医療・福祉の現場でも注目が集まる心のケア「ロボット・セラピー」

脳内物質オキシトシン研究の第一人者であり、脳や胃腸の分野で米国で最先端の研究を20年続けた「クリニック 徳」院長の高橋徳さんにお話を伺っています。

オキシトシンの分泌量【人間や動物の実験】

幼児期の体験は一過性ではなく生涯にわたって影響がある
脳内物質オキシトシン研究の第一人者であり、脳や胃腸の分野で米国で最先端の研究を20年続けた「クリニック 徳」院長の高橋徳さんにお話を伺ってい...

以前にもお話しましたが、人間や動物の事例では、親から引き離された子供は攻撃的、あるいは自閉症的な子が多いようです。

調べてみるとオキシトシンの分泌が悪くなり、バゾプレッシン(敵を攻撃する時にでるホルモン)というホルモンが分泌されやすくなっていました。

しかし親から引き離された子供でも可愛がられて育てば、オキシトシンは出るようになります。

特に重要なのは、愛情を持って触ってあげる事。皮膚感覚から生まれる感情は、ぬくもりのある感情が生まれやすいと言われています。

現代では一人暮らしのお年寄りは多くなってきています、触れること、触れられることそしてコミュニュケーションが少なくなってしまっています。

最近は、皮膚のタッチが効果的だという事で介護の現場で注目されています。

昔から介護の現場で声をかけたりするのはされていましたが、さらに背中をさすりながら声をかけてあげるという事が奨励されるようになってきています。

オキシトシンの生理作用から考えても、声をかけられることに加えて触れられる事により、相乗的にオキシトシンが放出されるようになります。

「アニマルセラピー」も動物をなでたり、タッチしたりすることで、メンタル面でいい事があるのはないかと以前から注目されていました。

しかし「アニマルセラピー」はいいのですが、問題は生き物だから世話が大変ですし、もちろん動物は死んでしまうこともあります。

心のケア「ロボット・セラピー」アザラシ型ロボットの「パロ」

近年、注目の集まっている動物型ロボットとの触れ合いによる心のケア「ロボット・セラピー」というものがあります。

私もちょっと拝借しているのですが、アザラシ型ロボットの「パロ」です。医療・福祉の現場でも注目が集まり臨床現場に広まりつつあります。

「パロ」は、産業技術総合研究所の柴田崇徳博士により1993 年から研究開発が開始され、2005 年から日本で販売され、2009年からは欧米でも販売されるようになっています。

これまでに、約5,000体以上が認知症、PTSD、ガン、発達障害、精神障害等のケアやセラピーで活用されたり、一般家庭やオフィスでのペットとしても活用されたりしています。

また、震災後の東日本や熊本の被災地支援でも、多くの人々に喜ばれています。近年は、ランダム化比較試験等により、「パロ」のセラピー効果の治験や臨床評価が各国で実施され効果のエビデンスが示されています。

特に、向精神薬の低減について定量的に示され、費用対効果も示され始めています。

これらの科学的なエビデンスの蓄積により、一部の国や地方自治体等では、公的医療福祉制度に「パロ」を組込み始めています。

この「パロ」は、音声認識機能や視覚も触覚も備わっています。話しかけたり、触ったりするとこちらを向いたり、鳴いたりしてくれます。

人工知能ですから可愛がれば可愛がるほど反応が増えていきます。例えば触らなくなったり、ほっといたりするといじけた子になってしまいます(笑)。

動物的な反応を示す「パロ」と触れあうことで、「アニマルセラピー」と同様の効果があるとされています。

デンマークでは、新たな高齢者ケアのツールとして積極的に「パロ」の導入を進めています。

アメリ力FDAより医療機器として認定を受けています。医療関係者がこれは「癒しのペット」として認めているのです。

日本では徐々に広がりつつありますが、まだまだというところもありますので、私は、今一緒に取り組んでいる「一般社団法人ハッピーネット」と『お年寄りに何時間か触ってもらったりしてオキシトシンが分泌される』、そんなエビデンスを作っていこうと考えています。

パロは、触れ合った人が「パロ」が感情を持つかのように主観的に解釈をして、愛着を形成し、癒されることだけのために作られた「アートとテクノロジーの融合した」ものです。

もし「パロ」と戯れることでオキシトシンが刺激されるというエビデンスが得られれば、将来は「アニマルセラピー」にとって変わるべく、「ロボットセラピー」という新しい治療法が発展していくかもしれません。これも夢のある話でしょう。

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高橋徳(たかはし・とく)
ドクター徳プロフィール

1977年、神戸大学医学部卒業。関西の病院で消化器外科を専攻した後、88年米国にわたる。ミシガン大学助手、デューク大学教授を経て、2008年よりウィスコンシン医科大学教授。

米国時代の研究テーマ「ストレス」を研究していく過程で、オキシトシンと出合う。以降、10年以上にわたりオキシトシンの研究を行い、アメリカでオキシトシンに関する論文を発表。

帰国した後、国内のオキシトシン研究の第一人者として、日々研究を続ける。

13年には、郷里の岐阜県で統合医療クリニック「高橋医院」を開業。

16年、名古屋市に分院「クリニック徳」をオ—プン。

→ 統合医療クリニック徳

主な著書に、『人のために祈ると超健康になる! (米国医科大教授の革命的理論)』(マキノ出版)『自律神経を整えてストレスをなくす オキシトシン健康法』(アスコム)『人は愛することで健康になれる (愛のホルモン・オキシトシン)』(知道出版)、『あなたが選ぶ統合医療: 古今東西の叡智が命を守る』(知道出版)。

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