現在、TPP批准阻止のため、精力的に活動中の元農林水産大臣の山田正彦さんにお話を伺ってきました。
今回はTPPで水道事業がどうなってしまうかについて伺います。
前回の記事はこちらから→TPPで国民皆保険制度が危なくなる
私は、TPP交渉の主役は600社のグローバル企業であることは再三述べてきたが、米国のベクテル社は年間売上5兆円の世界最大の建設会社で、日本でも東京の湾岸道路、関西国際空港の旅客ターミナルビル、中部国際空港ビルなど数多く手掛けてきている。
ただし、「政商」と椰楡されることが多く、大問題となった神戸空港の開設(阪神大震災で街が壊滅しているにも拘らず、神戸市が空港建設を推し進めたことで市民の怒りを買い、大反対運動が起きている)にも関与したと言われています。
ことにベクテル社のボリビアでの水道事業の悪評は高い。ベクテル社はボリビアの水道事業を買い取ったが、途端に水道料金を倍に増額した。
貧しいボリビアでは、サラリーマンの平均給与の4分のーにも該当するもので、ボリビア人は水も買えないとしてバケツで雨水をためて利用していた。
すると、ベクテル社は、雨水についても契約上我が社に権利があるとして、雨水の料金を徴収しようとするに至って、住民も怒りだして激しい街頭デモになった。
ボリビア政府はベクトル社との契約を守るために軍隊を出動させたが、騒ぎは収まるどころか全土に広がって、ついにベクテル社はボリビアから撤退した。
ボリビアの水道事業は、日本などからの援助もあって既に施設はできていたので、それを利用したべクテル社が、ボリビアでかけた費用は、わずか100万ドルだけだったと言われている。
このベクテル社は、日本でも公共調達で水道事業の権益を狙っているものと思われる。
オーストラリアでも米豪FTAで水道事業が問題になった。
オーストラリア政府は、米国との交渉の段階から水道は国民の健康と命にかかわるものだから、公共調達での市場開放、民間への委託に最後まで反対した。
しかし、水道事業についての決着がつかないままに、米豪FTAは調印されてしまったため、米国の企業は早速、オーストラリアの水道事業に参入を求めてきた。
オーストラリア政府は拒否したが、ISD条項をちらつかされて、結局は米国企業を受け入れてしまった。
米豪FTAも、TPPと同様にネガティブ方式なので、条約に明文で水道事業は例外であると記載されていない限り、市場開放して、米国の企業も平等に入札させざるを得なかったのだ。
日本でもすでに、水道事業を民営化した自治体がある。
愛媛県の松山市では2012年度から世界最大の水道会社であるフランスのヴェオリア・ウォーター社と契約して浄水場などの運転業務や施設のメンテナンスを委託した。
ところが、翌年から水道料金の値上げが始まった。
これについて、松山市は水道料金が値上げされたことは認めているが、「外資のヴェオリア社に業務の委託をしたこととは関係ない。
市が水道事業を売却したわけではなく、管理責任は市に残っている。いずれ水道局の職員が必要なくなれば、将来的には水道料金は下がる」と主張している。
このことでIWJの記者が、厚生労働省に問い合わせると、日本の水道料金は外国に比べて安すぎるからだとの回答があったと述べています。
10月23日の日経新聞1面トップに、「水道事業企業参入後押し」「来年4月にも法改正」と見出しが踊っていました。
水は私達にとって、命と健康にとって大切なもの。今までは厚生労働大臣が水道料金を決めていたが、此からは企業の自由に。
今日の日経新聞4面に「地球回覧」のコラムでデトロイトの近郊、フリントの水道事情について触れている。
かつて華やかな自動車の街は、今では水道の水は鉛が入って飲めなくなり、トランプ大統領候補がペットボトルの水を積み上げ自由貿易(TPP)の成れの果てと訴えを。
2013年安倍自民党は、TPP交渉参加で、麻生副総理が米国の企業を集めてTPP加盟により日本の各自治体の水道事業は、全て民営化すると約束。
資本主義暴走を、何としても、今止めなければ、日本の地方も米国のフリントのようになってしまう。
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山田正彦
元農林水産大臣、弁護士。日本ペンクラブ会員。1942年4月8日長崎県五島市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、新聞記者を志すが、結核だったことが発覚して断念。
司法試験に挑戦し、1969年に合格するも法曹の道には進まず、故郷の五島に戻って牧場を開き、牛400頭を飼育、豚8000頭を出荷するようになる。
その後、オイルショックによって牧場経営を断念、弁護士に専念し、主にサラ金問題に取り組む。
四度目の挑戦で衆議院議員に当選。2010年6月、農林水産大臣に就任。現在、TPP批准阻止のため、精力的に活動中。
著書に「アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!」「TPP秘密交渉の正体
」などがある。
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養生ラボ編集部です。インタビュー取材、連載コラム編集など。