つらい目のかゆみや咳、喉などアレルギー性鼻炎・花粉症にはツボ療法【鼻・目・耳ツボのやり方】

あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師の資格を持ち、東京医療福祉専門学校に専任教員として勤務されている湯浅陽介さんによる連載コラムです。

アレルギー性鼻炎のツボ療法

4月に入り、新年度がスタートしました。

心機一転、張り切って仕事に、学業に打ち込みたいところです。

しかしこの時期、ここ数十年、いや半世紀以上、日本人を悩ませるものに花粉症があります。

主にはスギ花粉などのアレルギー性鼻炎を指しますが、目のかゆみや咳などの喉の症状やまれに下痢などの消化器症状もあります。

その花粉症、もともと1963年(昭和38年)に栃木県の日光で初のスギ花粉症患者が発見されたと言われています。

その後、患者数は増加の傾向にあると世間でも言われています。

厚生労働省が毎年行なっている国民生活基礎調査は6年毎に広範な統計がとられます。

その際には国民の持っている症状や通院の状況を調査します。

遡れる限りで平成22年と平成28年の統計をみることができます。

「花粉症」を含めた「アレルギー性鼻炎」の通院者率ではありますが、人口千人に対する数字を下表に示します。

9年前と3年前を比較して男女とも増加しています。

確かに統計を見る限り近年に関しては増加していると言えます。

そんなアレルギー性鼻炎がある方たちは、抗ヒスタミン薬などの薬剤や、甜茶エキスなどの民間療法的な対処をされていることでしょう。

中には「何もせずひたすら耐える。」という方も居るかもしれません。

各人、それぞれに対処があって良いですが、それに加えてもう1つ、鍼灸で用いられている「ツボ」による対処をご紹介したいと思います。

鍼灸で用いられている「ツボ」による対処を紹介

今回はアレルギー性鼻炎・花粉症ということで、鼻と目のツボをご紹介します。

それは下の写真で示した3点、「攅竹(さんちく)」、「迎香(げいこう」、「四白(しはく)」です。

そのうち鼻の症状には「四白」と「迎香」を用います。

「四白」の位置は、目の瞳孔から下に頬をさすって行って触れる骨の凹みです。

こちらを人差し指か中指でちょっと痛みが出る程度に圧迫します。

鼻炎が酷い時や副鼻腔炎がある時は圧迫時に強い痛みがあります。

「迎香」の位置は、いわゆる「小鼻」の両脇です。

こちらも人差し指か中指で圧迫します。

続いて目の症状です。

用いるツボとしてはアプローチのしやすさで「攅竹」を用いましょう。

位置は眉毛の内側の端です。ちょうど骨の凹みがあります。

そこを親指で上向きに、ちょっと「ツーン」とする痛みが出る程度に圧迫します。

ここは眼精疲労にも用いられます。

変わったところでは腰痛にも使われます。

特に圧迫時間や回数などは決まっていません。

隙間時間に気付いたら圧迫する、くらいの気持ちで取り組んでいただければ、と思います。

「圧迫した途端にたちどころに症状が消える」なんてことは、まずありません。

しかし、薬やサプリメント、その他の補助食品を摂取する以外に手立てがない、と言った状況に対して、「積極的に自分で自分の身体に働きかけることが出来る」という感覚を持つことは大事です。

花粉症のような体質に起因する疾患の場合、「症状が治る」というより「症状とともに生きる」という向き合い方になります。

多少なりとも「症状に対して自身が直接アプローチしている」という感覚は、その向き合い方を前向きなものにしてくれます。

ここまでが症状の出ている場所の近くを刺激する、いわば「対症療法的」なツボの使い方です。

アレルギー性鼻炎に用いる耳ツボのやり方

これに加えて、遠隔的・全身的なアプローチをご紹介します。

いわゆる「耳ツボ」です。

鍼治療の世界では「耳鍼(みみばり・じじん)療法」と言われます。

解剖学的に見ても、耳には耳の皮膚感覚を伝える耳介側頭神経や大耳介神経、小後頭神経の他、耳の中(外耳道と言います)には迷走神経という自律神経(意志でコントロールできない内臓などを動かす神経)が分布しています。

