栽培のエンドウ豆が1袋100円で販売されていました。
これは農家は1袋70円くらいで販売したことになります。
1袋が100円切ったら無農薬の場合はもうやめたほうがいいです。
がっかりする結果になるだけです。
これを防がないとどれだけ価値のあることをしても、価値はつきません。
減農薬との無農薬をしっかり分けたほうがいい
無農薬の野菜は有機栽培の時点で減農薬栽培と混ぜられて販売されてしまい、減農薬栽培の値段をベースに無農薬栽培の価値が決められてしまった傾向があります。
無農薬栽培なのに1袋98円のピーマンなどを見かけます。
これは販売者が無農薬野菜を売ろうとしたけど、無農薬野菜が農閑期などに手に入らず、ないよりはましだからと減農薬栽培の野菜を取扱い、減農薬と無農薬野菜を一緒に並べてしまったところに誤りがあります。
当然減農薬は農薬を使用しているので、市場規格に合う販売しやすい形の野菜が安価に手に入ります。
(他と混ざらないように自然栽培コーナーとして区切ることで価値を維持できる)
生産現場からすれば無農薬か減農薬かで労力が雲泥の差があります。
例えば田んぼで除草剤を1回使うか、無農薬で草対策するかの差です。
ここを理解してあげないと、日本で無農薬の良質な野菜を手に入れることはできない未来を迎えることになるでしょう。
現に今まで無農薬で生産していてくれた生産者が高齢でいなくなり、60代50代40代が農業に希望を持てなかったので就農が少なくて後継者のいない状態の空白ができてしまい、新規就農の補助金が出るからと30代がやっと新規就農で入ってくる状態です。
販売者は生産者がいなくなると商売が成り立たなくなるので、必死で探しています。
若い人は無農薬で栽培したい人も多く、みどりの里で毎月開催している自然栽培を中心にした勉強会にもそういった人たちが集まります。
(勉強会でのプレゼンの様子)
彼らが生産で苦労しすぎて消えてしまわないように、なるべくみどりの里の自然栽培情報を提供しています。
参加者からも栽培情報を聞けるので私にとってもいい情報交換の場です。
しかし、ここでまた同じことをしてはいけないです。
販売まで一緒にやって喜びあえる環境を作っておかないと最後まで仲間でいられなくなってしまいます。
本当の減農薬
しかし、農業は簡単ではないです。
無農薬栽培なんてなおさら難しくて、1年2年ではとうてい確立できないです。
今は気候も激しくなってきているので、なかなか合わせにくいなと感じています。
そうなるとなんの後ろ盾もない新規就農者は、無農薬ではどうしようもなくなることもあると思います。
これはまだ起きていないですが、仲間が農薬をつかわざるおえなくなった時、それを正直に申告してくれれば、農薬を使用したことをちゃんと書いて販売すれば、彼は次の無農薬挑戦権を得ることができるかもしれません。
減農薬に踏み切らなければならなくなるほど追い込まれた無農薬栽培の仲間を、「それは減農薬だから出せないよ」と切り捨てることは、これから作りたいものと違うなと思います。
減農薬栽培は認めてもらえるからとりあえずここで使っておこうと思うのと、無農薬で作りたかったけどどうしてもここで使わないと来年自分は無農薬栽培を続けられなくなるからと仕方なく今年は使って、来年こそは無農薬でやりきるぞというのでは、心がまるで違います。
だからこそ、ここを見てあげられる販売の仕組みを作りたいです。
減農薬といってもピンからきりまであるので、心を見ていただける自然栽培販売規格へと繋げていきたいです。
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農業生産法人「みどりの里」(愛知県豊田市)農場生産責任者 野中慎吾
障害者を農業の担い手として重視する「農福連携」にも力を入れている
ブログはこちらから⇒農業生産法人みどりの里ブログ
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。