看護師や療法家を含む医院・施設専属のクリニカルアロマケアチーム タッチケアサービスさんによる連載コラムです。
産後のアロマを楽しんでいただくために
ここ数年、精油を販売している店の中で、ディフューザーを使っている所も増え、香りはいつ、どこでも楽しめるようになりました。
日本では精油は雑貨として扱われているため、色々な製品を購入出来ます。
AEAJのHPによると、検定受験者は1999年~2017年度の累計で442.587人であり、受験動機の一番はアロマテラピーの知識を深めること、合格してよかったことは、生活にアロマを取り入れられるようになった、となっています。
精油の特性を知る
精油は1本に数十から数百個の成分が含まれるため、状況、体調によっては心身ともに香りを受けつけない場合もあります。妊娠中の精油の使用は細心の注意が必要です。
では産後はどうでしょうか。
通常、日本では精油を体に塗布する場合は3%を目安とします。
産後のお母さん自身に使用上の禁止事項はありませんが、赤ちゃんを抱っこしたり、母乳を与えたりするので、赤ちゃんへの影響を避けて、1%を目安に使用することが望ましいです。
また、芳香浴に関しても、赤ちゃんはあらゆる器官が未発達であると同時に、嗅覚を発達させる大切な時期でもあるので、塗布と同様に1%くらいを目安とするか、赤ちゃんから離れた場所で使用する方がよいでしょう。
台所、トイレなど、赤ちゃんが立ち入らない場所でのディフューザーや、ティッシュ、コットン、ハンカチなどに含ませて嗅いだり、カップにお湯を入れて1,2滴たらすのならば、赤ちゃんから離れた場所で楽しむことができます。
以前、1歳の赤ちゃんとの入浴に、ラベンダーの精油を、毎日お風呂のお湯に数滴入れて香りを楽しんでいる、と話されたお母さんがいました。
「でも最近、赤ちゃんに湿疹が出て気になってます。」とおっしゃるので、「精油をどうやって使ってますか。」とお聞きしたところ、「お店の人に、ラベンダーは原液でそのまま使えるから大丈夫です、と言われたので、そのままお湯の中に入れています。」との返答だったので、今日から精油を中止して様子を見ること、それでも変わらなければすぐに皮膚科へ行くこ
とをお勧めしました。
また、精油はお湯にそのままは溶け込まず、表面に浮いた精油が赤ちゃんの皮膚へ付着してしまうこと、お風呂に使うときは乳化することなどを説明しました。
精油の使用を中止したところ、赤ちゃんの湿疹は直に治まったそうです。
どの香りを好むかを大切に
精油は油溶性で水やお湯には溶けないので、お風呂に直接精油を入れると表面に浮き、皮膚に直接付着してしまうため、乳化が必要です。
市販のバスオイルもありますが、自宅にある塩、酒、コーヒーフレッシュ、はちみつなどにしっかり混ぜれば、好きな香りでアロマバスを楽しむことができます。
ただし念のため、赤ちゃんを入浴させた後、自分の入浴に使用した方がよいでしょう。
忙しい産後のお母さんはゆっくりお風呂を楽しむのも難しいと思いますが、家族に見てもらえる時、短時間でも好きな香りのお風呂でリフレッシュするのもおすすめです。
ほんの少し注意すれば、赤ちゃんとも安心して香りを楽しむことが出来ます。
赤ちゃんの小さな未発達な体にはおっぱいやミルクの期間があり、食べるものは少量の柔らかい物から徐々にスタートするように、アロマテラピーも少しずつ、大人と同じ容量にならないように気をつけてあげてください。
では、セラピストの方が産後のお母さんへアプローチする場合は、何に気をつければよいでしょうか。
セラピストが産後のお母さんへアプローチする場合に気をつけること
産後の精油の使い方をどうしたらよいのかわからない、といった質問を受けることがあります。
また、アロマに詳しいお母さんから、むくみに効果のある精油を使ってください、と言われることもあります。
前述のように、産後の精油は赤ちゃんへの影響を避けるため、体に塗布するオイルに入れる精油の濃度は1%以下にし、香りを別に楽しんでいただいています。
私は現場では、精油の成分の効果ではなく、お母さん自身がどの香りを好むかを大切にしています。
選んだ好きな香りを吸い込むことで、帝王切開後、痛みで深く出来なかった呼吸が初めて出来て、ぐっすり眠れた、とおっしゃるお母さんもいます。
浅くなっていた呼吸も、精油の香りをゆっくり吸っていると次第に深くなり、痛みやショックにより続いていた緊張がほぐれていきます。
産後は、羊水や血液が一度に排出されるため、体が水分を取り込もうとすることが原因で、多くの方はむくみが出る他、出産による強い痛み、筋肉痛、寝不足など様々な要因から強い疲労感を伴っています。
また、ホルモンのバランスの崩れや慣れない授乳のスタートで、精神的にも辛い状態が続き、感情が不安定な方も多くいらっしゃいます。
そんな中で大切なことは、むくんだ状態や産後の状態について、どう感じているかを受けとめることです。
足が重いことが辛いのか、予想外のむくみや痛みにショックを受けているのか等、どう不安を感じているのか。
自分の不安や痛みが理解され、受け入れられていると感じるだけで、気持ちが落ち着き、副交感神経が優位になり、体も緩みます。
さらに、精油を使うことで、香りは感情を司る大脳辺縁系~視床下部へと届き、自立神経系、内分泌系、免疫系に作用し、体とこころの両方に働きかけます。
好きな香りとやさしいタッチで心地よい時間を過ごしていただけるように、お母さんの体の状態や気持ちを受け止めながら、寄り添えるセラピーを心掛けることが大切です。
タッチケアサービス 島田 浩子
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タッチケアサービス
看護師や療法家を含む医院・施設専属のクリニカルアロマケアチーム。出産直後の患者、延べ15.000件以上の症例等を保有。
西洋医学・東洋医学両視点からのケアを深めるための講座を開催。現場に則した内容の講義講座や勉強会を行う。
クリニカルセラピストを目指す方、セラピストとして学びを深めたい方、また各療法家、医療従事者すべての方が対象で理論だけにとどまらず実践的かつ専門的に学んでいる。
また、様々なかたちで生活に取り入れやすいホリスティックライフ実践のための提案・ケアを一般対象にも行っている。
【touch care services lesson】
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詳細・問い合わせはタッチケアサービスHPまで → http://www.touchcare-s.com
養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。