そのためツボ刺激の形で感覚に働きかけ、身体の内部に作用を及ぼせる可能性があるのです。

さて、耳には人間が逆さまになったような形でツボが配置されています。

ですから、目など顔のパーツに関するツボは下側、すなわち耳たぶ付近に、腰や足など下半身が耳の上部分に配置されています。

アレルギー性鼻炎に用いる耳ツボの位置は以下の通りです。

ここでも上記写真の目や鼻(外鼻・内鼻)のツボを刺激するのはもちろんです。

さらに忘れてはならないのが、「副腎」のツボです。

いわゆる「耳の穴(外耳孔)」の前に出っ張りがあります。

解剖学的には「耳珠(じじゅ)」と言います。

この先端に「副腎」のツボがあります。

    

この「副腎」とは臓器の1つである腎臓の上に乗っかるように存在する器官です。

    

これは「ホルモン」を放出する役割を持っています。

そのホルモンは「ステロイドホルモン」と呼ばれます。

身体の炎症を抑制する作用を持っています。

よくアレルギーの炎症を抑える薬で「ステロイド剤」が使われますが、あれは副腎のホルモンと同じ構造のものを人工的に合成しているのです。

ですから私達は、医薬品に頼らずとも自前のステロイド剤をホルモンとして副腎から出せるのです。

そのホルモン放出を促すツボとして、「副腎」のツボを刺激します。

「副腎」のツボの近くには前出の写真のように「外鼻」や「内鼻」と言った鼻に関するツボも存在します。

写真のように耳珠全体をつまむように刺激すると良いでしょう。

また、目のかゆみがある場合には、耳たぶにある「目」のエリアもつまんで刺激してみて下さい。

鼻づまりで夜、眠れない時の対処法

アレルギー性鼻炎は症状そのものも困りものですが、鼻づまりで夜、眠れないことも困ります。

意外と知らない方が多いので、ご紹介しますが、横向きに寝ると上になった片側の鼻だけは通ります。

これは、1954年(昭和29年)に髙木健太郎氏が研究・発表した現象です。

横向きになった時に上になった側の半身は交感神経が活性化します。

これは副交感神経と対をなす自律神経です。

活動時に働く神経で、呼吸をしやすくする(=鼻粘膜の血管を収縮させ、むくみを取る)、心拍数・血圧を上げる(=筋肉の運動に必要な血液を供給する)などと言った機能を持っています。

この仕組み、東洋思想の陰陽論でも説明が出来ます。

陰陽論は森羅万象の事物・事象が陰陽で成り立っているという考えです。

いくつかの例を下表に示しました。

イメージとしてはポジティブなもの、プラスなものが陽、その逆が陰という捉え方です。

対立概念として見られがちですが、両者は絶えず変化しており、陽から陰、陰から陽に転じることもあります。

朝(陽)と夜(陰)などが好例です。

さて、鼻が通らない状態は空気の動きがないので「陰」となります。

それを横向きで寝て上、つまり「陽」の位置に持ってくると、上になった側の鼻が通り空気の動きがある「陽」の状態にできるわけです。

自律神経も活動時に働く交感神経が陽、休息時に働く副交感神経が陰とみることも出来ます。

就寝時の鼻づまりは横向きで片側だけでも鼻を通して解消しましょう。

今回、アレルギー性鼻炎のツボ療法をご紹介しました。花粉症などは、シーズン中はいつでも症状が出ている状態なので、常に露出している顔や耳への刺激は時を選ばずに行えると思います。

従来の対処に加えてツボ刺激を取り入れて、この春を乗り切りましょう。

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湯浅 陽介(ゆあさ ようすけ)

1974年富山県生まれ。あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師の資格取得後、教員養成科にて同教員資格取得。東京八丁堀の東京医療福祉専門学校に専任教員として勤務。学科と実技の授業を担当。学校勤務の傍ら、週末には臨床に携わっている。

学校HP⇒ http://www.tokyoiryoufukushi.ac.jp/index.php

学校FB⇒ https://www.facebook.com/tokyoiryofukushi/

学校ツイッター⇒ https://twitter.com/tif8chobori

学校インスタグラム⇒https://www.instagram.com/tif8chobori/?hl=ja

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